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マティス展 [EXHIBITION]

10日に観てきた展覧会。
東京都美術館で開催中の
『マティス展 HENRI MATISSE : The Path to Color』。

いつもの写真…
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なんだけど、映り込みが激しすぎて何がなんだか…(^^;。


アンリ・マティス(1869 - 1954)はフランス生まれのフォーヴィスムの画家。
フォーヴィスム=野獣派は、原色を主体とし荒々しく奔放な筆づかいの画風が特徴。
マティスはそのフォーヴィスムの代表的画家。

アタシがマティスという画家の名前初めて知ったのは
1981年、チューリップが出した『ふたりがつくった風景』という歌だった。
その中に「君が愛した壁に掛かるマチスを…」という歌詞があって
「マチスの絵ってどんな絵なんだろう?」と思いながら聴いていた。
今みたいにググれば何でもすぐわかる時代ではなかったので
おそらく美術の教科書か何かで〈ザ・マティス〉な作品を観て
「こんな画風か〜、あんまり自分の趣味ではないな」と
感じたことを憶えている。

それ以来、アタシの中でのマティスは
「特に好きでも嫌いでもない画家」だったのだけど
そんな印象を変えてくれたのが2015年に京都国立近代美術館で観た
『RIMPA IMAGE(琳派イメージ)』という展覧会だった。
琳派からインスパイアされた近現代の作品を集めた展覧会なのだけど
その中にマティスの『ジャズ』が含まれていて
「えっ?これのどこが琳派?!」と正直ハテナマークだらけだったのだけど
その時に見たマティスの『ジャズ』が物凄く印象的で
それまでのアタシが抱いていたマティスのイメージを覆すものだった。


今回の展覧会は、日本では約20年ぶりの大規模なマティスの回顧展とのこと。
マティスの作品はいろんな展覧会でちょいちょい目にするけど
そうか、そういえばマティスの作品をまとまって観るのは初めてなんだ。

展示は全8章で構成され、時系列で進んで行く。
最初のセクションのタイトルは《フォーヴィスムに向かって(1895〜1909)》。
多くの画家がそうであるように、マティスも新しい表現を学び
実験と研究を重ねて、いろんな画風に挑戦していたことを示す。
ポール・シニャックに影響を受けた『豪奢、静寂、逸楽』の点描は
どう見てもマティスじゃない(笑)。
でもこの筆触分割との出会いが、後のフォーヴィスムに繋がっていくのだそうで
そう聴くと「なるほど〜」なんて妙に納得させられたりして。


第2章は《ラディカルな探求の時代(1914 - 18)》。
ここで『金魚鉢のある室内』、これがすごくいいなと思った。
描かれたモチーフは単純化されているのに、
金魚鉢とその中の水の透明感がちゃんと伝わってくる。

音声ガイドによれば、マティスは『画家のノート』と題した文章の中で
「私が夢見る芸術は文筆家にとってもビジネスマンにとっても
 精神安定剤のような、肉体の疲れを癒す良い肘掛け椅子のような存在です」
と語っているという。

この『金魚鉢のある風景』のブルーの色調は
アタシにとってまさにそんな感じだった。


第3章は《並行する探求 − 彫刻と絵画(1913 - 30》。
絵画のアイデアを練るとき、しばしば彫刻を制作したマティス。
最初は写実的な彫刻を作り、それを徐々に単純化していく過程が興味深い。


第4章《人物と室内(1918 - 29》
第5章《広がりと実験(1930 - 37)》
第6章《ニースからヴァンスへ(1938 - 37)》
この3つのセクションに関しては撮影が許可されている。

と言っても、なかなか作品の真正面を陣取れず
こんな感じになっちゃうのだけど…(^^;
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『赤いキュロットのオダリスク』

モデルが着用する首飾りや衣装はなんとマティスの手作りなのだそう。
それっぽく見せるために、モロッコやアルジェリアで
買ってきた絨毯や衝立などを使ってオリエント風な空間を演出。
なんだ、「なんちゃってオリエンタル」なのか(笑)。


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『緑色の食器戸棚と静物』
テーブルから転がり落ちそうな果物はセザンヌ風。


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『夢』
マティスの助手を務めたロシア人のリティア・オメルチェンコがモデル。
ブルーのラグの色がいい。
そのブルーと、モデルの肌の色のコントラストが印象的。


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『赤の大きな室内』
これはいかにもマティスの赤!。


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『黄色と青の室内』
これも見た瞬間に「好き!」と思った。
アタシはマティスの赤よりも、ブルーの方が好きなのかも。


こちらは『ヴェルヴ』という芸術・文学雑誌の表紙に使われた切り紙絵。
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マティスが切り紙絵に取り組み始めたきっかけは自身の病気。
1941年に十二指腸癌を患い、体力も落ち
体の自由が利かなくなったためだ。
助手が予め彩色した紙をハサミで様々な形に切って
コラージュした作品を手掛け始める。

エスカレーターを上がって上のフロアに移動すると
第7章《切り紙絵と最晩年の作品(1931 - 1954)》だ。
残念ながらここは撮影禁止なのだけど、
展示室に足を踏み入れて周りを見渡した瞬間、
その色彩の豊富さに思わず気持ちがパァッと明るくなって
なんだかワクワクした気分になった。

ここに展示されているのが『ジャズ』というポートフォリオ(作品集)。
2015年に京都国立近代美術館で観て、かなりのインパクトで
アタシの記憶の中に植え付けられた、あの『ジャズ』である。

パッと見は何が描かれているのか分からないものが多いのだけど
タイトルと作品を照らし合わせながら観ていくと
「あぁ!そう言われてみればそう見える!」というものもあれば
「うーん、タイトル見ても何が描かれているのかわからん(^^;」
というものもあっていろいろだけど、総じて言えるのは
なんだかよくわからなくても眺めているだけで楽しいというこど。

〈馬、曲馬師、道化〉
〈ピエロの埋葬〉
〈水槽を泳ぐ女性〉
〈ナイフ投げ〉
このあたりが特にお気に入り。


そして最後の第8章は《ヴァンス・ロザリオ礼拝堂(1948-1951)》だ。
マティスが最晩年に手掛けた、その集大成ともいうべき仕事。

何年も前に、この教会を紹介するテレビ番組を観たときに
あまりにも教会らしからぬ内装に、とても驚いたことを憶えている。
それまでアタシの中でキリスト教の教会といえば
蝋燭の灯りと、ステンドグラスから差し込む僅かな外光、
そんな薄暗い中に浮かび上がる聖人のイコンの数々…
いわゆる中世のゴシック建築のイメージしかなかった。

ところがなんだ?!このロザリオ礼拝堂は!。
真っ白い壁、浴室のタイルみたいなところに単純な線で描かれた聖人(?)。
ステンドグラスも、なんつーか…植物みたいな、海草みたいな
不思議なものが描かれていて、とにかく《明るい》!。
「こういうのもありなんだ。意外と自由だなキリスト教!」
なんて思ったものだった。

今回の展示では、礼拝堂の装飾や典礼用の衣装のデザインのための
ドローイングなどが展示され、最後の一室では
ロザリオ礼拝堂の4K映像が上映されている。

音声ガイドの説明によれば、マティスが目指したのは

「神を信じているかどうかにかかわらず、
 精神が高まり、考えがはっきりし、
 気持ちそのものが軽くなるような場所」

…とのこと。
この説明を聴いてすごく納得したし
確かにマティスの目指した通りの空間になっているなと感じた。
(4K映像で観ただけだけどね…^^;ゞ)。

(ちなみに来年2月から国立新美術館で開催される
 『マティス 自由なフォルム』ではこの礼拝堂を体感できる空間が
 再現されるらしい。これはとっても楽しみ!!!)



今回の展覧会で、マティスの切り紙絵がますます好きになったし
更に「好き」なマティスが増えた気がする。

最後は自分土産。
今回の展覧会のグッズを手掛けたのは、
かの『ほぼ実物大 曜変天目のぬいぐるみ』を製作したEastという会社。
昨年12月に三菱一号館美術館で観た『ヴァロットン 黒と白』も
ここが手掛けていたのだけど、
この会社が作るミュージアムグッズはとにかくセンスが良い。
つまりヤバい(笑)。

魅力的なグッズの誘惑を振り切って、
厳選したのはポストカード数枚とTシャツ。
(あと写真撮り忘れたけどマステも買った)。
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Tシャツのラインナップも物凄くたくさんで目移りしてしまうのだけど
少しグリーンがかったネイビーのこのTシャツは特に出色。

洗濯した時にめちゃめちゃ色が落ちそうだけど
夏になってこのTシャツを着て出掛けるのが楽しみだ。




《オマケ》
これから行きたい展覧会の覚え書き
・坂崎幸之助 書写真展@銀座アートホール(5/23〜5/28)
・吹きガラス 妙なるかたち、技の妙@サントリー美術館(〜6/25)
・ガウディとサグラダファミリア展@東京国立近代美術館(6/13〜9/10)
・山下清 百年目の大回想@SOMPO美術館(6/24〜9/10)
・ジャム・セッション 石橋財団コレクション × 山口晃
  ここへきてやむに止まれぬサンサシオン@アーティゾン美術館
・特別展 やまと絵 受け継がれる王朝の美@東京国立博物館平成館

…果たして全部行かれるだろうか(^^;。

コメント(2) 

コメント 2

おかん

アンリ・マティスですか、おそらく初めてきくような・・。
『黄色と青の室内』や切り絵は親近感が湧きます。
梅屋さんのおかげで芸術オンチの私にも楽しさが伝わってきます。
グッズTシャツの明るめのネイビーが素敵♪

書写真展は前回所用で行けなかったのでカタログのみ、今回は必ず。幸ちゃんが「書が良いです」って言ってましたね(笑)
トーハク、気になってます。
今はと庭園美術館の予定を長女と擦り合わせ中です(6/4まで)

by おかん (2023-05-18 08:20) 

梅屋千年堂

>おかんさん
アンリ・マティスという名前に聞き覚えはなくても
ググって代表作を見てみたら「あ、これ見たことある」って
思われるかも知れません。

幸ちゃん、「書が良い」って言ってましたね(*^^*)。楽しみです。
楽しみですが、「これ欲しい!」という誘惑に負けないよう
よしおの紐をしっかり締めて来週行ってこようと思います。
幸い大相撲観戦の前に寄る予定で、あまり時間もないので
「欲しい…どうしよう」と迷っている余裕はないかと(笑)。

庭園美術館はレストランやカフェも良い(らしい)ので
ぜひぜひそちらも楽しんできてくださいねー。
(そういうアタシはまだ入ったことがありませんが笑)。

by 梅屋千年堂 (2023-05-18 14:48) 

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