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ホイッスラー展 [EXHIBITION]

横浜美術館で開催中の展覧会。

まず川崎大師に行って初詣パート2(^^;をしたあとに、横浜美術館へ。
実を言うと、今日は夕方の19時から《夜の美術館でアートクルーズ》に
参加することになっている。
今までだと《アートクルーズ》での鑑賞1回のみで終わるか、
《アートクルーズ》の後に改めて別の日に再度鑑賞という形をとっていたのだけど
今回はまず先に普通にチケットを買って鑑賞して、
その後で《アートクルーズ》に参加してみることにした。

01_whistler.jpg
横浜美術館って、開館25周年なんだ…。
一番最初の展覧会…ハッキリとは憶えていないけれど
中学時代の友人と、もンのすごーーく並んで観に行ったような記憶が…。

お金を出して二度も観るほどホイッスラーが好きなのか?というと
そういうわけでもない。ただ、《アートクルーズ》では自由時間があるとはいえ
◯時◯分までという制約があるので、1枚1枚をじっくり観ることが出来ないし
《アートクルーズ》で学芸員が解説してくれる作品と、
音声ガイドで解説される作品が必ずしも一致しないので
両方を網羅しておきたいという気持ちがあった。
ちなみに本展の音声ガイドのナビゲーターは、かのリリー・フランキー氏。
これにもちょっと興味あり。


ジェームズ・マクニール・ホイッスラー(1834-1903)はアメリカ生まれ。
鉄道技師だった父の仕事の都合で幼少期にロシアに移住。
1851年にアメリカに戻って士官学校に入るも中退。
その後、地形図の銅板画工として働いた後、画家を目指してパリに移る。

こうした一人の作家の回顧展では、作品を時系列に並べていくことが多いが
この展覧会はそうではなく、ホイッスラーの画業を
「人物画」「風景画」「ジャポニスム」のカテゴリーに分類して展示している。
どのカテゴリーでも一貫しているのは
「作品に主題や物語性などの意味を持たせない」ということ。
例えば人物画で言えば、描かれている人をいかにその人らしく描くかとか
その人の内面までもを描写するとかそういうことよりも、
如何に色彩と形の美を表現するか、ということに重きを置いている。

例えば『灰色と黒のアレンジメント No.2:トーマス・カーライルの肖像』
という作品では、トーマス・カーライルの顔を描くことよりも
彼の着ている黒いコートの形や、
全体の色調をいかに調和させるかということに没頭したため
モデルのトーマス・カーライルを呆れさせたのだとか。

「音楽は音の詩であるように、絵画は視覚の詩である」と述べたホイッスラーは、
作品のタイトルにも「シンフォニー」「アレンジメント」
「ノクターン」という音楽用語を多用した。
芸術の目的は旧来の慣習や道徳的な規律を伝えるものではなく、
純粋な色と形の美、視覚の喜びを追求するという唯美主義的な立場から
作品を描いていった。
簡単に言えば「ただただ見た目に美しい絵を描く」ということかも知れない。

なので、ホイッスラーの作品には、人物画にも風景画にも主題がない。
主題がないので、押しつけがましいところがない。
主題はないのだけど、ホイッスラーの人物画には謎めいたところがあるので
観る者は、そこに何か「意味」や「主題」をついつい見出したくなってしまう。
でも元々作者は何も意図していないので、
鑑賞者には、いろんなことを好きに想像することが許される。
もしかしたら、そんなところがアタシは結構好きなのかも。
(って、ちょっとここまで堅苦しく真面目に書きすぎた^o^;)。

『フレンチ・セット』『テムズ・セット』『ヴェニス・セット』といった
一連の小さな版画作品も、人物のとらえ方が
何気なく撮影したスナップ写真のようで、観ていて疲れない。

そうだ、ホイッスラーの絵は「観ていて疲れない」のだ。

個人的にはジャポニスムを取り入れた風景画作品が好み。
日本の浮世絵から構図や色彩のインスピレーションを得たという
一連の「ノクターン」のシリーズ。
中でも特に好きなのが
『ノクターン:青と金色 -オールド・バターシー・ブリッジ』という作品。
この展覧会の目玉の一つなのだけど、
隣には歌川広重の『名所江戸百景』のうち《京橋竹がし》も展示されていて
この浮世絵に影響されていることが、分かりすぎるほどよく分かる(^^;。

橋の向こうに、パラパラと散っている花火の灯りの感じと
水面に映る街の灯りの揺らめきが好きなんだけど
なんといっても、異様に長すぎる橋脚。これがイイ(笑)。
こんな橋、有り得ない。渡るのがオソロシイ。
でもこんな風に恐ろしく高い橋の上から花火を眺めるなんて
なかなかファンタジーだな、と思う。

なんかオカシイ、なんかオモロイと言えば
やはりこれも展覧会の目玉の一つである《白のシンフォニー No.3》。
白いドレスを身に纏った二人の女性が描かれているのだけど
そこには「主題」も「意味」もない。
だけど…
左側の女性の、身体を直角に折り曲げた無理な姿勢を観ていると
思わず「何か意味があるんじゃないか?」と考えたくなってしまう。
てゆーかこの体勢、試しに自分も取ってみたけどキビシ過ぎだと思う(^^;。

(どんな絵なのか気になる方はコチラへ)。

日本趣味は描かれた絵画のみならず、
ホイッスラー自身がデザインしたという額縁や
作品に入れるサインにも取り入れられている。
額縁には青海波がデザインされていたり
サインは自分のイニシャルであるJとWを組み合わせて蝶々の形にして
日本の花紋風にしたりしている。



ちなみにホイッスラーという人は、
1877年に『黒と金のノクターン:落下する花火』という作品を発表した際に
批評家のジョン・ラスキンに「まるで絵具壺の中身をぶちまけたようだ」と
酷評されたことに腹を立て、名誉毀損でラスキンを訴える。
ホイッスラーは訴訟には買ったけれども、訴訟費用が嵩んで破産。

また同年、パトロンであったフレデリック・レイランドが
ホイッスラーの『バラ色と銀色:陶器の国の姫君』と、
東洋の陶磁器コレクションを飾るためのダイニング・ルームの内装を
建築家のジェキルという人に依頼したのだけど、
その部屋のデザイン(壁の色)などが気に入らなかったホイッスラーは
邸宅の主人であるレイランドの留守中に無断でデザインを大幅に変更し
勝手に《ピーコック・ルーム》と名付けて、
そこに批評家たちを呼んで内覧会まで開いてしまう始末。
これを知ったレイランドはもちろん大激怒(当たり前だよねぇ^^;)。
ホイッスラーとレイランドは、それ以来絶交状態に。
(と言いつつ、レイランド実は案外この部屋が気に入っていたのか
 結局最後までこのダイニングはそのまま残したそうなのだが)。

破天荒で挑発的で、なんだかある意味困った人(笑)。
だけども、往々にして芸術家って人はそういうものかも知れない。

そんなホイッスラーが1890年に出版したのが『敵をつくる優美な方法』って本(^^;。
どんな内容なのかは分からないけど、タイトルから察するに
この人、他人とケンカすることを結構楽しんでたのかも〜なんて思ったりした。



で、今回のお土産。
ピーコック・ルームの壁に描かれたクジャクの絵が素敵な京都・豆政の豆菓子。
02_whistler.jpg

それとピーコック・ルーム・モチーフの、ちょっとゴージャスな金色のシールと
ホイッスラーの自画像クリアファイル。
03_whistler.jpg

クリアファイルの裏面が、ホイッスラーのトレードマーク?の「ヒゲ」。
06_hige.jpg
このヒゲグッズがなにやら種類豊富でちょっと笑った。

ポストカードも何枚か購入。
「この絵、好きだけどポストカードはないだろうなぁ」と思っていた
『ブルターニュの海岸(ひとり潮汐に)』という作品の
ポストカードがあったのは嬉しかった(*^^*)。
海の青色がとても綺麗なのだ。




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《オマケ》
美術館の前のMark is みなとみらいのイルミネーションが綺麗だった。
04_markis.jpg



05_markis.jpg
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