SSブログ

河鍋暁斎 その手に描けぬものなし [EXHIBITION]

2月6日からサントリー美術館で始まった展覧会。

幕末から明治にかけて活躍した絵師・河鍋暁斎(1831〜1889)。
仏画、花鳥画、美人画、幽霊画、浮世絵、風刺画、戯画…
なんでも描いちゃう、しかもどれも巧い。
そんな河鍋暁斎の、多岐にわたる画業を紹介する展覧会。
01_kanban.jpg

と、その前に…

美術館併設の不室屋カフェにて、本日のおやつのようなランチ(^^;ゞ。
展覧会限定メニュー《粟麩のこしあん善哉》。
02_awafuzenzai.jpg
栗が載っかっているので「粟麩」が「くりふ」に見えてしまうが
「栗麩」ではなく「粟麩(あわふ)」である。
…なかなかトリッキーである(笑)。

むにっとした食感の粟麩に、なめらかなこしあんをかけたお善哉。
熱々なためまたしても舌をヤケドしたが、美味〜(* ̄▽ ̄*)。
通常アタシは「つぶあん派」なのだけど、
粟麩の食感を生かすには、こしあんの方が合ってるかも。

ホントは加賀棒茶かお抹茶が良いのだろうけども
これから展覧会を観るにあたり、頭をシャキッとさせたく
飲み物は砂糖・ミルク抜きのコーヒーで。
香ばしくて酸味も少なく、自分好みの味だった(*^^*)。



で、本題の展覧会。

入口で借りた音声ガイドを聴きながら中に入る。
ここでいきなり「アタシ知らなかった!其の壱」。
暁斎が茨城県(下総国古河)の生まれであったこと。
てっきり江戸っ子だとばかり思っていた。
ただ1833年には家族に連れられ江戸に移り住んでいるので
江戸で育ったと言ってもいいだろう。


まず第1章《暁斎、ここにあり!》と題して
いきなり暁斎の画業を代表するような凄い作品から登場する。

例えば『枯木寒鴉図』。
第二回内国勧業博覧会に出品され、暁斎が百円という当時にしては破格の値段をつけ
その理由を「これ鴉の値にあらず、多年苦学の値なり」と言い放ったということで
良く知られるカラスの絵。これ、好きだ〜。

そしてその隣にあるのが、同じく内国勧業博覧会に出品された『花鳥図』。
こちらは墨一色で描かれた『枯木寒鴉図』とは正反対に
鮮やかな色彩ででギッチリ細部まで描き込まれた作品。

これも凄いのだけれども、個人的に「うぉぉぉ!」と思ったのは
そのまた隣に展示されていた『観世音菩薩像』。
観音様の後光や、身に付けている金色のベールの透け感、
滝の飛沫を表現する技が凄い(◎_◎)。


第2章は《狩野派絵師として》。
ここでまた「アタシ知らなかった!其の弐」。
暁斎が一時狩野派に師事していたことは知っていたけれど
狩野派を離れてからも、暁斎自身が狩野派絵師としての自負を強く持ち続けていた
ということは知らなかった。

その狩野派での修行中、数え年19歳の時に描いた『毘沙門天像』。
…これがまたオソロシク巧い。

この章では、こうした狩野派門下時代の作品の他
狩野派の技法・画題の作品が集められている。
個人的に狩野派の絵はそれほど…なアタシなのだけど
正行院所蔵の『虎図』はカッコイイ!と思った。

もうひとつ凄い!というか、面白いと思ったのは『日課観音図』。
晩年、日課として毎日描き続けていたという観音図のひとつなのだけど、
観音様の背景になっている丸い後光と蓮華座は版画になっている。
毎日観音図を描くために、後光と蓮華座を版画にして刷っていたらしい。
(やはり毎日描くとなると後光や蓮華座まで描くのは面倒臭かったのか…
 などと思ってはイケナイ…^o^;)。


第3章《古画に学ぶ》。
ここでは、暁斎が狩野派絵師を自負しつつも
雪舟、土佐派、円山派、琳派、浮世絵など、
狩野派以外の技法も貪欲に研究していたことがわかる様々な作品が並ぶ。

古画を模写したものがいくつか展示されていたのだけど
その中で興味深かったのは、かの『鳥獣戯画』を模写したもの。
そしてそこから派生していったと思われる『蛙の蛇退治』、『蛙の学校』、
『蛙の人力車と郵便夫』といった蛙シリーズ。

そして円山応挙の描くかわいらしい子犬を参照したと思われる『竹に仔犬』。
なんだけど…応挙の子犬を参照した割には正直あんまりかわいくない(^^;。


第4章は《戯れを描く、戯れに描く》。
暁斎の作品においては、細部まで描き込まれたものよりも
墨でササっと描かれたような作品の方が個人的に好きなので
ここで展示されている作品は、どれも観ていて楽しくワクワクする。

『五聖奏楽図』や『大仏と助六』、
版画の『蒙古賊舩退治之図』、『風流蛙大合戦之図』など
以前開催された展覧会で観たことのあるものも少なくないが
面白いものは何度観ても面白い。

初めて観たものの中では『貧乏神図』が楽しい。
(2年前の「これぞ暁斎!」展で出ていたらしいが観た記憶がナイ…^^;)。
絵の中から出てこないように、足元をしめ縄の輪っかで囲まれた貧乏神。
貧乏神らしく、当然身なりはボロを纏っているのだけど、
その表装までもつぎはぎだらけでボロボロという凝りよう。
上から垂れ下がった細い風袋までもつぎはぎだ。

あとは酒宴の席などで、依頼に応じて即席に絵を描く「席画」の『百怪図』。
二幅の掛け軸の画面いっぱいに、さまざまな化け物が描かれているんだけど
恐ろしさは皆無で、コミカルな表情はなんだか楽しげ。


第4章の展示室を出たところにあるフォトスポット。
03_photospot.jpg
ここらでちょいとソファに座ってひと休み。



第5章《美醜の境界線》。
ここでは『幽霊図』や『地獄太夫と一休』との再会を果たす。
暁斎の描く美人画は、ただの美人画ではなく
美人と一緒に骸骨や閻魔大王が描かれていて
その背景に様々なストーリーが織り込まれている。

暁斎の描く「地獄太夫」はいくつかあるけれど、どれも好きだなぁ〜。
なんとなく髪がウェーブしてるし、着ている着物もオシャレ。
(そしてその着物の柄にもちゃんと意味がある)。
な〜んかロックな感じでカッコイイんだよね〜(*^^*)。


第6章は《珠玉の名品》。
特定の依頼主のために、手元で楽しむことを想定して製作された
作品集=アルバムのような画帖。
画面は小さくとも、とにかく細かい!。
展覧会ではごく一部しか観ることができないが
1ページ1ページめくって全部観てみたい。
会期中に細かく場面替えがあるようなのだけど
それをすべて網羅するには毎週通わねばならず…
いくらメンバーズクラブに入会したからとはいえ、さすがに無理(^^;。


最後の第7章は《暁斎をめぐるネットワーク》。
みたび「アタシ知らなかった!其の参」。
暁斎の息子も娘も絵師だった!。

二番目の妻の子が次男の暁雲、三番目の妻の子が長女の暁翠。
この二人が絵師なんだけど、ついでにWikipediaを見ていて驚いたのが
最初の妻は鈴木其一の次女・お清であった、ということ。
ほぇ〜〜〜っ!である(◎_◎)。

そんな暁雲と暁翠が、暁斎が『龍虎図』を描いた一双の衝立の裏に
それぞれ『鷹図』と『山水図』を描いている。
素人目に見ても、父ちゃん(暁斎)の技量には及ばないが
自分達の父親に対するリスペクトみたいなものはヒシヒシと感じる。

他に心に残ったのは、すごく繊細に描かれた朝顔が印象的な『幾世かがみ』、
楽しげな書画会の様子が描かれた『書画会図』、
そして、なんだか山口晃の『すずしろ日記』みたいな『暁斎絵日記』である。
(ホントは『すずしろ日記』の方が『暁斎絵日記』みたいなんだけども^^;)。


かなり見応えのある展覧会で、観終わって時計を見たら
入ってから2時間が経過していた。


ミュージアムショップで買ったのは、蛙シリーズのポストカード2枚。
05_postcard.jpg
でも帰宅して見てみたら『蛙の学校』のポストカードは、
2年前の「これぞ暁斎!」で同じの買ってた(^o^;。
でも今回のはハガキいっぱいに絵が印刷されているし
まったく同じじゃないから、まぁいっか。

それと、友達にプレゼントしようかな〜と思って買ってきた
型染め和紙のかえるさん。暁斎との直接の関係はまるでないが…(^o^;。
04_kaeru.jpg


森アーツセンターギャラリーの《新・北斎展》同様、
この展覧会も前期と後期で結構な展示替えがあるのでもう1回行かねば!である。
同じ六本木だし、2回目は北斎・暁斎いっぺんに観るか!。



-------------------------------
《2/15 21:09 追記》

河鍋暁斎記念美術館が出している一冊¥7,000〜8,000もする
『暁斎絵日記』はとても買えないので、こんなのを買った。

河鍋暁斎戯画集 (岩波文庫)

河鍋暁斎戯画集 (岩波文庫)

  • 作者: 河鍋 暁斎
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1988/08/16
  • メディア: 文庫



ホントはお手頃価格のこれも欲しかったけど、今回はガマン。

河鍋暁斎絵日記 (コロナ・ブックス)

河鍋暁斎絵日記 (コロナ・ブックス)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 2013/07/03
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



ちなみに河鍋暁斎記念美術館は埼玉県蕨市(駅は西川口)にあるらしい。
今度行ってみようかな。
コメント(10) 

コメント 10

かりりん

あう~、暁斎~、地獄太夫さま~!(ToT)
もう、ほんとにほんとにうらやましいの一言に尽きます。

見たくて見たくて仕方ありませんが、体調その他の理由でお江戸に上ることは難しそうです(T_T)

少しでも様子が分かってうれしいです。ありがとうございますm(_ _)m

私も梅屋さんがご存知なかった暁斎のいろいろ、知りませんでした~。
北斎も娘さんが応為という絵師だったようですから、あの時代は絵師の子供は絵師なのが普通だったのかな?

地獄太夫さまにロック、感じますよねぇ?(笑)太夫という特別な地位にいて、さらに何者とも違う雰囲気を漂わせているからでしょうか?
そんなところが大好きなのです。

次回は六本木で北斎と暁斎のハシゴですか…これまたうらやましすぎる企画ですね。
どうぞ楽しんできて下さいませ(^_^)

by かりりん (2019-02-15 08:17) 

梅屋千年堂

>かりりんさん
気休めになるかどうかわかりませんが、
割と今までの展覧会で観たことのある作品も多かったですよ(^^;。
暁斎は今、結構人気がありますから
またきっとすぐに別の展覧会で観られるに違いありません。
てか、いかがですか…蕨の河鍋暁斎記念美術館。
春ツアーや夏イベでこちらにいらしたついでに…。

北斎暁斎のハシゴは、3月の上旬にしようと思ってます。
(展示替えのタイミング的に)。
来週は横浜美術館のイサムノグチ/長谷川三郎(予定)、
再来週はBunkamuraのくまのプーさん展…かなぁ。

by 梅屋千年堂 (2019-02-15 22:15) 

おかん

河鍋暁斎・・私、ちょこっと見た気がしてて思い出しました。10年前、友人が古河市歴史博物館にパート勤務していて行った事がありました。その友人とは縁があったようで4年前初めてアルコンに誘ったらGSコーナーで嵌り立派なアル中に(笑)
by おかん (2019-02-16 19:56) 

梅屋千年堂

>おかんさん
古河市歴史博物館にも河鍋暁斎の作品があるんですね。
鷹見泉石記念館もなんだかカッコイイです!。

by 梅屋千年堂 (2019-02-16 23:52) 

こたろう

暁斎展、この作品どこかで見たな。と思ったら、数年前三菱一号美術館で観た記憶が。でもレポを読ませていただいたら、も一回行ってもよいかも!なんて思っちゃいました。

しかし!今年は私的には観たい展覧会が目白押しでして、一ヶ月に一回は上京してるのがちとヤバイ(笑)
あとバースデー外れたら行こうと思っていた奈良国立博物館の曜変天目茶碗(≧∀≦)
NHKが外れたので5月に行こうかな。と再び計画しています。
どうなることやら。
by こたろう (2019-02-17 00:25) 

梅屋千年堂

>こたろうさん
今回の暁斎展は、確かに以前の展覧会で観たものも少なくありません。
ただ良いもの・好きなものは何度観てもいいし、
「前に観た」ということを憶えている作品が多いということは
それだけインパクトの強い作品が多いということかも知れません。

>>観たい展覧会が目白押し
ですね〜。「今年は」というか、「今年も」(笑)。
現在既に購入済みの前売券…
「くまのプーさん展」「コルビュジエ展」「東寺展」
「クリムト展」「ローリング・ストーンズ展」「ウィーン・モダン展」…
買ったのはいいけど、本当に全部行かれるんでしょうか…(^o^;。

by 梅屋千年堂 (2019-02-17 21:16) 

こたろう

ストーンズ展忘れてました(^◇^;)
行かねば…
あと、今朝のツイで知ったのですが、曜変天目茶碗3つが各地で公開になるのですね!奈良への弾丸ツアーは滋賀と奈良に行くフツーの旅になりそうです。
今年こそはお目当は逃さないぞ!ということで買ってしまった「大人が観たい美術展2019」これ、面白すぎます。45周年イヤーの立派な金蔓になるはずが、眼福の旅に出たくなったわたしです。
by こたろう (2019-02-17 22:38) 

梅屋千年堂

>こたろうさん
実はストーンズ展は行かなくてもいいかなと思っていたのですが
チケットぴあのステージをプラチナに上げるために
チケットを購入してしまいました(^^;。

そして!曜変天目ありがとうございます!。
なんと、大徳寺龍光院のも観られるのですね(*゚∀゚*)。
これはなんとか時間を作ってMIHOミュージアムへ行かねばです!。

by 梅屋千年堂 (2019-02-19 01:24) 

こたろう

今日(昨日?)ル・コルビュジエ展行ってきました!建築とピュリスムをたっぷり堪能してきましたよー
ただ音声ガイドは必須な気が。
あるとないとでは、理解度と感動が全然違います!
何気に混雑してたのもわかる気がした展覧会でした
by こたろう (2019-02-24 01:34) 

梅屋千年堂

>こたろうさん
わー!いいなぁ〜!コルビュジエ展!。
来月20日に行こうと思っていましたが、
3月から日曜と第2・第4水曜日に建築ツアーがあるというので
それに合わせて4月に行くことにしました。
待ち遠しいです…建築のことは大してわからないけど(^o^;。

どうでもいいことですが
パソコンで「コルビュジエ」と打つ時に
いつも指が戸惑うアタシです(笑)。

by 梅屋千年堂 (2019-02-24 22:41) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。