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ベルギー 奇想の系譜 [EXHIBITION]

19日に行ってきた展覧会。
『ベルギー 奇想の系譜 ボスからマグリット、ヤン・ファーブルまで』

場所はBunkamura ザ・ミュージアム。
この日は午後からいろいろ予定があったので
午前中に観てしまおう!ということで。朝一番の10時に美術館到着。

Bunkamuraのエスカレーターを降りて行くと、
このような撮影スポットが用意されていた。
01_belgium.jpg
今回の展示の目玉であるボス工房の『トゥヌクダルスの幻視』の
桶の中に入って撮影しましょう、ということらしい(^^;。

展覧会の主旨をざっくりと説明すると、
フランドル(ベルギー)におけるへんてこりんで奇っ怪な美術作品を
15世紀から現代まで順を追って観ていきましょう、そんな感じ。
(ざっくりしすぎだろ^^;)。


まず第1章は《15-17世紀のフランドル美術》。

…なのだけど、入館者を最初に迎えるのは
現代アーティストのヤン・ファーブルの作品で
『フランダースの騎士(絶望の騎士)』という立体作品。

長い耳と鼻を持った頭部に、甲冑の胴、
足は細い角材といった、素材も見た目もアンバランスな作品。
頭の部分は、なにやら光沢のある素材でモザイクのように
びっしりと埋め尽くされている。
なんなんだろう?と眼を凝らして見ると…なんと!昆虫。
おそらくタマムシとかコガネムシとか…その手の甲虫。
玉虫厨子も吃驚仰天の夥しい数の甲虫でビッッッシリ(◎_◎)。
(虫嫌いの人にはたまらんだろうなぁ^o^;)。

作者のヤン・ファーブル…聞いたことがある名前である。
絶対にどこかで作品を観ているはず…と記憶を掘り起こしたところ
7年前に金沢21世紀美術館で観ていたことを思い出した。
舟越桂とヤン・ファーブルの展覧会をやってたんだ。
『雲を測る男』は恒久展示にもなっている。
あぁ、そうだ、あのヤン・ファーブルだ。

そんなことを思いながら、展示室の中へ進んでいく。


もとい、最初の章は《15-17世紀のフランドル美術》。
先だって東京都美術館で開催されていた
『ブリューゲル「バベルの塔」展』に乗じて(^^;
ボス工房、ボス派の油彩画や、
ブリューゲル(父)やルーベンスが原画を描いた版画などが展示されている。

まず注目すべきは、入口の撮影スポットにも用いられていた
ヒエロニムス・ボス工房作の『トゥヌグダルスの幻視』という作品。
放蕩の騎士トゥヌグダルスが眠っている間に観た
幻視=地獄の様子を描いたもの。
画面中央に大きな顔がバーン!と描かれているので
これがトゥヌグダルスなのかと思いきや、そうではない。
この時代の、この手の作品の多くがそうであるように
一見、主役がどこにいるのかがよくわからない(^^;。
この絵の主役トゥヌグダルスは、どこにいるのかと言うと
画面左下で、赤い服を着て微睡んでいる。

『ブリューゲル「バベルの塔」展』で観たボスの作品がそうであったように
この作品も単眼鏡を使って細部まで観察したくなる。
そして観察すればするほど、いろんなものが見えてくる。
地獄絵図と言っても、日本のそれのようにおどろおどろしい感じはなく
罪人たちを取り巻く怪物たちはみなどこか可愛らしいし、
懲罰を受けている人々も、あんまりつらそうではない(^^;。
遠くの方で建物が燃えさかっているのが見えるけれど、
そこでの懲罰はさすがにちょっとおっかなそうだ。

聖クリストフォロスを題材にした作品を複数比較しながら観られるのも楽しい。
更に『ブリューゲル「バベルの塔」展』で観た、
ボスの『聖クリストフォロス』も思い出しながら
「やっぱボスのが一番オリジナリティがあって面白いや」と感じたり。

ブリューゲルが原画を描いた版画の数々は
『ブリューゲル「バベルの塔」展』や、7年前の『ブリューゲル 版画の世界』などで
既に何度か観たことがある(と思う…タブン^^;)作品が多いが
それでもついつい単眼鏡を使って、細部までジッッッ…と見入ってしまう。

ルーベンス原画の版画では、なんと言っても
『反逆天使と戦う大天使聖ミカエル』が印象的。
反逆天使チームと大天使ミカエルチームの肉弾戦は
いかにもルーベンス、という感じである。

ルーベンスが奇想の系譜に入るのだろうか?と、ちょっと不思議に思ったけれど
悪魔や堕天使の表現が奇想…ということらしい。


午前中の早い時間帯だったせいか、そこまで混雑しておらず
1枚1枚を割とじっくり時間をかけて観ることが出来たので
この第1章で1時間くらい費やしてしまった(・o・)。
ヤバイ…。まだ半分以上の作品が残っているのに。

けれども第2章以降の展示作品は、
それほど1点1点をジッッッと凝視するようなものではなかったし
まぁあまり心に響かないものや、
元々あんまり好きじゃない作家(是即ちジェームズ・アンソール)の作品は
サラッとスルー(^^;ゞ。

第2章《19世紀末から20世紀初頭のベルギー象徴派、表現主義》
ここで印象に残ったのは
フェリシアン・ロッブス『毒麦の種を蒔くサタン』
  (ミレーの『種をまく人』と同じ構図。
   ミレーの『種をまく人』と同様にマタイによる福音書に
   取材しているのかも???)
ジャン・デルヴィル『ステュムバーリデスの鳥』『赤死病の仮面』
  (いずれもいわゆる“怖い絵”)
ウィリアム・ドグーヴ・ド・ヌンク『黒鳥』
  (奇想なものは描かれていないが、どこか不思議な世界)
ヴァレリウス・ド・サードレール『フランドルの雪』
  (音声ガイドでも語られていたが、ブリューゲル(父)の
   『雪中の狩人』と同じ空気が漂っていて、
   ここは狩人たちが住む村なのではないかと感じさせる)
…こんなところか。


第3章《20世紀のシュルレアリスムから現代まで》
ここではアタシの好きなマグリットの作品が展示されているので
またちょっと「じっくり鑑賞モード」。

2年前のマグリット展で印象に残った
『前兆』『観光案内人』『大家族』と再会。
そして(おそらく)初めて観た中では『9月16日』という
1本の木立とその真ん中に三日月が描かれた
小さなサイズの作品が強烈に印象に残った。

現代アートのカテゴリーでは、なんと言っても立体作品が楽しい。
一番「ウケた」のはマルセル・マリエンの『見つからないもの』。
ラウンド型の黒縁メガネなのだけど、一眼分しかない。
一眼分のフレームに、ちゃんと2本のテンプル(腕)が付いている。
一つ目小僧、あるいは唐傘お化け、
はたまた目玉のお父さん用のメガネなのか?!
とにかく観た瞬間に「プッ( ̄m ̄)」と笑ってしまう。

そしてウィム・デルヴォワの『プレッツェル』。
パッと見ではなんなのか判らない。
が、よーく観てみると、十字架に掛けられた複数のキリスト像が
縦に連なったままびよ〜んと引き延ばされて、
お菓子のプレッツェルのようにぐにゃっとよじれながら繋がってる。
こ、これはキリストに対する冒涜ではないのだろうか?
こんな作品を作ってしまって大丈夫なんだろうか?
その筋から「冒涜だ!」なんて非難されたりしないんだろうか?
などと余計な心配をしてしまったが、
音声ガイドで「磔刑図の普遍性を表しているとも言える」というような
解説を聞いて思わず「なるほど!」。

更に、強烈なインパクトで展示室の中央を占拠している
トマス・ルルイの『生き残るには脳が足らない』。
タイトルとは裏腹に、小さな体に大きな頭。
小さな体は大きな頭を支えることができず
頭は首からぐにゃりと折れてドサッと床に落ちている。
非常にシリアスな雰囲気を放っているが…やっぱり笑ってしまう(^m^)。


別にベルギーの作家ばかりがヘンテコリンなものを
描いたり作ったりしてきたわけではないはずだけれども
ベルギーのヘンテコリンな作品の系譜に着目したという点で
とっても面白い展覧会だったと思う。

しかし…作品保護のためとはいえ、冷房がキツ過ぎて
ストールを羽織っていても寒くてたまらず、
最後の方は「早く出たい…{{ (>_<) }}」そればっかり考えていたことはナイショだ(^^;。


自分土産はポストカード4枚。
02_postcard.jpg
これのポストカードはないだろうなぁ…と思っていた作品
(『黒鳥』と『フランドルの雪』)のポストカードがあったのは嬉しかった。

あとはメゾン・ダンドワのビスケット「スペキュロース」。
03_biscket.jpg
ブラウンシュガーとスパイスの効いたビスケット。
今時ちょっと珍しい、堅焼きのビスケット。
この歯触りと風味…どこか懐かしい感じがすると思ったら
そうだ!この堅さは泉屋のクッキーだ!!!。
…メゾン・ダンドアはブリュッセルのお菓子屋さんなんだけどね(^^;ゞ。
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えの

ダンドワは大丸の地下にあってたまに買っているのですが、いつだかテレビでワッフルが取り上げられてしまったらしく、その後行ったらワッフルのみ売り切れてました。今まで売り切れたのなんて見たことなかったんですけど・・・。
マネケンでも売ってるしっかりタイプと、外はかりっ・中はしっとりとした長方形タイプとあります。
ワッフルもお試しください♪
by えの (2017-07-25 09:58) 

梅屋千年堂

>えのさん
そういえば展覧会のショップでワッフルも売っていたような気がします。
ひょっとしたらあれもダンドワだったのだろうか???。
ちょっと嵩張るので買いませんでしたが…。
今、ダンドワのサイトをチェックしてみましたが
大丸のお店では焼きたても手に入るのですね。美味しそう(*^^*)。
今度あちら方面に行くことがあったら覗いてみまーす。

by 梅屋千年堂 (2017-07-25 22:01) 

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