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佐伯祐三 −自画像としての風景 [EXHIBITION]

(前記事のつづき)

亀戸から東京へ。

総武線で錦糸町まで行って、そこから総武線快速に乗り換え東京駅へ。
普段総武線快速で東京駅に降り立つことなどないので
電車を降りた瞬間「ここどこだ(^^;?」。

美術館に行く前にどこかでお昼を食べておきたいけど時間があまりない。
とりあえずエスカレーターを上がって、
最初に目に付いたところに入って何か食べよう。

で、自分が東京駅のどこらへんにいるのかよく分からないまま
〈そこにあった〉5 CROSSTIES COFFEEに入って
リゾット風スープご飯とカプチーノをかっ込む。
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いまだ自分がどこにいるのかよく分からないまま
ま、1階に上がればなんとかなるだろ…と
テキトーに上がっていったら丸の内南口。
目的地の東京ステーションギャラリーは北口なのにー( ̄△ ̄;)。
自分の方向音痴っぷりを嘆きつつ、一旦外に出てから北口へ。

久しぶりの東京ステーションギャラリー。
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現在東京ステーションギャラリーでやっているのは
『佐伯祐三 −自画像としての風景』という展覧会。
佐伯祐三は1898年、大阪生まれの洋画家。
アート関連のテレビ番組でちょこっと紹介されているのを観てから
「うわ〜!カッコイイな!」と関心を持っていた。
その大規模な展覧会が開催されるとあって
これは絶対に観ておかねば!と思っていた。

まずプロローグとして1919年から2014年にかけて製作された
佐伯の自画像を集めた展示から始まる。
ラフなスケッチだったり、なにやらレンブラント風だったり
様々な自画像が並んでいるが
ここで注目すべきは1924年に描かれた2枚の自画像。
1枚は影響を受けていたセザンヌ風の『パレットを持つ自画像』。
もう1枚は荒々しく顔が塗りつぶされた『立てる自画像』。
同じ年に描かれているのに画風がこれほど違うのは何故なのか。
それはこの後の展示を辿っていくことで分かってくる。

ただ、展示は時系列ではなく「佐伯が描いたもの」で分類されている。
大阪→パリ→東京→パリと主に3つの都市で画家として生きた佐伯だが
第1章では大阪と東京で描いた日本の風景画を展観。
大阪は東京美術学校を卒業して1924年にパリに行く前。
東京は1926年に一旦パリから帰国して、翌年再びパリに渡るまでの間。
パリから一旦日本に戻ったのは、佐伯が体調を崩したのを心配して
やってきた兄・祐正に連れ戻されたからなのだけど
この時に制作していた連作『滞船』のうち1927年に描かれた1枚に、
何気なく30cmくらいの至近距離に近づいて観た瞬間、
生々しい筆跡を目の当たりにして物凄くドキッとした。
なんだかよくわからないけど、佐伯の熱みたいなものがビシビシ伝わってきた。
(ゴッホの晩年の作品を間近で観たときの感覚に近かった…かな)。

で、大阪や東京の風景画につづくセクションでは
佐伯の親しい人々の肖像画や、身近にあったものを
ササッと短時間で描いたような静物画。
肖像画は描かれた人によって画風が全然違うのが面白い。
娘の彌智子なんかはルノワール風なんだけど人相が全然わからないし
(でも可愛いのはなんとなく伝わってくる)
奥さんの米子さんの肖像はイラストみたいな感じだ。
静物画では「活きが悪いから」と捨てられていた蟹を拾って
わずか30分で描いたという『蟹』が巧すぎて、活きのいい蟹に見える(笑)。

そして第2章に入ると、いよいよパリで制作された作品が押し寄せる。
もうここからがこの展覧会のメインと言っても過言ではナイ。
特に、1924年6月に、自信作である裸婦像を携えて
フォービズムの画家モーリス・ド・ヴラマンクを訪ねたのに
「このアカデミックが!」と激しく批判された後の作品がとても良い。
ちなみに冒頭の同年に製作された2つの自画像の違いは
このヴラマンク事件のビフォー&アフターなのである。

アタシはいつも気になった作品があると、作品リストに丸印を付けて
帰宅後に思い出せるようにそこに一言コメントをメモしておくのだけど
それをやってたら作品リストがもう丸印だらけになっちゃって(^o^;。
「こりゃもう図録購入決定だわ」と、この時点で諦めた(笑)。
中でも「いいな〜!これ好き!」と思ったのを羅列しておくと
『パリ風景』
『壁』
『レ・ジュ・ド・ノエル』(和歌山県立近代美術館所蔵)
『コルドヌリ(靴屋)』(茨城県近代美術館所蔵)
『パリの街角(家具付きホテル)』
『門と広告』
…このあたり。
(※所蔵館を書いたのは同じタイトル・同じ主題の作品が別にあるので
 それと区別するため)。

パリの古びた建物の壁を描くときのマチエール表現が凄まじい(◎_◎)。
30cmくらいまで近づいて凝視すると、先に観た『滞船』以上に
作家の息づかいまで感じられそうな気がして「うわぁぁぁ!」となる。
でも離れてみると、とてもスタイリッシュでカッコイイ。
(多分佐伯自身は「カッコイイ絵」を描こうと思っていたワケではないと思うけど)。

こんな感じでモーレツな勢いで制作に没頭した無理が祟ったのか
元々肺を患っていた佐伯は体調を崩し、
それを心配して迎えにきた兄と共に一旦帰国。
その時佐伯は「日本に留学してくる。必ずまたパリに戻ってくる」と
パリの画家仲間に語っていたそうだ。

1927年8月に、再びパリに戻った佐伯はますます画業に執心。
午前中に1枚、午後に1枚と猛烈なスピードで作品を完成させていったとのこと。
ここらあたりからヴィリエ=シュル=モランという田舎町に一時移り住む前の、
パリの裏町を描いた作品がすっごくイイ。
壁に貼られた夥しい数のポスターを描いた作品が《ザ・佐伯》。
もう、部屋に飾りたい!。
多分ずーっと眺めていても飽きない。
しかもこうした佐伯の絵の雰囲気が、東京ステーションギャラリー内部の
煉瓦の壁と非常にマッチするのだ。

お気に入りは
『ピコン』
『街角の広告』(大阪中之島美術館所蔵)
『ガス灯と広告』
『新聞屋』
『広告貼り』
『レストラン(オテル・デュ・マルシェ)』
『靴屋』


余談だが、佐伯の描くパリの街角の風景画は
人物が(添え物のように)描かれているものと、
まったく描かれていない無人のものとがあるのだけど
アタシはたった一人、針金人間みたいなのが端っこにちっちゃくでもいいから
人物が描き込まれている方がいいなと思う。
それだけで絵の中からその人物の靴音が聞こえてきそうな気がして
行ったこともないパリの空気感を感じられるからだ。

こんな感じで、2度目のパリで命を燃やし尽くすかのように
画業に励んだ佐伯だったが、文字通りホントに燃やし尽くしてしまう。
1928年3月、小雨の降るパリで写生を続けて風邪を弾いて寝込んでしまい
そこから坂を転がり落ちるように心身共に衰弱し、
その年の8月に結核で亡くなってしまうのだった。享年30歳。
しかもその2週間後には、一緒に行っていた6歳の娘の彌智子も
同じ結核で短い生涯を閉じる。
二人の遺骨を手に、日本に帰ってきた奥さんの心中は
とてもじゃないが計り知れない。

奥さんが「あれは神様だったんじゃないか」と話していたという
『郵便配達夫』や、最後の最後に描いたと思われる『扉』。
これらの作品も凄くいい。
もっと生きていたらどんなに凄い絵を描いただろうかと思うと同時に
自分の命が短いことを知っていたからこそ描けた絵なのかな、とも思う。

心に残る素晴らしい展覧会だった。
誰か佐伯祐三の生涯を映画かドラマにしてくれないだろうか。


ちなみにこの展覧会の音声ガイドは、
最近よくあるスマホにダウンロードするタイプ。
うっかりイヤホンを持参するのを忘れたため
帰宅後に購入してダウンロードし、図録を眺めながら聴いた。
ナビゲーターは佐伯の高校の後輩でもある、元NHKアナウンサーの有働さん。
さすがに上手だし、佐伯の言葉を読み上げるときには
ちゃんと大阪弁で読み上げてくれているのが粋に感じられた。


というわけで自分土産は図録と切手風フレークシール、
それと友人に出す用のポストカード1枚。
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《オマケ》
注文したことを忘れかけていた
幸ちゃん書写真のカタログブックが本日到着(^^;ゞ。
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『高見沢俊彦の美味しい音楽 美しいメシ』も面白かった。
遠征したときに食べたいものが増えちゃって困るけど(笑)。
(ぐるりと。のチーズケーキ食べたい食べたい食べたーーーい!)
(北新地サンド=銀座サンドも今度買いにいこーっと)。
非常にレアな“SWEAT & TEARS”を聴いて
王子の声ってやっぱり特異だな、と思った。

1回30分で1グループでもいいから、第2弾、第3弾もあるといいな。
コメント(6) 

コメント 6

おかん

幸ちゃんのカタログ、うちは月曜に着きました。ステージが眩しいです!!
今回はオフショットにも猫ちゃんが居なくてちょっとだけ残念。
by おかん (2023-03-02 16:33) 

梅屋千年堂

>おかんさん
カタログの小さい写真でも、改めて観て
やっぱりいいなぁと思いました。
あと1ヶ月もすればまたあの眩しいステージで
眩しい3人に会えると思うと楽しみでなりません。

by 梅屋千年堂 (2023-03-03 21:28) 

おかん

そうですね。
4日のカモアルでの三人を見てたら早くLIVEに行きたくなりますね!
by おかん (2023-03-06 21:05) 

梅屋千年堂

>おかんさん
最近は「あの曲やるかな?」「これはどうかな?」と
妄想を膨らませてはワクワクしています(笑)。
ふと気付けば『天地創造』がリリースされてから一年余。
この1年、このアルバムばかり聴いていました。
そろそろ他の曲も予習しておかないと、ですね。

by 梅屋千年堂 (2023-03-07 23:51) 

おかん

なんか、色んな意味で春ツアー楽しみですね!(^^)!
by おかん (2023-03-08 08:28) 

梅屋千年堂

>おかんさん
なんと言ってもこの春はどうやら声を出して声援やら掛け声、
コール&レスポンスができそうなのが嬉しいです。
その前に、自分の健康管理も油断せずにしっかりせねばですね。

by 梅屋千年堂 (2023-03-09 00:18) 

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