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神の宝の玉手箱 [EXHIBITION]

(2つ前の記事の続き)。

根津美術館から、サントリー美術館へ移動。

ランチをもりもり食べ過ぎたので、根津美術館からミッドタウンまで徒歩移動。
と行っても20分弱なので、大した腹ごなしにはならないのだけど(^^;。

5/31から始まった『神の宝の玉手箱』という展覧会。
01_tamatebako.jpg

タイトルにあるように「玉手箱」にスポットを当てた展示である。

元々、貴人の手回り品(化粧品など)を収納する箱として作られた「手箱」。
それが螺鈿や蒔絵で豪華に装飾されるようになり
神様に奉納する宝物を入れる箱としても制作されるようになる。
特に鎌倉〜室町時代に作られた手箱は完成度が高く、
この展覧会では、その時代に作られた豪奢な手箱と
それに関連・付随する調度品や神宝、その他様々な資料が紹介されている。

目玉はなんと言っても、サントリー美術館所蔵の
国宝『浮線陵螺鈿蒔絵手箱(ふせんりょうらでんまきえてばこ)』である。
50年ぶりに行った修理後の初公開となる。

が、もちろんいきなりメインの展示物が登場したりはしない。

第一章は《玉なる手箱》というカテゴリーだけれども
ここではまだ『浮線陵螺鈿蒔絵手箱』は登場しないのだ。
…とはいうもののここでは『秋野鹿蒔絵手箱』という、
出雲大社が所有する国宝の手箱の他
重要文化財クラスの手箱がいきなり複数登場する。

『秋野鹿蒔絵手箱』は、秋草が生い茂る中に佇む鹿と
その周りを飛び交う小鳥たちが、蒔絵と螺鈿によって箱全面に表現されている。
音声ガイドによると、秋草の茂みの中にキリギリスが1匹だけいると言うのだけど
照明が暗いこともあり、さっぱりわからない(-_-;。
単眼鏡を取りだしてじっくり観てみたけれどやっぱり見つからず
いきなりちょっと悲しい気分(^^;。


第二章は《手箱の呪力》。
玉手箱と聞いて、現代に生きるアタシ達がまず思い浮かべるのは浦島太郎だろう。
浦島太郎が竜宮城から持ち帰った玉手箱を開けたら
お爺さんになってしまったというアレである。
このように玉手箱には、開けてはならない禁断の箱というイメージも存在する。

この章では、玉手箱にまつわる伝承を描いた絵巻などが展示されている。
例えば江戸時代に制作された『天稚彦物語絵巻(上巻)』。
三姉妹の末娘と結婚した天稚彦が天に旅立つことになった時に
「留守中にこれを開けると、地上に戻ってくることが出来なくなる」と言い残し
玉手箱(のようなもの)を置いていくが、
娘の姉たちがこれを無理矢理開けてしまうため、
天稚彦は地上に戻れなくなってしまう…という場面が展示されている。

こちらはまぁそれなりにしっかりした絵と詞書で書かれているのだけど
もうひとつの『浦島絵巻』の方は、なんだかちょっと
思わず笑ってしまうような若干稚拙な絵(^m^)。
最後に浦島太郎が玉手箱を開けてしまった場面では
箱から煙…というよりも水みたいな筋状のものがピューッと飛びだして
浦島太郎に降りかかっているのか、なんともいえずオカシイ。


第三章は《生活の中の手箱》というテーマだが
ここでは個人的にさして印象に残る展示はなし(^o^;。


第四章は《浮線陵文と王朝の文様》。
浮線陵文をはじめとする、様々な有職文様(ゆうそくもんよう)に関する展示。
有職文様とは、平安時代以降、家格や位階に応じて
公家の装束や調度品に付けられた文様のこと。
浮線陵文の他、臥蝶文、藤円文、三重襷文、桐竹鳳凰麒麟文などの
文様が付された装束や調度品が紹介されている。

個人的に目を引いたのは『源氏物語図屏風 須麻・橋姫』という屏風絵。
源氏と、そのおつきのもの達が身に付けている装束に
ここで紹介された文様が描かれている。
今までこういった装束に描かれた文様を見ても
「細かいなぁ〜」「綺麗だなぁ〜」と思いながら眺めているだけだったけど
こうやって文様の名前や意味をわかった(というより囓った?)上で鑑賞すると
ちょっとなんだか見方が広がっていく気がした。


美術館内の4階から3階へ移動する階段がある吹き抜け部分では
《名品手箱の模造と修理》というテーマで、
近現代の名工達が、過去の名品から材料・技法を学び
忠実に作られた模造品がずらりと並ぶ。

「模造品」というと聞こえが悪いが、
どれもこれも技術の粋を集めて製作された、見事な品ばかり。
冒頭で見た『秋野鹿蒔絵手箱』の模造品もあり
これのおかげで、さっきはまったくわからなかったキリギリスの存在も確認ヽ(^。^)丿。
なんだ〜、こんなド真ん中にいたのか〜。

この後登場する『浮線陵螺鈿蒔絵手箱』の模造もある。
本物はきっとまた薄暗い場所に展示されているだろうから
この模造品で、細かい部分をチェックしておいたりなんかして(^^;ゞ。

ここで特にスゴイのは、『籬菊螺鈿蒔絵手箱および内容品(模造)』。
この手箱は、1873年のウィーン万博に出品されたが
日本に戻る際、展示品を乗せた船が伊豆半島沖で座礁・沈没してしまい
他の出品物と共に海の底に沈んでしまい、そのまま失われてしまった。

しかし後年、この手箱の詳細を記した『籬菊螺鈿蒔絵手箱図』を元に
復元模造を制作され、その模造品が展示されているのだけど
これがもう、感動的に美しい!。

そしてこの時の沈没の1年半後に、海底から引き上げられたという
『唐草蒔絵置物台』と『色絵団扇蒔絵料紙箱・硯箱』も展示されているのだけど
1年半も海の底に沈んでいたとは思えないほど傷みが少なく、
日本の漆芸技術の高さと堅牢さを物語っていた。


そしていよいよ真打ち登場!。
3階の展示室の中に入っていくと、他よりも広く取られた空間の中に
独立したガラスケースに収められた『浮線陵螺鈿蒔絵手箱』が
薄暗がりの中にぼんやりと浮かび上がっている。
まるでどこか異次元の世界から降りてきたような神秘的な佇まいである。

正直なところ、これまで印刷物やWEB上の画像で
この手箱を観ても、これのどこがそんなに凄いのか分からなかった。
でも、実物を目の当たりにすると、その細工の精緻さに目を奪われて
「こりゃ〜スゴイや!(◎_◎)」ということになる。
やっぱり実物やホンモノを観ることって大事なことなんだなぁ。

ちなみに6/21〜26の期間中は蓋を開けた状態、
つまり蓋裏の見事な蒔絵も観ることができるそうだ。
(この期間は前期展示の国宝『秋野鹿蒔絵手箱』と
 後期展示の国宝『片輪車螺鈿手箱』を同時に観ることもできるらしい)。
行きたいけど〜…日程的にちょっとキビシそう(-_-;。


最後の第五章《神宝と宮廷工芸》では
神宝として奉納されるようになった手箱や工芸品を紹介。
ここには熊野速玉神社からやってきた20点弱の国宝がズラ〜ッと展示されている。
…春日大社展の時もそうだったけど、
これらの神宝が非常に貴重なものであることはわかる…
でも、興味があるかっていうと、個人的には実はそんなに…(^o^;(^o^;(^o^;。

というわけで、ここはサラッと鑑賞し展示室の外へ。


グッズは、『浮線陵螺鈿蒔絵手箱』の金箔風のゴージャスなクリアファイルなんかが
素敵だったけれども、ここはグッと堪えてポストカード3枚のみ。
02_postcards.jpg

実を言うと、今年の初めに何を血迷ったのか(^o^;
サントリー美術館のメンバーズ・クラブに入会したのだ。
もし会員になってなかったら、この展覧会をわざわざ観に来ることは
なかったかも知れないけれど、思っていた以上に見応えがあり
「観といてヨカッタ〜(*^^*)」と思える展覧会だった。
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おかん

新聞広告が目に留まりました、100円割引が付いてる!
玉手箱、実物見てみたいです~。
by おかん (2017-06-09 05:52) 

梅屋千年堂

>おかんさん
木で出来ているのに、まるで金属のような質感です。
ゴージャスな金の手箱は、それだけで宝物感満載です。
写真ではわからない「凄さ」が実物から伝わってきますよ。

こんなに見事な品なのに、あくまで「道具」なので
作った人が誰だかわからないところにまたロマンを感じます。

by 梅屋千年堂 (2017-06-09 22:14) 

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