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初めてのアーティゾン美術館 [EXHIBITION]

なかなか行く機会がなかったアーティゾン美術館。

大好きな山口晃画伯の展覧会がある!ということで
喜び勇んで出掛けていった。

展覧会のタイトルは
『ジャム・セッション 石橋財団コレクション × 山口晃
 ここへきて やむに止まれぬ サンサシオン』
という(…やたらと長い)。

アーティゾン美術館の前身はブリヂストン美術館。
19世紀〜20世紀初頭の近代西洋絵画の名品をたくさん持っていて
いつか行ってみたい、行かなくては!と思っていたけれど
どういうわけかチャンスがなく、そうこうしているうちに2015年。
ビルの建て替えに伴い長期休館に突入してしまった。

2020年、アーティゾン美術館として新たに開館。
なにやらとても綺麗でお洒落に生まれかわった(カフェもいい!)らしい。
が個人的に「この展覧会は絶対観たい!」という
展示に出会えず今日に至っていた。


だがしかし!ここへきて山口晃画伯登場!。
9月14日の10時からの日時指定券を2週間前にWEBで購入。
10時ちょっと過ぎに現地到着。
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あんまり立派な建物でビックリした(◎_◎)。


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ジャム・セッションとは、アーティストと学芸員が共同して
石橋財団がの有するコレクションとアーティストの作品との
セッションによって生み出される新たな視点による展覧会、とのこと。
年1回、様々なアーティストと組んで開催されてきた企画である。

美術館公式サイトには、

『今回のジャム・セッションでは、「近代」、「日本的コード」、
 「日本の本来性」とは何かを問い、歴史や美術といった
 個人を圧する制度のただ中にあっても、
 それらに先立つ欲動を貫かんとする山口晃をご覧いただきます』

とあるが、まぁ小難しいことは置いといて
とにかく画伯の新作をこの目で観たい!、個人的にはこの1点に尽きる。


1番最初に来館者を迎えるインスタレーションに早速ヤラレる。
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『汝、経験に依りて過つ』

なんだ?このナナメった部屋は。
そこに一歩足を踏み入れると、オロロロっ…と激しくバランスを崩す。
壁に掛けられた上着、カウンターに置かれたグラス、
天井から吊り下げられたシーリングライト…
そういった周りの環境に騙されて、眩暈のような感覚を覚えて
何かにつかまらないと立っていられない。

聞けば床の傾斜は15度だという。
たかが15度と思うかも知れないが、スキー場へ行けば30度で体感的には殆ど崖。
15度と言ったらかなりの急勾配で、普通に立っているのだって結構大変だ。
それなのに、更に周りの環境に惑わされて大変な事になる。
これ…絶対に転ぶ人がいると思うなぁ(^^;。

『汝、経験に依りて過つ』を出たところに展示されている『すゞしろ日記』。
(東京大学出版会「UP」に連載しているエッセイ漫画)。
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なぜ画伯がこんなものを展示したかったのかを知ることができる。


ちょっと手荒な歓迎を受け、展示室に入っていく。
いくつかの区画で区切られているが
順路は特に決まっておらず、どこから観ても良さそうだ。
場内は基本撮影OK。
今日は図録を買って帰るから、そんなにあれもこれもと
バシバシ撮りまくる必要はないだろうと殆ど写真を撮らなかったのだけど
図録(カタログ)には全ての作品が網羅されているわけではなく
帰宅してからちょっと後悔。


まずは画伯が手掛けた東京パラリンピックのポスターの原画
『馬からやヲ射る』。
そしてこのポスターの依頼が来てから、それを引き受けるまでの
画伯の苦悩を『すゞしろ日記』風に描いた『当世壁の落書き 五輪パラ輪』。
このポスターを、新聞かWEB記事か忘れたけれど
初めて観た時に「なんか…凄いな(・_・)」と思ったけれど
ここに画伯のメッセージがここまで詰め込まれているとは知らず
読んでいて思わず「う〜む…」と唸ってしまった。


真っ白い壁と天井に囲まれた『モスキートルーム』も面白い。
その中に入って白い壁を見つめると、眼球の丸みを感じる…という
画伯の説明を読んで「んなアホな」と思いつつ中に入っていくと
普段はさほど気にならない飛蚊症がウヮーッと目の前に広がる。
(それがまず狙い)。
更にそこに居続けて白い壁を見つめていると、
確かになんだかだんだんヘンな気分になってくる。
これが画伯の言う「眼球の丸みを感じる」ということなのかも?!。

その『モスキートルーム』の入口の向かいだっただろうか。
『ランドルト環』という作品。
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視力検査で使うアレだが、そのランドルト環の大事な部分=輪の切れ目が
雲のようなもので覆われてハッキリしないところが面白い(^m^)。


美術館のコレクションとのセッションとしては
雪舟の『四季山水図』と、
セザンヌの『サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール』という
2つの作品が取り上げられている。
雪舟の『四季山水図』は正面から白い光が当てられて
その光による効果を体感するものらしいのだけど
展示ケースのガラスに自分の姿が反射して、
残念ながら肝心の絵がよく見えない(-_-;。

『サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール』の方は
画伯自ら模写を試みることで、セザンヌがいかに凄いのかを説明するもの。
なのだけど…ちょっと凡人にはついていけない感が(^^;。
画伯の作品って『すゞしろ日記』のように親しみやすさがあるかと思うと
こんな風に凡人を突き放すようなものもあって
「あなた、なんにもわかっていませんね」と叱られたような気分になって
怖いな、と思うことが多々ある。


展示室の中央には、このようなインスタレーションも点在。
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作品のタイトルが見当たらないなぁと思っていたら
これらの集合体で『ちこちこの庭』という1つのインスタレーション作品だった。


ガラスケースの内側(左側)と外側(右側)に
並べて展示された謎の額縁。
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んん?これはなんなんだ?と
右側にまわって観てみると…

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『さんさしおん』!。
面白いねぇ〜!。


その他、画伯の真骨頂とも言える鳥瞰図的な作品
『テイル・オブ・トーキョー』
『日本橋南詰盛況乃圖』
『善光寺御開帳遠景圖』
『東京圖1-0-4輪之段』
は、どれだけ眺めていても飽きないし
展覧会のヴィジュアルイメージになっている『来迎圖』などは
一見何が描かれているのかわからないが、
見つめているといろいろなものが見えてきて、迫力に圧倒される。


あっという間に2時間近く経過していた。
他のフロアの展示もサラッと観て、ロビーに出てみると…
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うわぁ!カッコイイ!。


いい按配でお腹が空いてきたので
こちらも楽しみだったミュージアムカフェへ。
ランチメニューのAコースで「ウニのバスタ」をオーダー。

目の前に置かれたのはこんなお料理(◎_◎)。
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薄くスライスされたマッシュルームが凄い!。
ウニもパスタも全く見えないじゃないか!(笑)。

指示通り、よくかき混ぜてからいただく。
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うっ…うまぁーーーーーい!!!(* ̄▽ ̄*)。

うしろにチラッと見えているのはバゲッティーヌという細いパンと
塩ホイップ・オリーブオイル。こちらも美味〜。

食後にはプチデザート。
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カモミールのジュレとブラマンジェ。
ジュレにはカットした葡萄の粒も入っていて、小さいながらも贅沢なデザート。

テーブルに置かれたお水のピッチャーもなにやらとてもオシャレである。
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山口晃画伯の展示は11月19日までなので、絶対にもう一度観に来よう。
(そしてまたこのカフェで、今度はカフェタイムメニューを頂こう)。



今日はこのままどこへも寄らずに帰るつもりだったが
展示の中にあった『趣都 日本橋編』を追体験したくて
ちょいと日本橋まで足を伸ばした。

『趣都 日本橋編』は月刊モーニング・ツーに掲載された漫画で、
日本橋に覆い被さるような首都高について
その地下化をめぐり、しわぶき先生と三吉くんが考察する。

その正確な言い回しは忘れたけれど、例えば
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「首都高」に掲げられた『日本橋』の文字がお寺の扁額みたいだとか


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首都高がビルを隠して空が広く見えるとか


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この裂け目が神々しいみたいな話があったりとか


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川面の反射が揺らぐのを見られるのは首都高があるからだとか

おぉ〜!なるほど!
ものは考えようで、現在の日本橋にとって首都高は必ずしも
「景観を損ねるモノ」だとは言い切れないのだと共感した。


で、ここまで来たら、梅屋また日本橋三越本店の
Takamiyギター展に行ったんだろ?と思われるだろうが
早く帰って大相撲中継を観たかったので、
三越には寄らずに帰った(ホントだよ〜)。



帰宅後、買ってきたカタログを開封。
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A3サイズでデカい上に、中はバラバラ(^^;。
でもこれでいいのだ。
画伯の作品は中綴じの本にしてしまうと、
どうしても見えにくい部分が生じてしまうから。
それにこれ、額に入れて飾ってもサマになるじゃん!(しないけど)。

ただこのままではどうしたって、端が折れたりして傷みやすいので
保管用にA3サイズのクリアケースを急ぎ購入。


ちなみに、
アーティゾン美術館では展覧会の開幕と同時にカタログを刊行することを
ポリシーとしているため、これまで展覧会の開幕直前に完成する
インスタレーション作品をカタログ掲載するのが難しかったそうなのだけど
今回初めての試みとして、カタログに掲載されたQRコードから
インスタレーションのデジタル画像を閲覧できるようにした、とのこと。
3年間の期間限定とはいえ、これはナイスアイデア。
動きのある現代アートの作品を、今後この手法で図録に掲載するのもありかも!
なんて、勝手に夢が膨らんだ。
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コメント 4

おかん

すゞしろ日記、面白い!
豊島園にあった斜めの部屋の思い出とは。子供が小さい時に地元のこども科学館に何度か連れていき、その度に斜めの部屋に嵌ってた思い出(笑)
私は豊島園には一度だけ遊びに行ってるので閉園は残念だったな(余談でした)

カフェめっちゃお洒落ですね〜。パスタ美味しそう!!
by おかん (2023-09-19 05:36) 

梅屋千年堂

>おかんさん
『すゞしろ日記』は前回の「参」の発売から5年経つので
そろそろ『肆』が出る頃では…と期待しているのですが
画伯もお忙しいのか今のところ音沙汰がありません。
細かくて老眼世代にはなかなかキビシイものもありますが
『すゞしろ日記』はとても面白いので機会がありましたら是非。

豊島園はアタシも大昔に、中学時代の部活仲間と一緒に
絶叫マシン目当てに行ったことがあります。
斜め部屋の記憶はありませんが
コークスクリューは大いに興奮しました(笑)。

by 梅屋千年堂 (2023-09-20 01:52) 

おかん

豊島園の話しですみません(笑)
延々、コースターに乗ってました!栃木から行ったのは私くらいでは(自画自賛)

日本橋のお話興味深いですね!
by おかん (2023-09-20 21:13) 

梅屋千年堂

>おかんさん
豊島園といえば、カルーセル・エルドラドも有名でしたね。
生まれて初めて回転木馬に乗ったのはここだったかも。
(そしてちょっと気恥ずかしかった思い出…)。
おかんさんは乗られました?。

山口画伯には「百貨店圖 日本橋三越」「百貨店圖 新三越本店」
東京メトロ日本橋駅のパブリックアート「日本橋南詰盛況乃圖」など
日本橋界隈を描いた作品がいくつかありますが
どれも日本橋愛(?)を感じます。

by 梅屋千年堂 (2023-09-20 23:04) 

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