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没後100年 宮川香山展 [EXHIBITION]

超絶!装飾美!!。

今週は「国芳・国貞」にするか、「PIXAR展」にするか、
はたまた「ガレの庭」か、「近代百貨店の誕生」か、
どの展覧会へ行くかかなり迷ったのだけど
「宮川香山」が4月17日までなので、これに行っておくことにした。

宮川香山(1842-1916)は、明治生まれの陶工。
生まれは京都だが、海外輸出向けの陶磁器を制作するため
1971年に横浜の大田村不二山下(現在の南区庚台)に
工房・真葛窯を開いた。
(当然だけど、横浜には肝心の土がなくて難儀したらしい)。

横浜に窯があったということで、なんとなく親しみを覚えていたけれど
なにしろその超絶技巧は一度目にしたら忘れられない凄まじさなのだ。

香山の作品は神奈川県立歴史博物館でいくつか観ることが出来るが
今回はその超越技巧の数々をまとまって観られるということで、かなりワクワク。
展示は期待通り「スゲー!スゲー!どーなってんの?!(◎_◎)」の連続で
何度タメイキをついたか分からない。
この嘆息感は以前も同じ場所で感じたことがあるような…と思ったら
そうだ!2011年に同じサントリー美術館で観た「マイセン展」だ。
香山の「やりすぎ装飾(笑)」はマイセンのそれに近いものがある。

全てが「凄すぎる」作品なのだが、中でも「これ好き」と思ったのは
・『高浮彫牡丹ニ眠猫覚醒蓋付水指』
 (展覧会のチラシやポスターになっているネコの水指)
・『高浮彫親子熊花瓶』
・『高浮彫熊鷹花瓶』
・『高浮彫南天ニ鶉花瓶』
・『高浮彫菊ニ鶉飾皿』
・『高浮彫群鴨水盤』
 (他の動植物がリアル過ぎて少々怖い中、この水盤の鴨はカワイかった)
・『高浮彫菊籠花瓶』
 (花瓶に貼り付けられた籠の細工がスゴイ)
・『黒釉高浮彫枯蓮ニ蛙花瓶』

作品名を見てわかるようにすべて「高浮彫」とあるのは
花瓶や皿から、動植物が彫刻のように飛びだしているから。
その飛び出し方がもう尋常でナイ(^^;。
一ヶ所だけ撮影が許可されている展示室があったので
そこで撮った画像を載せてみるけれども…

こんなだったり…
kouzan_1.jpg
(高浮彫桜ニ群鳩三連壷)

こんなだったり…
kouzan_2.jpg
(高浮彫桜ニ群鳩大花瓶)

ホントにもう、ちょっと粗相をしたら
パキン!といっちゃいそうなくらい細かい、
それでいて大胆なデザインなのだ。
ついつい立体部分に目が行ってしまうが
じっくり観察してみると、花瓶の面に2Dで描かれた絵付けも
物凄く精緻で、観てるとクラクラしてしまう。

いったいどうやったらこんなものが焼けるのか、想像もつかない。
焼き上がったものを窯から出すだけでも、
物凄い緊張感なんじゃないだろうか(^^;。

とにかく、これらの高浮彫の焼き物は
当時外国人に大人気で、相当な数が輸出され
日本に残された作品の数は限られていたそうなのだが、
田邊哲人という人物が精力的に海外から作品を買い戻し
多くの作品が日本に里帰りしたのだとのこと。

確かに今回展示されている作品の殆どが「田邊哲人コレクション」だ。
この田邊哲人って人はナニモノ?!と思って調べてみたところ
スポーツチャンバラの創始者だった(・o・)。

これらの高浮彫は、完成するのに半年以上かかるものもあり
完成品よりも、失敗して叩き割ったものの方が多かったらしい。
そんなものをよくもこれだけ量産できたなぁと感心したが
全盛期の工房には20人くらいの職人が働いていたらしい。
(それでも「たった20人で?!」と思ってしまう^^;)。

ところが、これだけ手の込んだ焼き物なので
やはり採算は合わなかったらしい。
そんなこともあって香山は、窯の経営を嗣子の半之助に継がせた後は
古陶磁や釉薬の研究開発に打ち込み、作風を一変させた。

展覧会の後半は、そうして作風が代わった後の作品が展示されているのだけど
それが一見なんだかフツ〜な焼き物になってしまって
最初は「なんかつまんなくなっちゃったなー」という印象なのだが
いやっ、よく観てみるとこれらもかなりの超絶技巧!。
作風が上品で大人しくなった分、
高浮彫のような「どーだーっ!」という主張は少ないのだけど
よ〜く観ると、やっぱり物凄い(^o^;。

折しもヨーロッパではアール・ヌーボーが台頭してきた時代で
アール・ヌーボー趣味を好む外国人にも
香山のこの新しい作風は人気が高かったらしい。
(二人のアメリカ人が、香山の作品の購入を巡って争った際、
 問題が大きくなる前に、香山は半之助に作品を叩き割らせたなんていう
 ちょっと痛快なエピソードもあるそうだ)。

・『釉裏紅白抜撫子図花瓶』
・『釉裏紅暗花柳図花瓶』
 (言われなきゃわからないくらいうっすらと柳が描かれている)
・『青華釉裏青海波文魚耳付花瓶』
 (花瓶の耳になっている魚は高浮彫風。下部のうっすらとした青海波が綺麗)
・『青華蟹図平花瓶』
 (ロイヤルコペンハーゲンのような綺麗な青)
・『緑地菊図花瓶』
・『釉下彩紫百合図香炉』
・『釉下彩蕾形菓子器』
・『釉下彩荒磯文茶入』

このあたりが印象に残った作品。
どれも、ツルンとして品が良く
あの高浮彫の焼き物を作ったのと同じ人物の作品とは思えない。

アタシは宮川香山と言えば、
ゴテゴテの高浮彫の作品しか知らなかったので
今回の展覧会で観た一連の釉下彩・釉彩は
個人的にちょっと嬉しい新たな発見と驚きだった。

帰宅して、宮川香山についていろいろ調べていたら
あら、横浜駅東口から徒歩10分程度のところに
「宮川香山 真葛ミュージアム」なんて施設があるんだ〜?
今度行ってみようかな…と思ったら、土日しか開館してない…。
仕事で行かれないっつーの_| ̄|◯。


ミュージアムショップでの買い物は
やや控えめに(?)ポストカード2枚と、マルチクロス。
kouzan_3.jpg
どういうわけか(横浜にちなんで?)
横浜キャラメルや、赤い靴チョコレート、磯右ヱ門石鹸なども売っていた。
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コメント 3

こたろう

こんにちは。
絵画みたいに美しく、リアリティがある陶磁器、私初めて見ました。(勉強不足です)。高浮彫の美しさにビックリでした。
マイセンよりもすごいですね。

作る工程を考えると、ものすごく大変そうな予感がします(笑)

by こたろう (2016-03-26 14:41) 

かりりん

宮川香山という名前にピンと来ず、はて?と思っていましたら写真を見て合点がいきました!
時々鑑定団にも出てくる、高浮彫のすごい技の陶器ですね!
うわ〜、一目見たいと思っていたのですが、まさか今の時期にサントリー美術館で開催されていたとは。。。_| ̄|○まったくノーマークでした。
知っていましたらこの間の上京時、山種美術館ではなくサントリー美術館に行っていたものを〜(>_<)

と嘆いていましたら、ゴールデンウィークから東洋陶磁美術館で巡回展が来るという情報が!やった〜!!今度は逃しまへんで〜!

私も秞彩の作品があるということは知りませんでした。ちらっと美術館のホームページに載っていましたが、こちらもどうやったらこんな作品ができるのか、というくらい美しいものでしたね。
見に行くのが今から楽しみです。前売り券探しておこうっと♪
by かりりん (2016-03-26 20:49) 

梅屋千年堂

>こたろうさん
香山の作品は花瓶が多いのですが、
これらの花瓶に負けない花を生けるのは至難の業だな…(^^;と思いました。
まぁ花瓶とは名ばかりで、実際は鑑賞用だとは思いますが。

そして、もしかしたらこの人が作りたかったのは花瓶ではなく、
本当に作りたかったのは精巧な動植物の焼き物であり
それを実現するために花瓶という手段を用いただけだったりして…
なんてことも考えてしまいました。

とにかく、スゴイです!。




>かりりんさん
巡回展では、大阪会場でしか展示されない作品もあるようですよ。
その中には重文に指定されているものもあり、ちょっと羨ましいです。
釉彩・釉下彩の作品も素晴らしいです。
高浮彫は再三が合わないから…と、
ガラッと作風を変えてしまう潔さもカッコイイです。
是非是非、超・超絶技巧を堪能してきてくださいね。

by 梅屋千年堂 (2016-03-27 00:11) 

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