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マティス 自由なフォルム [FOOD&DRINK]

国立新美術館で開催中のマティスの展覧会。
(またまたまとめるのに時間がかかってしまって、実を言うと観てきたのは2月21日)。

本来ならば、この展覧会は2021年9月から12月に予定されていた。
ところが新型コロナ感染拡大の影響で延期になってしまった。
もしかしたらこのまま中止になってしまうのか?と
ちょっと残念に思っていたところに開催するとの知らせを聞いて
わくわくしながら待っていた。

マティスの展覧会は、昨年4〜9月にも東京都美術館で開催された。
この時は大回顧展ということで、マティスの生涯を振り返りつつ
バランス良く様々な作品を紹介していたけれど
今回は主にマティスが晩年に取り組んだ〈切り紙絵〉に
スポットを当てているのが個人的に嬉しい。

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国立新美術館に到着するやいなや、
向かう先は地下1階のカフェテリア カレ。まずは腹拵え。
「マティス 自由なフォルム」コラボメニュー
《牛すね肉のニース風赤ワイン煮込み バターライス添え》を注文。
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コク深いワインの風味が効いたお肉はホロホロと柔らかく、
ワンプレートだけどなんだかちょっと贅沢な気分(*^^*)。

お腹が満足したら早速展示室へ。
音声ガイドはアプリ版でダウンロード済み。
ナビゲーターは安藤サクラさんだ。

《Section1 色彩の道》
ここではマティス初期の作品を展示。
点描、筆触分割などの様々な手法を実験・研究していた頃で
作風もいろいろで模索が感じられる。
まだ所謂「ザ・マティス」的な作品はあまり観られない。
昨年のマティス展を観ずにこの展覧会を観ていたら
「マティスってこんな絵も描いてたんだ!」と驚くところだけど
ちょっと予習が出来ていたので、反芻しながら鑑賞出来た。


《Section2 アトリエ》
1914年に第一次世界大戦が勃発。
42歳で、体も丈夫ではなかったマティスは戦争に駆り出されることもなく
南仏ニースにアトリエを構え、そこで制作を続ける。
1938年に引っ越したアトリエでは、
コレクションしたオリエント風の家具調度品やテキスタイル、
オブジェを飾り、モデルにも東洋風の衣装を着せて
オダリスクをモチーフとした作品を多数制作。

ここでは実際にマティスが所有していた
「赤いムシャラビエ(アラブ風格子出窓)」という大きなテキスタイル(布)や
「ヴェネツィアの肘掛け椅子」と呼ばれる装飾的な椅子が展示されている。
テキスタイルの方は『小さなピアニスト、青い服』という油彩画に、
椅子の方は『ロカイユ様式の肘掛け椅子』という油彩画に描かれている。
こういう展示、好きだなぁ。
このテキスタイルや椅子を、マティスも実際に観ていたんだ!と思うと
なんだか時空を越えたロマンを感じるし、
マティスの目を通すとこんななっちゃうんだ!というのも面白い。

その他、
『赤い小箱のあるオダリスク』
『青い胴着の女』
『ザクロのある静物』
なども印象に残る作品だった。

このセクションではブロンズ製の彫刻作品も展示されている。
ここでアタシの目を捉えて放さなかったのは『蛇女』という作品。
そのタイトルからして「?!」という感じ。
その「蛇女」は支柱に肘をつき、蛇のように細い体を
軽く「くの字」に曲げて立っている。
太腿よりもふくらはぎの方が太いアンバランスさに妙に惹きつけられた。
原題は『The Serpentine』。
辞書で意味を引くと「蛇行した」「複雑で理解しがたい」
「ヘビのような」「狡猾な」「信用のおけない」…などなど。
確かにどの言葉もこの『蛇女』に当てはまる気がした。

また、マティスが色彩と同等に大事にしていた線の表現=デッサン作品も
ここで展示されていて、これがまたオシャレでカッコイイ。
『男性の横顔(アラゴン)』
『ポンパドール夫人』
『デッサンテーマとヴァリエーション』
このあたりは特に印象的だった。


《Section3 舞台装置から大型装飾へ》
マティスはホントにいろんな仕事をするチャレンジャーで
1920年にはパリのオペラ座で上演された『ナイチンゲールの歌』の
舞台装置や衣装デザインも手掛けた。
ここでは1999年にモンテカルロ・バレエ団が『ナイチンゲールの歌』を
上演したときの衣装と映像を紹介。

また、1930から33年にかけて実業家でコレクターの
アルバート・C・バーンズの依頼で、壁画『ダンス』を制作。
もちろんここに実物の壁画は来ていないけれど、
(おそらく)原寸大の壁に壁画が完成するまでの過程を再現した映像と
構想を練るために描いた縮小版の習作が紹介されていて
マティスの試行錯誤が窺えた。


《Section4 自由なフォルム》
待ってました!やっと辿り着いた切り紙絵の展示コーナー!。
しかも最初に目に飛び込んできたのはアタシの大好きな『ジャズ』。
昨年6月のマティス展でも観たけれど、好きな作品は何度観てもやっぱりイイ!。
その時も「これがイイ」と書いたので重複するけど
『馬、曲馬師、道化師』
『ピエロの埋葬』
『コドマ兄弟』
『水槽の中で泳ぐ女』
『ナイフ投げ』
『礁湖』
このあたりがやっぱり好き。

あとは『ポリネシア、海』というゴブラン織りのタペストリー。
昨年のマティス展の『オセアニア、空』『オセアニア、海』も良かったけど
色合いは『ポリネシア、海』が好き。

残念ながら『ジャズ』は撮影不可だったのだけど、ここから先は撮影OK。
と言っても、なかなか正面から撮るチャンスがないと
こんな感じになっちゃうけれども(^^;。

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手前『葦の中の浴女』、奥『波』


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『ブルー・ヌードIV』
予め助手が色を塗った紙を、マティスが切り取って作品に仕上げていく。
ブルーと言っても、よく観てみると様々な濃さのブルーが
試行錯誤の末、複数使用されていることが分かる。


そしてこちらが今回の展覧会の目玉とも言える大きな作品。
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『花と果実』
サイズは縦約4m × 幅約8mの大作。
元々はあるアメリカ人コレクターの別荘の壁面装飾の構想の一つとして制作されたもの。


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寄って観てもとてもかわいらしい(*^^*)。


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昨年のマティス展でも観た『アンフォラを持つ女性』
ガラスに『花と果実』が映り込んじゃってるけど
それはそれで面白い…カモ(^^;。


今から73年前の1951年3月、日本初のマティス展が開催。
その年の文藝春秋の表紙。
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当時80歳を超えていたマティスは日本に来ることはなかったけれど
作品の選定や梱包、展覧会のポスターまで細かく指示を出したらしい。


《Section5 ヴァンスのロザリオ礼拝堂》
最終セクションでは、ヴァンスのロザリオ礼拝堂の建設にまつわる展示。

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『ヴァンス礼拝堂の外観のマケット(1/20)』
「小屋」という風情。
昔のアンテナみたいな十字架がかわいい。


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『ステンドグラス、「生命の木」のための習作』


展示室の様子
13_bees.jpg
右側の横長の作品は『蜜蜂』。
礼拝堂のステンドグラスの第一案として制作されたもの。
最終的に『生命の木』になったわけだけど
こっちが採用されていたら全然違ったものになっていたかも。


上の写真の奥に見えている縦長の作品は『聖ドミニクス』。
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更に先に進んで行くと、
広い展示室内にマティスがデザインした祭服の展示。
15_maquette.jpg
ここにはこの祭服を実際に神父さんが身に付けている写真などはなく
どんな感じになるのかなかなか想像しづらかったのだけど
帰宅して画像検索してみたら幾つかの写真が見つかった。
その姿は…なんというか…とっても…ファンキー!!!。
でもこの礼拝堂にはとてもマッチしている気がした。


そして展覧会の最後を飾るのは、ロザリオ礼拝堂の内部を再現した展示。
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時間の経過と共にステンドグラスから差し込む光も変化して
ロザリオ礼拝堂の1日を、ギュッと凝縮して体感できるという仕掛け。
上の画像は朝。


17_rosarychapel.jpg
こちらはおそらく昼頃。


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夕方。


19_rosarychapel.jpg
そして、夜。


鑑賞者のいる空間は陶板壁画の「聖母子」と「十字架の道行」に囲まれている。
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映ってないけど右側の壁は「生命の木」と同じ色調のステンドグラス。


21_rosarychapel.jpg
「十字架の道行」は、番号が振ってあるところが面白くて好き。
最初は「この番号、いる?(^^;」と思ったけど
番号があるお陰で、どの場面が描かれているのかが分かり易い…
とも言える。


特設ショップでは、カラフルで魅力的なグッズが満載だったけど
今日もグッと堪えてポストカードとブックマークのみ。

素敵な展覧会だった。
見応え十分で、全部観終わるのに2時間かかったけど
普通だったらグッタリ疲れるところだけど
不思議とマティスの切り絵メインの2時間はそれがなかった。

実物のヴァンス礼拝堂は、再現展示など比べものにならないほど
きっと美しいのだろうなぁなどと思いを馳せながら帰途についた。
コメント(3) 

コメント 3

なき

マティス、ちゃんと観たことないので羨ましい限りです。素人なんでわかりませんが
シンプルななかに奥深さを感じさせるようにもみえましてそのあたりが魅力なんですかね〜
東京時代に結局行けませんでしたが
東京は魅力的な展覧会がやっぱり多いですね〜

そして今回のコラボフードはシンプルでいい!
奇をてらいすぎないのもいいですよね

by なき (2024-03-07 06:56) 

おかん

とても見応えがあったようで、先に美味しいもの食べておいて良かったですね!
マティス、こちらで堪能させていただきました。
明るさと癒しを感じますね、素敵です。
南仏の礼拝堂はどんなところなのでしょう、イメージが膨らみますね。
by おかん (2024-03-07 17:07) 

梅屋千年堂

>なきさん
アタシはマティスの何が好きなんだろう?と考えた時に
部屋に飾りたくなるような気安さからかな、と思いました。
(もちろん気安くマティスを部屋に飾れるわけなんかないんですが笑)。

コラボメニュー、カフェテリア・カレのワンプレートはシンプルですが
サロンド・テ・ロンドの「本のある静物」スペシャルケーキセットや
ブラッスリー・ボール・ボキューズ・ミュゼの特別コース↓
https://www.hiramatsurestaurant.jp/paulbocuse-musee/menu/
は、なかなかスゴイ(しかも高い)です。




>おかんさん
南仏の礼拝堂は冬に訪れるのが一番いいそうです。
あの礼拝堂の中に、ぽつんと一人で佇んでみたい…と思いますが
きっといつも観光客でいっぱいですよね(^^;。

by 梅屋千年堂 (2024-03-07 19:03) 

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