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ルーヴル美術館展 −愛を描く [EXHIBITION]

3月15日(水)に観てきた展覧会。

場所は国立新美術館。
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ルーヴル美術館展は、プラド美術館展やボストン美術館展同様
一定の周期で開催される展覧会のひとつである。
その膨大なコレクションゆえに、その都度様々なテーマの展覧会が
可能なわけなのだけど、今回は『愛』を描いた作品73点が集結。
今まで図版や美術関連のテレビ番組でしか観たことがなかったような
よく知られた作品もくるとあって、これは是非とも観ておきたい!とやってきた。

チケットは日時指定の事前予約制。
早く行って早く帰ってこようと、朝一番の10時〜11時入場のチケットを購入。
ただし10時前後に行くと大体混んでて待たされるので
少し時間をずらして10時30分くらいに現地到着。

だがしかし、すんなり入場できるかと思いきや入口には長蛇の列。
おそらく入場までに10〜15分くらいは待たされたんじゃないかと思う。

やはりさすがルーヴル。中も結構混み合っている。
でもどちらかというとサイズが大きな作品が多いので
鑑賞するにあたってストレスはそれほど感じない。

最初は《プロローグ −愛の発明》。
フランソワ・ブーシェ『アモルの標的』というでっかい作品がいきなりお出迎え。
展覧会のメインヴィジュアルにも使われている、
複数のアモル(キューピッド)を描いた作品なのだけど
アモルたち…赤ちゃんなのにちっともかわいくない(^^;。
みんな無表情で怖い顔で、愛らしさのカケラもないのだが。
もうちょっと可愛く描けばいいのにーと思いつつ
もしかしたらこれって故意にこういう顔にしてる?。
獲物を狙うハンター的な?。

なんてことを考えながら序章から本題へ。
《I. 愛の神のもとに −古代神話における欲望を描く》
ここでは古代ギリシャ・ローマ神話に登場する神々や人間の恋愛を描いた作品を紹介。
(それは圧倒的にハッピーエンドよりも悲劇が多い)。

印象に残った作品は
●アントワーヌ・ヴァトー『ニンフとサテュロス』
 半身半獣のサテュロスが、眠るニンフの衣を剥いでその裸体を覗き込んでいる絵。
 図版などでよく見掛ける作品だ。
●ジャン=ブルーノ・ガッシー『ディアナとエンデュミオン』
 メインの絵画よりも、それを取り巻く額縁のような装飾の描き込みが
 凄すぎてついついそちらにばかり目が行ってしまう。

ギリシャ神話やローマ神話に登場する神様たちは
嫉妬深かったり浮気性だったり自分勝手だったり自己破滅型だったりと
結構しょーもないので、そういうしょーもないキャラクターや
しょーもないエピソードを予備知識として持っていた方が楽しめる。
「これってどういった物語なんだろう?」と
帰宅してから改めてググるのも面白い。


《II. キリスト教と神のもとに》
ギリシャ・ローマ神話とは打って変わって
ここで描かれるのは親子愛・家族愛・自己犠牲といった、もう一回り大きな愛。
ダントツに素敵なのは
●サッソフェラート(本名:ジョバンニ・バッティスタ・サルヴィ)
 『眠る幼子イエス』
 聖母マリアの腕の中ですやすやと眠る幼子イエス。
 イエスの赤ちゃん時代を描いた作品にしては珍しく(^^;
 “赤ちゃんらしく”描かれていてとっても可愛い。
 聖母子を見守る周りの天使の表情も良い。

宗教画も神話画と同様に、そこに描かれているエピソードや
周りにさりげなく散りばめられた小道具の意味を分かった上で観た方が良い。
じゃないと多分シャルル・メラン『ローマの慈愛』または『キモンとペロ』
なんかは「コノオジイチャンナニヤッテンノ?」だと思う(^^;。


《III. 人間のもとに −誘惑の時代》
ここでは17世紀のオランダや、18世紀のフランスで描かれた
これまでよりももうちょっと世俗的な恋愛模様を描いた作品が並ぶ。
一見人々の暮らしを描いただけのように見えるのだけど
さりげなく様々な寓意を折り込んで実は意味深…という作品たち。
●サミュエル・ファン・ホーホストラーデン『部屋履き』
 この絵には人物は一切描かれておらず、
 履き捨てられた部屋履き、鍵が刺さったまま開け放たれた扉、
 奥の部屋の壁に掛けられた画中画…鑑賞者はそんなモチーフから
 まるで推理小説を紐解くように、ここで何が起こったのかを妄想する。
●ジャン=オノレ・フラゴナール『かんぬき』
 これも鑑賞者の想像をいろいろと掻き立てる。
 女性は抵抗しているのか、それとも抵抗しているように見えて
 実はその逆なのか、とか。

このセクションでは大真面目に描かれた筈の作品なのに
何故か(あくまでもアタシ個人の中で)ちょっと笑いのツボに
ハマってしまう作品がいくつかあった。
●ジャン=バティスト・ルニョー
 『「快楽」の抱擁からアルキビアデスを引き離すソクラテス』
 女性に誘惑された弟子(アルキビアデス)を連れ戻そうとするソクラテス。
 アルキビアデスの目線が鑑賞者の方を向いて(つまりカメラ目線で)
 何かを訴えかけていて、何かお芝居でも観ているような感じがする。
●ジャン=バディスト・クルーズ
 『アモルに導かれる「無垢」』または『ヒュメナイオスの勝利』
 アモルの矢が当たってしまった女性(=無垢の寓意)の表情がヒドイ(笑)。
 最初に観たときは画家の技量がないせいでヒドイ顔に見えるのかと思ったけど
 じっくり観れば観るほどに、このパッパラパーな呆けた顔は
 もう完全にアモルの矢にヤラレちまった腑抜け顔なのだと分かってきて
 実は凄く巧いんじゃないか?という気がしてきた。
●フランソワ・ブーシェ『アモルを支える三美神』
 三美神が赤ちゃんアモルを肩に乗せてる絵なのだけど
 両手を挙げてノリノリのアモルに対して、完全にヤル気なさげな三美神たち…。
 アモル「イェ〜イ!」
 三美神A「ちょっとあんた、子供だからって調子に乗ってんじゃないわよ」
 三美神B「これだからガキのお守りはイヤなのよ」
 三美神C「ハァ〜、ダメだこりゃ」
 そんな会話しか浮かんでこない邪なアタシなのだった(^^;。
 (どんな絵なのかは最後のポストカード画像を参照されたし)


《IV. 19世紀フランスの牧歌的恋愛とロマン主義の悲劇》
18世紀末から19世紀に流行した牧歌的恋愛物語がテーマ。
最後の展示室となるここだけは撮影OK。

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フランソワ・ジェラール
『アモルとプシュケ』または『アモルの最初のキスを受けるプシュケ』
図版でよく見掛けるとても有名な作品。
目の前に立ってみると思っていたよりも大きい。
アモルとプシュケの物語はギリシャ神話にしては珍しくハッピーエンド。
まぁ途中いろいろとやきもちやきのヴィーナスに意地悪されるんだけれども(^^;。


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クロード=マリー・デュビュッフ『アポロンとキュパリッソス』
可愛がっていた牡鹿をうっかり自らの手で殺してしまった美少年キュパリッソス。
生きる気力をなくしているところをアポロンに慰められるも
「永久に嘆き続けていたい」と糸杉に変身してしまった…というお話らしい。
永久に嘆き続けていたいだぁ?甘ったれんな!とおばさんは思ってしまう(^^;。


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アリ・シェフェール
『ダンテとウェルギリウスの前に現れた
 フランチェスカ・ダ・リミニとパオロ・マラテスタの亡霊』

ダンテの『神曲(地獄篇)』の一場面。
政略結婚で容姿の醜い男性と結婚させられたフランチェスカは
夫の弟のパオロと恋に落ちるが、それが夫にバレて
パオロともども短刀で刺し殺されてしまう。
不義の恋のために断罪され、永遠に地獄を彷徨うフランチェスカとパオロの亡霊を
ダンテとウェルギリオスが見つめている、という設定。

これら3つの作品の共通点は、
男性の裸体が筋骨隆々ではなくほっそりしていて、
肌の質感もまるで陶器のようにすべすべとしていること。
少女漫画にでも出てきそうなルックスなのだ。
当時はこういう絵が流行していたらしい。
実際の男性もこういうのがモテたのかどうかは知らんけど。

なんだか最後の最後に胸焼けしそうな絵がいっぱい出てきたな…(^^;
と思っていたところに超ビッグネーム登場!。
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ウジェーヌ・ドラクロワ『アビドスの花嫁』
オスマン帝国時代、高官の娘ズレイカと海賊の首領セリムの悲恋物語。
最後にすべすべじゃない男が出てきてちょっとホッとしたりして(笑)。



以上、2時間弱で全ての展示を観終わって
なんだかもう生クリームてんこ盛りみたいな絵が多くてお腹いっぱいだよ…
と思いつつホントのお腹はペコペコなので
地下の〈カフェテリア カレ〉でランチをして帰ることにする。
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ルーブル美術館展コラボメニューの《牛肉とサルシフィのトマト煮 バターライス添え》
ヴァトーの『ニンフとサテュロス』をイメージしたメニューだそうだ。
ここのメニューはハズレがなくていつも美味しい。


そして最後は自分土産。
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グラニースミスのアップルクキーボックスと鎌倉紅谷のルーヴルッ子。
どちらもパッケージはルーヴル展特製だけど中身は通常商品(^^;ゞ。

あとは、先に書いたように個人的にかなりツボにハマった
フランソワ・ブーシェ『アモルを支える三美神』のポストカード。
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三美神に担がれてイェ〜ィ!と調子に乗るアモル。
それに対してどこか面倒臭そうな三美神の表情がなんとも(笑)。


久しぶりにコテコテ西洋絵画の展覧会を観た気がする。
こういう◯◯美術館展って、超有名ないわゆる「目玉」と言われる作品から
「これバーターだよね…(^^;」と思えるような微妙なもの(小声)まで
いろいろ揃っているのが面白い。
次のルーブル美術館展は何年後だろう?。
コメント(4) 

コメント 4

.

初めまして。
私はこちらの展示会、来月に行く予定です。
今月は浅草で開催されている紙博に行きましたが、今年開催されるであろうトリエンナーレにも行く予定です。
梅屋さんはトリエンナーレは行く予定ですか?
私はアルコンは川口京都ともに駄目で、カナケンは取れたもののNHKと相模大野が取れず、プレオーダーにエントリー中です。
若い頃の電話でのチケ取りは取れずともキャンセル分があったため、今の方がチケ取り大変だと痛感しています。
お互いに、行きたいところ行けると良いですね。
by . (2023-03-20 03:02) 

梅屋千年堂

>. さん
初めまして、ようこそいらっしゃいました♪。
紙博に行かれたのですね。いいなぁー。
アタシも行きたい行きたいと思いつつ、
散財してしまうことは火を見るより明らか。
文具博関係は自分は近寄ってはいけない危険地帯だと思っています(笑)。

>>ヨコハマトリエンナーレ
前回の開催からもう3年経つのですね。
いつからなんだろう?と調べてみたら、
世界的半導体不足→横浜美術館の改修に遅れ→ヨコトリ会期変更とのことで
来年3月15日からだそうですね。真夏の開催よりいいかも(^^;ゞ。
もちろん行く予定です。

春ツアーのチケットもなかなかの激戦ですね。
土日が仕事で電話予約などに参戦しづらい身としては
今のシステムは個人的には助かっていますが、
ここで取れないとあとがなかなか大変ですね。
今のアタシは「とにかくカナケン!」です。
. さんも希望のチケットが取れますように。

by 梅屋千年堂 (2023-03-20 23:53) 

JUNKO

梅屋さん、こんばんは。
かなけん、いかがでしたか?私はまたもやダメでした[泣き顔] ここまで取れないことは今までなかったのですが…。ラストチャンスは一般発売。かなり厳しいですが、遠征しない身としては何とかゲットしたいところです。
仕事を、始めたばかりで平日に出歩くことが難しくなってしまったのですが、素敵な絵画に癒やされに行きたいです。
by JUNKO (2023-03-21 20:40) 

梅屋千年堂

>JUNKOさん
ヨコケン、NHK初日とも落選でした_(:3 」∠)_。
でもまだ諦めるわけにはいきません(でも早く安心はしたい^^;)。
お互いにチケットが見つかると良いですね。

by 梅屋千年堂 (2023-03-21 23:44) 

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