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オルセー美術館展 [EXHIBITION]

国立新美術館で開催中の展覧会、
『オルセー美術館展 印象派の誕生 -描くことの自由-』。

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印象派にはさほど興味がないと常々書いているけれど
世界的名画が来日するとあらば、そこはやはり観ておきたい。
今回は「世界一有名な少年」と称される《笛を吹く少年》がやってくる。
教科書で誰もが一度は目にしているであろう、あの作品である。

それにしても『オルセー美術館展』って、なんだか割と頻繁にやってる印象(^^;。
このブログを始めた2005年から見てみても2010年にやっているし
行ってないけど2007年にもやってるし、
持ってるレターセットの中には「ORSAY1999」なんて書いてあるものがあるから
おそらく1999年にもやっていて、それも観に行っていたのだろう。

今回のテーマは「印象派の誕生 -描くことの自由-」。
印象派がメインのようではあるが、それだけではなく
印象派の黎明期に、その周辺を取り巻いていた
アカデミスムやレアリスムの画家の作品展示されている。
それらを並列して展示することで、当時の印象派絵画が
いかに斬新で異端であったのかを肌で実感することができる。

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15時近くに行った割には館内は結構混雑していたけれど
割と大きな作品が多いので、後ろの方からでも人々の頭の隙間から
作品の全体像を観ることができて、ストレスは殆どない。

展示はまず新しい絵画表現に取り組んだエドゥアール・マネの展示から始まる。
テーマは『マネ、新しい絵画』。
そしていきなりここで、今回の目玉の一つである《笛を吹く少年》が登場する。

《笛を吹く少年》は、今の時代に生きるアタシ達が観ても
「これがそんなに斬新なのだろうか?」と思ってしまうけれども
後に展示されるレアリスムやアカデミスムの作品と比べてみると
ほとんど陰影のないペタッとした塗り方や、奥行きを感じさせない表現が、
いかにそれまでの絵画にはなかったものだったか
ということが理解出来る。

で、《笛を吹く少年》はもちろんそう言われてみれば素晴らしい作品なのだけど
それよりもアタシが「うわ、これ凄い。これ好き」と思ったのは
同じくマネの《ウナギをとヒメジ》という二匹の魚を描いた作品だった。
36cm×46cmという、大きくはない作品で
この絵にとりわけ注目している人はそれほどいないようだったけど
ヒメジの鱗の質感が凄いのだ。大胆な筆致でザッザッ!と描いていて
レアリスムとは程遠い塗り方なんだけど、鱗の1枚1枚の質感が伝わってくる。


2番目の展示室は『レアリスムの諸相』。
ここでの目玉はミレーの《晩鐘》。あまりにも有名な、あの作品。
思っていたよりも小ぶりな作品だった。


そして3番目の展示は『歴史画』。
当時は宗教画や、歴史的な事件を描いた歴史画が最も高尚な絵画とされていた。
ここでアタシの目を引いたのはドローネーの《ローマのペスト》という作品。
これも何かの教科書で観た記憶のある作品だ。
なぜ「何かの教科書」なのかというと、美術の教科書ではないような気がするから。
歴史の教科書だったような気がするのだけど…
でも歴史上の出来事を解説するのに、
このような天使が飛んでる非現実的な絵を用いたりするだろうか?。
(でもドラクロワの《民衆を導く自由の女神》も歴史の教科書で見た記憶が…)。

で、アタシは今まで、この絵は
「天使が人々のペストを治して歩いてる(飛んでる)絵」だと思っていたんだけど
実はその真逆で
「天使が悪魔を引き連れてやってきて、悪魔に槍で扉を叩くように指示する。
 悪魔に扉を叩かれた家では、その叩かれた数だけの死人が出る」
そんなおっかない場面を描いた絵だったのだ。
(そう言われてみれば天使の顔が怖い^^;)。


4番目は『裸体』。
アカデミズム重視のサロンに歓迎された、まるで陶芸品のような裸体と
マネやミレー、ルノワール、セザンヌが描いた
普通の女性の普通の裸体を対比させた展示。


5番目の展示は『印象派の風景 田園にて/水辺にて』。
ここではルノワールの《イギリス種のナシの木》という作品にクラッときた。
印象派の中でも、特にアタシはルノワールがダメなのだけど
(どの女の人もみんな同じかわいい顔なので…^^;)
この風景画は、なんというか…木立の緑が、ピントが合ってる部分と
蜃気楼みたいにモヤッとした部分とがあって
なんだかこう、観ていて眩暈を覚えるのだ。マジでクラッとするのだ(◎_◎)。
とても長い間見つめていることの出来ない絵。でも観ちゃう(笑)。

あとはモネの《かささぎ》における雪の表現も素晴らしいと思った。


6番目は『静物』。
ここではまるで3Dを観ているかのような錯覚を覚える
アンリ・ファンタン=ラトゥールの『花瓶のキク』が目を引いた。


7番目は『肖像』、8番目は『近代生活』と続き
最後は再びマネが登場。『円熟期のマネ』というテーマで展覧会は幕を閉じる。
ここでは『アスパラバス』という小品と、『ロシュフォールの逃亡』が秀逸。
特に『アスパラガス』はその絵が描かれたエピソードが良い。
この作品を描く前に、
一束のアスパラガスを描いた絵を800フランで売却したモネ。
ところが買い手から送られてきた金額は1000フラン。
その上乗せ分200フランのお礼として、モネは
「あなたのアスパラガスの束から1本抜け落ちていました」
という言葉を添えて、このたった1本のアスパラガスが
テーブルに転がった絵を描いて、買い手に送ったのだそうだ。粋だねぇ〜(笑)。


作品の点数も多すぎず少なすぎず、
音声ガイドも解説も多すぎず長すぎず
(=一つの作品の前に人集りが出来ることもなく)
いろんな意味でバランスの取れた、いい展覧会だった。


そして、誘惑のミュージアムショップ(^o^;。

今回購入したのは、ミニ図録、ポストカード4枚、
伊東屋とのコラボ商品である水彩画ロール。
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冒頭でめちゃめちゃ気に入った『ウナギとヒメジ』のポストカードは
残念ながら(マニアック過ぎて?)なかったので
仕方なく…ってわけでもないんだけど、ミニ図録を購入。
これが『ウナギとヒメジ』。
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水彩画ロールってのは、要するにロール式のペンケース。
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以前から小洒落たロール式のペンケースが欲しいと思っていたので
ちょっと高かったけれども「えいやっ!」と購入。
ホントは《笛を吹く少年》をモチーフにした赤&黒のツートンカラーのが
あったら良かったのだけど、水彩画ロールは単色モノしかなく、
単色モノも5色もあって迷ったのだけど、スモーキースカイというブルー系にした。

あっ!そうそう。消え物も1点買ったんだった。
京都のお菓子屋さん「ぎをんさかい」さんとのコラボ商品《京ごころん》。
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そこはかとない塩味が美味〜♪なのだった(*^^*)。
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コメント 5

きゅう

「ウナギとヒメジ」は確かにマニアックすぎて開催期間が終了したら営業部長さんの自宅に大量に届きそうな予感がしたのでしょうか?

「笛を吹く少年」というと…ベルヘラルドを思い出してしまう名古屋市民です(わかる人しかわからないマニアックネタ)。
お店に行くとこの絵が掛かっていた記憶が強かったので、教科書で見ても「洋菓子屋さんの絵」としか認識していませんでした(笑)。あまりにも身近すぎて高尚なイメージが無かったのです。
40代辺りの人にとっては「名古屋一有名な『洋菓子屋の』少年」ですね(もうお店は無いと思うけど)。



by きゅう (2014-09-05 03:12) 

梅屋千年堂

>きゅうさん
やっぱりマニアック過ぎですかね>ウナギとヒメジ(^^;ゞ。
いい絵だと思うんだけどなぁ。
1本のアスパラガスの絵がポストカードになるんだから
ウナギとヒメジがポストカードになってもいいじゃないかと思うのですが…。

ベルヘラルド…思わずググってしまいました。
きゅうさん同様、この絵を観た瞬間に「ベルヘラルド!」と思ったという方が
やはり何人かいらっしゃいましたよ(^_^)。

by 梅屋千年堂 (2014-09-05 21:43) 

りく

おはようございます。
絵画は全然わかりませんが、
梅屋さんに解説してもらうと
絵を見る事は楽しいのだなぁと。
そして、いつも楽しみにしているのは、ポストカードなどのグッズです。

前の記事で紹介された万年筆、
毛筆は大丈夫なのですが、万年筆で字が書けなかったんですが、
「かくの」は私にも大丈夫みたいです。スラスラと書けるようになりたいです。
by りく (2014-09-06 07:23) 

月あかり

夏イベの翌日、立ち寄りました。
モネの〔かささぎ〕…感銘しました♪
動と静の対極の2日間でした(*μ_μ)♪
梅屋さんの美術館レポも素晴らしいですね!素敵な感性v(=∩_∩=)
by 月あかり (2014-09-06 11:48) 

梅屋千年堂

>りくさん
絵を観るのももちろん楽しいですが
美術館とか博物館の、あの非現実的な空間がたまらなく好きなのです。
大きな美術館の大規模展覧会だと、展示室がまるで迷路のように入り組んでいて
アタシにとってはちょっとしたアトラクションのような感じです。
しかも最近の美術館はショップやレストラン・カフェも趣向を凝らしているし
大きな展覧会になるとグッズもいろいろなものがあって
そのあたりもかなり楽しめるんですよ。

万年筆ね…
実は前記事で迷っていたLAMYも買ってしまいました。
(上の画像の水彩画ロールの中に入ってますが^^;)。
しかもSafariでなく、Alstarというアルミ製ボディのシリーズ。
「ディープパープル」という色に惹かれてしまいました(笑)。
こちらもかなり持ちやすくて書きやすかったですよ。




>月あかりさん
「かささぎ」、いい絵でしたね。
最初「えっ?かささぎ?どこに?」と思ったことはナイショですが(^^;。

美術展レポは、ライブレポ以上に
個人的な感想をつらつらと羅列しているだけなので
こんな駄文を読んでいただけるだけでもありがたいです。
(そして少し恥ずかしい^o^;)。

by 梅屋千年堂 (2014-09-06 21:10) 

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