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フェルメールと17世紀オランダ絵画展 [EXHIBITION]

『ドレスデン国立個展絵画館所蔵
 フェルメールと17世紀オランダ美術展』に行ってきた。

場所は東京国立美術館。いつもの写真。
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今回の目玉はヨハネス・フェルメールの『窓辺で手紙を読む女』。
修復後、所蔵館であるドレスデン国立個展絵画館以外での公開は
今回が初めてとのこと。

展覧会は日時指定制。10時30分〜11時の入場を予約。
美術館に着いたのは10時25分頃だったけど
既に10時30分の人も入場可能になっていた。

ロッカーに荷物を預け、トイレも済ませて入場。
音声ガイドを借りて、いざ入場。

『フェルメールと…』という展覧会タイトルだけど
フェルメールの作品は目玉の1作品のみ。
他はフェルメールと同時代のオランダ絵画が展示されている。

最初のセクションは《レンブラントとオランダの肖像画》。
入って数点目のところに、小さな肖像画が二つ。
ハッ!あれは!と近づいてキャプションを見るとやっぱり!。
フランス・ハルツだ。この人の描く肖像画、表情豊かで好きなんだよね〜。
『灰色の上着を着た男の肖像』と『黒い上着を着た男の肖像』。

この時代の肖像画は、特定の人物を描くというよりも。
トローニーとしての意味合いが強いという。
トローニーとは、不特定の人物の頭部や胸像を描いたもの。

レンブラント・ファン・レインの『若きサスキアの肖像』も
トローニーとして描かれたのではないかとのこと。

レンブラントの弟子だったホーファールト・フリンクの
『赤い外套を着たレンブラント』という作品があるのだけど
これが…なんというか、レンブラントが描く自画像とはあまり似ていない。
もしかしたらこれもレンブラントの肖像画というよりも
トローニー的な側面が強いのかな、と勝手に想像。


2つめのセクションは《複製版画》。
19世紀、ドレスデン国立古典絵画館の所蔵作品を
世に知らしめるために制作された小さなサイズの複製版画。
小さいしモノクロだけれども、現代に生きるアタシ達が
書籍やネット上で図版を眺めてそうするように
当時の人々はこの複製版画を観て数々の名画に思いを馳せたのかも。


次は《レイデンの画家 − ザクセン選帝侯たちが愛した作品》。
ここれはレイデン(ライデン)出身の画家の作品を紹介。
正直、今回の展覧会はフェルメール以外の作品って
バーターみたいな感じなんじゃ?(^^;なんて
失礼ながら思っていたけど、ヘラルド・テル・ボルフの
『白繻子のドレスをまとう女』はサテンのドレスの質感表現が凄いし
こちらに背中を向けた女性についての想像が広がる。

一見普通の風俗画に見える作品も、
そこに描かれているアイテムやシチュエーションに
実は深い意味が隠されているというのも面白かった。
ハブリエル・メツーの『レースを編む女』には
足温器の上に座る猫が描かれているのだけど
猫は官能的な誘惑の象徴だそうで、猫が家の中にいるのは
不名誉なこととされていたそう。
そして同じくメツーの『鳥売りの男』『鳥売りの女』。
鳥にはその生死に関わらず性的な意味合いがあり
鳥を捕る人=女性に言い寄る人ということらしい。

日本の浮世絵などもそうだけど、
一見、市井の人々の生活を描いただけのように見える作品にも
そこに描かれているアイテムから様々な読み解きが可能で
それが解るってことが、ある種のステイタスだったのだろう。


エスカレーターで上の階に移動すると
いよいよ《『窓辺で手紙を読む女』の調査と修復》のセクションだ。

まず実際に作品を観る前に、この度の修復に関する映像やパネル展示で
いかにして塗りつぶされた画中画のキューピッドが蘇ったのかを解説。
作品保護のために過去に塗られてきたニスを綿棒で取り除き、
医療用のメスを用いてキューピッドの上に塗られた絵の具を
顕微鏡で確認しながら少しずつ剥がしていく。
もう、観ているだけでも気が遠くなる作業なのだ。

当初、キューピッドはフェルメール自身によって塗りつぶされたと
考えられていたが、最近の研究で、実はフェルメールの没後に
何者かによって塗りつぶされたことが判明した。

この作品は、1742年の収蔵当初
レンブラントの作品だと考えられていた。
その頃は注目されていなかったフェルメールの作品を
レンブラント風に見せかけるために、誰かがキューピッドを
塗りつぶしたのではないか、というのである。

…って、フェルメールの作品をいくつも観てきている現代人には
「これどう観てもレンブラントというよりフェルメールでしょ」
と思うのだけど…(^^;。

展示室ではまず先に、修復前の『窓辺で〜』の複製画が掲げられている。

個人的にはキューピッドを塗りつぶした人の気持ちがわからなくもない。
背景の壁に何もない方がスッキリしていて主役の女性が引き立つし、
部屋の静けさも伝わってくる気がするから。
(それに画中画のキューピッド、あんまりかわいくないし^^;)。

そんなことを思いながら、右を振り向くと修復後の本物、
『窓辺で手紙を読む女性』と対面。
前にいる人が観終わって移動するのを待ち、作品の目の前に立つ。

修復後とあって、全体的に明るく色鮮やか。
自分でも何故だかよく解らないのだけど、
作品の真正面に立ったらなんだか心がザワついて軽い動悸。
なんでこんなにドキドキしてるんだアタシ。
あんまり長い間そこにいることが出来ず、早々にそこを立ち去ってしまった。
作品を目の当たりにしたときのドキドキ、興奮。
〈本物〉を観るって、こういうことなのだろう。

画中画のキューピッドが踏みつけているのは、
嘘や欺瞞の象徴とされる仮面。それを踏みつけることで
「誠実な愛は嘘や偽善に打ち勝つ」ことを意味する。

このキューピッドがいることで、この作品の持つ意味がより明確になる。
キューピッドがいないことで、女性が読んでいる手紙の内容や
シチュエーションをいろいろ想像する楽しさもあるけれど
こうして作者の意図を直接的に感じるのも大事なこと。
天国のフェルメールさんも、きっと喜んでいることだろう(タブン)。

ちなみに、先程も書いたようにこの作品は
1742年の収蔵当時はレンブラントの作品とされていたが
その後幾度も作者が変わり、1862年にようやく
フェルメールの作品と認められたとのこと。
…まぁここに来るまでいろいろありましたなぁ(笑)。


この後も、17世紀オランダ絵画の紹介が続く。
《オランダの静物画 − コレクターが愛したアイテム》
《オランダの風景画》…
このあたりでは取り立てて「これは!」という作品はなかったけれど
ヤン・ファン・ホイエンの『冬の川景色』の
キャプションに書かれていた面白エピソードは笑えた。
戦後、この作品は行方不明になっていたが1974年になって発見。
しかしこれが重要な作品であることを知らなかった当時の所有者は
なんと、この絵を風呂場の浴槽のフタとして使用していたとか(笑)。
確かにサイズ的に丁度良さそうではあるけれど…
なんでわざわざ絵が描いてある板をお風呂のフタに…(^^;。
「アラお風呂のフタにちょうどいいわ、絵も素敵だし」そんな感じ?。
しかもそんな風に扱われいた割に、状態が良いのも面白かった(^m^)。


最後は《聖書の登場人物と市井の人々》。
聖書のエピソードの登場人物がオランダ風の服装なのが興味深い。

ヤン・ステーンの『ハガルの追放』でハガルの息子イシュマエルが
こちらに目を向けるその表情がなんか泣ける〜(ノ_<。)。



…以上で展示は終了。

実物を観るまでは「いや、絶対にキューピッドがいない方が
絵としてのバランスはいいでしょ」と思っていたけど
キューピッドがいることで、作品に迫力と深みが増すことがよく解った。


時計を見ると12時を少し回ったところ。
美術館内のカフェ「Cafe Art」を覗いてみたら、
席が空いていたのでここでお昼をとることにした。

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温泉玉子入り濃厚カルボナーラスパゲティ。

なんだかとても久しぶりにカルボナーラを食べた気がする。
器が深いせいか、最後まで温かく美味しく頂けた。


そして最後は自分土産。
フェルメール展で必ずと言っていいほど登場する
ミッフィーとのコラボグッズ。
今回も「手紙を書くミッフィー」のぬいぐるみや
「手紙を読むミッフィー」のぬいぐるみ、
ミッフィーモチーフのシーリングワックスセットや
レターセット、レターフォルダー、切手風シールなど
ヤバいグッズが目白押しだったのだけど、
グッと堪えてポストカードとインクのみ(我ながらよく堪えた笑)。

インクは蔵前の文具店、カキモリとのコラボ。
その名も「フェルメール・ブルー」。
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落ち着いたブルーブラックで普段使い出来る色。
ボトルも外箱も特製でカワイイ(*^^*)。


そうそう、これも買ったんだった。
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レンチキュラーしおり。
角度を変えるとキューピッドが出たり隠れたり。
ナイスアイデアなグッズ。


帰り道、上野公園から見えるスカイツリーを眺めながら
「あ〜そっか、このまま押上に移動して
 郵政博物館に行くって手もあったな…」と思ったけれど
夕方宅急便が届くことになっているので断念。
なんとか21日までに行かれると良いが…。

Bunkamura ザ・ミュージアムの『ミロ展 − 日本を夢みて』も
4月17日までに行かなければ!。
コメント(2) 

コメント 2

YAYOI

楽しまれたようで良かったです。
詳しく書いて下さったので、見に行ってきた気分になれました。
絵の修復工程は実際に見てみたいです。
by YAYOI (2022-03-04 12:32) 

梅屋千年堂

>YAYOIさん
フェルメールはいちいち謎が多いので
いろいろ想像したり推理したりするのが楽しいです。
アタシはもし人生やり直せるなら
絵画修復の仕事をがしたいです(マジで)。

by 梅屋千年堂 (2022-03-04 21:36) 

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