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超絶技巧、未来へ!【1】 [EXHIBITION]

行きたい行かねば!と思いながら
なかなか行かれなかった展覧会へ11月2日に行ってきた。

場所は三井記念美術館。
『特別展 超絶技巧、未来へ! 明治工芸とそのDNA』という展覧会。
2014〜2015年の『超絶技巧!明治工芸の粋』
2017〜2019年の『驚異の超絶技巧! 明治工芸から現代アートへ』につづく
超絶技巧シリーズ第3弾。

今回は17名の現代作家の作品64点に加えて、明治工芸57点が展示される。
今回の展示の主役は現代作家だ。

作品の一部は撮影が許可されている。
入ってすぐ来館者を迎えるのはこちらの木彫作品。
01_kyusui.jpg
福田亨『吸水』。


寄ってみる。
02_kyusui.jpg
福田は着色しないことにこだわり、
蝶の羽根の模様は色の異なる木材を象嵌したもの。
水滴も木材ということに驚かされる。
水滴と台座は実は一体。
水滴部分のみを掘り残し、そこに研磨を加えてツヤを出して水を表現している。

03_kyusui.jpg
そう言われて角度を変えて見てみれば
確かに水滴部分も木で出来ていることがわかる。


こちらは池田晃将『電光金針水晶飾箱』。
04_cyberqurts.jpg


池田晃将『紫電閃光結晶飾箱』。
05_lightningore.jpg
なんだか『マトリックス』って感じ。
いずれも鉱石のように見えるが、木材に漆塗りを施したもの。


06_amrita.jpg
稲崎栄利子『Amrita』。
まるで海洋生物のように見えるこの作品は陶磁で出来ている。

一体どうなっているんだ?と寄ってみると、こうなっている。
07_amrita.jpg

撮影不可だったけれど、同じ稲崎栄利子の『現像』という作品も
珊瑚で出来た塔のような美しい作品だった。


08_moonlight.jpg
大竹亮峰『月光』。
こちらも木彫。
花器に水を注ぐとゆっくりと花が開く仕組みになっているらしい。

花弁は鹿の角が使われている。
09_moonlight.jpg
本物の月下美人にしか見えないが…。
鹿の角がこんなに薄く加工できるということに驚き。

大竹亮峰は生き物を木彫で表現した作品も多く
コノハムシを表した『歩葉』、
メガネカラッパという蟹の自在置物『眼鏡饅頭蟹』、
昆虫に寄生するキノコを表した『冬虫夏草』なども非常に印象的。



展示室を移動すると、茶室を模した常設の展示ケースの中に死骸のような菊…。
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松本涼『涅槃』。

11_nirvana.jpg
入滅する釈迦の姿を枯れていく菊に見立てている。
着色せずに木の質感を残したことで、
枯れて乾いた死骸のように感じられドキリとする。


茶室の手前の一角には盛田亜耶の切り絵作品や
蝸牛あやの刺繍作品があり、その繊細さにクラクラ(◎_◎)。
盛田の切り絵は壁面から少し浮かして展示し、
そこに照明を当てて影が写る仕掛けになっているのだけど
本体と影が二重になってかなり見づらかったのだけど
あの展示方法で良いのだろうか???。
(確かに「影」も美しかったが…)。


更に奥の展示室へ移動すると、現代作家を中心に
広い空間に様々な作品が展示されている。


16_doginnightfog.jpg
吉田泰一郎『夜霧の犬』
銅を基本として、リン青銅、銀メッキ、七宝を駆使した大作。

17_doginnightfog.jpg
首には蝶がビッシリ。

18_doginnightfog.jpg
体は草花に覆われている。

どうやって作ったんだろう?ということも勿論気になるが
アタシはこういう複雑で繊細で大きな作品を観ると
「どうやってここまで運んだんだろう?」ということが
妙に気になってしまう(^^;。



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前原冬樹『《一刻》スルメに茶碗』。

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一木造り、すなわちスルメも先っちょのクリップも金具も
1つの角材から彫り出されている。


こちらは金工作品。
15_toothpicks.jpg
長谷川清吉『真鍮製 爪楊枝』


そしてこれは漆工。
19_unscrewed.jpg
彦十蒔絵 若宮隆志『「ねじがはずれている」モンキー、工具箱、ねじ』


今回の展覧会に出展している現代作家の多くは
「異素材を用いて全く異なる物質の質感を表現することを追求する人々」
そんな印象だ。「これが木?」「これが金属?」「まるで本物ソックリ!」と
その技術に驚かされるが、現代の木彫作家・岩崎努や
明治の牙彫作家・安藤緑山の作品を観て、ちょっとハッとした。

岩崎や安藤が木材や象牙で作った野菜や果物は
非常にリアルでありながら、それでも本物ではないことがわかる。
「つくりもの」らしさが残っている彼らの作品の方が
アタシは好きだなぁ…!と思ったのだ。
絵画でも、まるで写真のような超リアルな写実絵画は
その技術に凄いなぁ!と感動するけれど
ちょっと絵画っぽさが残っている方が好きかも知れない。
写真では表現できないことを描いているのが好きなのだ。

そういう観点からすると
ラジオや腕時計、スニーカーを真っ白いケント紙だけで作り上げた
ペーパークラフト作家の小坂学の作品はかなり「これ好き!」だった。
特に『#224 [Classic Camera]』はかなりシビレた。
白いままなので紙だと分かる。そこに感動する。
多分着色してしまうと魅力半減(←個人の意見です)。
(撮影不可だったのが残念。気になる方は小坂学氏の「X」をご覧ください)。


なんだか思いの外長くなってきたので…

《TO BE CONTINUED...つづく》
コメント(3) 

コメント 3

YAYOI

梅屋さんも行かれたのですね。
素晴らしい作品が沢山ありましたよね。

ブログを読んでて面白いと思ったのは、以前梅屋さんが私のブログに書かれたこと。
「同じ物を見ていても注目する所や感じ方が全然違ってて興味深い」という内容のことを書かれていましたが、今回本当にそうだなと実感しました。
写真の撮り方も全然違ってて面白いし、他の人の感じ方を知ると、そういう見方も出来るんだ、そう感じるんだと目から鱗です。
by YAYOI (2023-11-04 09:24) 

溺愛猫的女人

私はYAYOIさんの記事を拝見して行きました。どの作品もとても素晴らしかったです。
次回もぜひ行きたいと思います。
by 溺愛猫的女人 (2023-11-04 11:30) 

梅屋千年堂

>YAYOIさん
人間業とは思えない作品ばかりでクラクラしました。

YAYOIさんが割と早い段階でこの展覧会をご覧になったのを
ブログを拝見して知ってはいましたが
まっさらな状態で鑑賞しようと思い
敢えてブログの記事は読まずに観てきました。
で、帰宅してからYAYOIさんの記事を読ませていただき
YAYOIさんと全く同じ事を感じました(笑)。
同じものを観て、他の方がどのように感じたのかを知ることで
自分の視野を広げることも出来ますね。
ライブもしかり。「この人はここがツボなんだ!(^m^)」とか(笑)。




>溺愛猫的女人さん
「この人たち、みんなどうかしてる!」と思いました(笑)。
「アーティストとは?」「職人とは?」と
そんなことも考えさせられる展覧会でした。
第4弾も期待したいですね。
その頃にはきっとまた新たな若手超絶作家が台頭しているはず。

by 梅屋千年堂 (2023-11-04 23:38) 

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