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鈴木其一・夏秋渓流図屏風 [EXHIBITION]

行ってから既に2週間近く経ってしまったけど…

一応「行ったぞ」という覚え書き。

根津美術館で開催中の
『重要文化財指定記念特別展 鈴木其一・夏秋渓流図屏風』。
其一の作品がまとまって観られる!ということで
12月2日に行ってきた。

鈴木其一(1796 - 1858)と言えば江戸琳派の祖・酒井抱一の高弟。
酒井抱一の弟子という取り上げられ方が多い印象だけど
5年前のサントリー美術館での『鈴木其一展』のように
最近わりと単独で注目されることが増えてきた気がする。

このたび重文指定を受けた『夏秋渓流図屏風』は
根津美術館が所有する其一の代表作のひとつ。
アタシが初めてこの屏風を目にしたのはおそらおく2014年。
第一印象は「なんだかへんてこりんな絵」。
当時のブログの記事を遡って見てみたら
「やりすぎ感満載」なんて書いていた(^o^;。

今回の展示では、其一が如何にしてこの作品に辿り着いたのかを
検証している点が興味深い。

紅葉した桜の葉はとてもリアルに描かれていて
このあたりは師匠・抱一譲りという感じ。
でもこれは師弟関係なんだから影響を受けていて当然。

他に其一が影響を受けた可能性があるとして
円山応挙の『保津川図屏風』や山本素軒の『花木渓流図屏風』が
紹介されている。
応挙の『保津川図屏風』では、奔流が屏風の左右と奥から
中央に向かって流れてくる構成が其一の『夏秋〜』と共通しているとし、
素軒の『花木渓流図屏風』では、隆起する緑の地面に
トリミングされた木々が林立する構図が『夏秋〜』が類似しているとして
この2双の屏風も『夏秋〜』の近くに展示されている。
山本素軒は京都狩野派の絵師。
其一は京都を旅した際に素軒の『花木渓流図屏風』を見たのではないか、
とのこと。

そんなことを踏まえて『夏秋』とこれらの屏風を見比べてみると、
確かにそんな感じがする。。
つまり『夏秋渓流図屏風』は、抱一から受け継いだもののみならず
様々な要素が盛り込まれているのだ。
こうしたいろんな要素の融合に、其一は挑んだのではないかと思われる。
見ようによっては「なんでもあり」だったり
「どこか一貫性のない絵」だったりするけれど
また一方では、様々なものを取り入れて一つの世界にまとめようとした
実験的でチャレンジ精神に溢れる作品なんだな、と認識を新たにした。

と、ここまでが『夏秋渓流図屏風』に焦点を当てた第一章。
『夏秋〜』の他には『三十六歌仙・檜図屏風』も展示されていて
2016年の『鈴木其一 江戸琳派の旗手』(サントリー美術館)や
2015年の『琳派 京を彩る』でも観て
「これ、好きだ〜!」と感じたことを思い出した。
(そして今回も「やっぱり好きー」と再会を喜んだ)。



第二章の展示室では《其一の多彩な画業に分け入る》として
様々な其一作品がコンパクトにまとめられている。

酒井抱一が好きなので、其一の作品でも抱一っぽい花鳥画なんかが
「やっぱりいいな(好きだな)」と思う。
例えば…
『蝶に芍薬図』(鈴木其一 筆 北村季文 賛)
『桜花返咲図扇面』
『十二ヶ月』の「楓」「柿」
『雨中牡丹図』
など…。

『神功皇后・武内宿禰図』は、主題になっている二人の
着物の柄の細密描写が超絶的。

今回の展示で一番「カッコイイ!」と感じたのは
『秋草・波に月図屏風』という小ぶりな二曲屏風。
屏風のオモテ面には朝顔、萩、撫子などの秋草が
其一らしいキリッとしたタッチで描かれている。
屏風の反対側に回って見ると、そこには金泥で波と月が描かれている。
それぞれ裏打ちなしの絹地に描かれているので
反対側に描かれた絵がうっすら透けてみえるところが、洒落ている。
例えば、オモテ面の秋草の背景に、うっすらと満月が透けてみえて
なんというか非常に洒脱で情緒的。


展示点数は多くはなかったけれど、
ひとつひとつじっくり観るには丁度良かった。
帰宅してから2016年の『鈴木其一 江戸琳派の旗手』の図録を
見返してみたのだけど、ここでは出ていなかった個人蔵の作品を
今回結構観ることができたんだなということに気が付いた。
もしかしたらこれからまだまだ知られざる其一の作品が
世に出てくるのではないか?という予感がした。

もうすっかり満足してしまったので、2階の展示は観ずに
お庭の紅葉を楽しんで、根津美術館を後にした。



いつもだったら庭園にあるNEZU Cafeでランチして帰るのだけど
この日は「ここへ行こう!」と決めていたお店に入った。
それは《ヨックモック青山本店 ブルー・ブリック・ラウンジ》。

前に4組待ちで、結構時間がかかりそうな感じだったけど
特にこのあと急ぎの用事があるわけでもないし
今日は「ここでランチするんだ!」と決めていたので初志貫徹。
昼時なので1時間待ちも覚悟していたけれど
10分くらい待ったところで、
「テラス席(=屋外)ならお一人様ご案内できますが…」とのこと。
まぁ寒いかも知れないけどもストーブもあるというし
ダウンジャケット着てきたからなんとかなるか、と
テラス席を案内して貰った。

屋外となったら、断然あったかいもの…いやむしろ熱々のものが食べたい!。

…というわけで、ラザニアプレート。
yokumoku_lazagna.jpg
コーヒーとお菓子(シガール1本)付き。

美味しかった〜(*^^*)。
本当はケーキなんかも頼みたかったのだけど
完全に予算オーバーになってしまうでのここは我慢。
またの機会のお楽しみにとっておくことにした。


で、更にこのあと帰宅する前に銀座で途中下車。
東銀座のCO-CO PHOTO SALONで開催中の
アキラ・タカウエ氏と柴田翔氏の二人展
『Duo Exhibition ~contrast~』にも寄ってきた。
主催はIsland Gallery。

CO-CO PHOTO SALONは、京橋にあった頃のIsland Galleryと同程度の
非常にこぢんまりしたギャラリー。
エレベーターに乗って4階で降りると、いきなりギャラリー貸切状態(^^;ゞ。
お陰様で、じっくりと静かにモノクロームの世界を堪能できた。

帰り際に少しだけスタッフの方とお話…。
坂崎さんの書写真展がきっかけで、
他の作家さん(特にアキラ・タカウエさん)にも興味が湧いて
先日ソニーイメージングギャラリーの作品展も拝見したことや
今度また坂崎さんのオンラインギャラリーがありますよねー
なんてことをちょろっと話して退散(笑)。


そして最後は、川崎大師に
THE ALFEEの武道館と城ホールのチケットが取れたことのお礼参り。

なんだか有意義で心地良い一日だった。
(そしておそらく今年最も佳き一日だった)。



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《オマケ》
CO-CO PHOTO SALONが入っている
ルート銀座ビルのエレベーター。
cocophotosalon.jpg
久々にこういうボタンのエレベーターに乗った気がする(笑)。
コメント(6) 

コメント 6

乃愛

相変わらず アクティブですね 梅屋さま。
美術館の食事って、どうして美味しいでしょう(^_^)/              えっと  ロックハート城のパスタを思いだしましたぁ 寒いから美味しいのかな   
恐縮ですが     幸ちゃんの写真って、今回 猫ありますか? 
by 乃愛 (2021-12-15 05:21) 

梅屋千年堂

>乃愛さん
今回は美術館併設ではありませんが
近頃の美術館併設カフェ&レストランは
本当にレベルが高くなっていると思います。
やはり1〜2時間かけてアート鑑賞するとかなり疲れますから
鑑賞後にスッと入れる食事処があるというのは大事な要素です。

>>ロックハート城
懐かしいですー(笑)。
このコロナ禍において、あの城は大丈夫なのだろうか?と少々心配になり
先程公式サイトを覗いてみましたら元気に営業しているようで安心しました。

>>幸ちゃんの書写真
サブテーマが「あの日の猫たち」です。
オンラインギャラリーで全作品ご覧になれますよ。

by 梅屋千年堂 (2021-12-16 02:16) 

乃愛

まぁそうでしたか!
ちらっと読んだらカタカナだったので意味が解らず マニアに尋ねても
猫についてはわかりませんとしか答えてもらえず
梅屋さんに教えて頂き ありがとう御座います。

城で、王子の座られた椅子で足を組んで写真を撮って、外にでたら
とかげ がいて、びっくりしました。
by 乃愛 (2021-12-16 04:44) 

梅屋千年堂

>乃愛さん
今回は約20年前のポジフィルムを現像したものなので
これまでとはちょっと違った雰囲気の写真が多くて興味深いです。
今回も早速カタログを購入しました(通常盤ですが…^^;ゞ)。

by 梅屋千年堂 (2021-12-16 23:28) 

おかん

今月上旬くらいでしたでしょうか、読売新聞で根津美術館の「鈴木其一・夏秋渓流図屏風」の記事が載っていてまして興味を持ったのですが行けませんでした・・。

ランチは初志貫徹でしたか!ラザニア美味しそうですね。舌、火傷大丈夫でしたか?!

幸ちゃんのカタログは私も通常版です。でも今回猫ちゃんたちに惹かれますし、本題の方の書も良いんですよね~。

by おかん (2021-12-18 17:50) 

梅屋千年堂

>おかんさん
ありましたね。アタシも見ました、読売新聞の記事。

ラザニアは最初の2口くらいはフーフーしながら食べましたが
屋外でしたのでそのあとはいい具合に程良く冷めて
猫舌には食べやすい温度になりました。

幸ちゃんの書写真
「いにしえの流れを…」と
「生まれ故郷は静かにヤツの帰りを…」がお気に入りです。
(買えないケド)。

by 梅屋千年堂 (2021-12-18 23:25) 

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