ロンドン・ナショナル・ギャラリー展【2】 [EXHIBITION]
(2つ前の記事のつづき)
《Chapter V. スペイン絵画の発見》
16〜17世紀、イギリスとスペインはライバル関係にあったため
スペインの画家やその作品がイギリスに渡ることは少なかったが
アイルランドやスコットランドのコレクターが
スペイン絵画に興味を持ったことにより
18世紀に入ってスペイン美術はイギリスに受容されていったとのこと。
このセクションは自分のツボにハマる作品が目白押し。
●フランシスコ・デ・ゴヤ『ウェリントン公爵』
ワーテルローの戦いでナポレオンを打ち負かした英雄、
ウェリントン公爵アーサー・ウェルズリーの肖像画。
…なのだけど、同じ頃にトマス・ローレンスが描いたものと比べると
意気揚々とした英雄の威厳ある姿というよりも
戦争に明け暮れて疲れと憂いを隠せず、ちょっと気を抜いた表情。
盛らずにありのままを、いや、その内面までもをゴヤは描いたのか…。
ウェリントン公、果たしてこの肖像画をお気に召したのかどうか。
●ディエゴ・ベラスケス『マルタとマリアの家のキリスト』
えっ?これがベラスケス?というちょっと意外な作品。
年老いた女性に何か諭されながら台所仕事をしている
若い女性の物凄く不満そうな顔が、一度観たら忘れられない(笑)。
何がそんなに不満なのだ?おばあさんに何を言われたのだ?。
図録の解説によればこの絵に関しては幾通りかの解釈があるそうだ。
●フランシスコ・デ・スルバラン『アンティオキアの聖マルガリータ』
今回の展覧会で最も印象に残った作品と言ってもいいかも。
フォークロア風の衣装から、一見宗教画とは思えないけれども
アンティオキアの聖マルガリータは伝説上の殉教聖人。
囚われの身となった牢屋の中で竜に飲み込まれたが
手に持っていた十字架の力で竜の腹を割いて無傷で脱出した、という言い伝え。
足元の竜をものともしない冷静な無表情が心に残る。
●バルソロメ・エステバン・ムリーリョ『幼い洗礼者ヨハネと子羊』
かわいい。あまりにもかわいい。少女漫画の登場人物のようにかわいい。
甘過ぎる絵はあまり好みではないのだけど、ムリーリョは別。
●バルソロメ・エステバン・ムリーリョ『窓枠から身を乗り出した農民の少年』
これもとってもいい。
聖人でもなく貴族の子息でもない農民の少年の、
あどけなくいたずらっぽい(でもちょっと小憎らしい)自然な表情がいいな、と思う。
だがしかし、実は近年この作品と対になる少し年上の少女の絵が存在し、
その少女がこの少年を誘惑しているという場面なのだとか。
その話を聞いてしまうと、少年の笑みが
なんだかちょっとイカガワシイものに見えてきてしまうのだった(^^;。
《Chapter VI. 風景画とピクチャレスク》
ピクチャレスクとは、18世紀イギリスに始まる田園風景や異国趣味などの
絵画的な雰囲気を尊重する美的概念…とこのと。
そうした「映える」風景を求めて旅をすることが流行。
●ジョン・コンスタブル『コルオートン・ホールのレノルズ記念碑』
枝の重なりがスゴイ!(◎_◎)。
これも実物を観ないとそのスゴさは伝わりにくいかも。
●ジョセフ・マロード・ウィリアム・ターナー『ポリュフェモスを嘲るオデュッセウス』
タイトルも何も知らずにぼんやり眺めていたら
おそらく単なる風景画(朝日が昇り始めた海を行く帆船の絵)だと思って
スーッと通り過ぎてしまうかも。
タイトルにあるように、ホメロスの叙事詩『オデュッセイア』の一場面。
船上には両手を挙げるオデュッセウス、船の舳先の下の海にはセイレーン、
背景の雲に紛れて苦しむポリュフェモス、
朝日と重なる太陽神アポロンの馬車など、実は隠し要素が盛り沢山。
《Chapter VII. イギリスにおけるフランス近代美術受容》
●ジャン・オーギュスト・ドミニク・アングル『アンジェリカを救うルッジェーロ』
冒頭で出てきた『聖ゲオルギウスと竜』と同様に、英雄と怪物とお姫様という
組み合わせなのだけど、時代が進むと表現方法も随分変わる。
●フィンセント・ファン・ゴッホ『ひまわり』
展覧会の最後を飾るのはゴッホの『ひまわり』。
全部で7枚ある『ひまわり』のうちの1枚。その中でも特に「いいやつ」。
この1枚の『ひまわり』のためだけの展示室が最後に用意されている。
ゴッホで言うと個人的には『ローヌ側の星月夜』や『星月夜』、
『糸杉』や『種まく人』なんかが好みなのだけど
『ひまわり』はゴッホの「やったるでぇ〜!」という熱量がスゴイ。
今回の展覧会では「やっぱりアート実物・本物を観てなんぼ」という
思いを一段と強くしたけれど、ゴッホは特に
「絶対に実物を観なくちゃダメ」だと思う。
今月10日からは新宿のSOMPO美術館でもゴッホの『ひまわり』の展示が始まる。
なんだかまたちょっと東京に行きづらい雰囲気になってしまったけど
チャンスがあれば観にいきたい…と思う。
と、いうわけで無事に開催されたロンドン・ナショナル・ギャラリー展は
かなり満足度の高い展覧会だった。
最後に展覧会グッズ。
グッズ売場も入場できる人数を制限していて
一人出ていったら一人案内する、そんなシステム。
展示を観終わって展示室から出てきた時は結構並んでいたので
「まぁ、今回はいっか」と思ったのだけど
トイレから出てきてみたら、2人くらいしか並んでいなかったので
やっぱりちょっと覗いていくことにした。
そしてお約束通り、買う予定のなかったものを買ってしまった(^^;ゞ。
「白い恋人」でお馴染みのISHIYAのラングドシャ「Saqu(サク)」。
『ひまわり』をモチーフにした展覧会オリジナルパッケージ。
この箱欲しさに買ったといっても過言ではナイ。
中身は通常商品のアソートセットと同じ内容。
前にコレド室町テラスのお店で買ったことがあるけれど、
名前の通りサクサクして美味しい〜(*^^*)。
それともう一つ。
こちらも『ひまわり』モチーフのフラットポーチ。
サイズは12cm × 15cm。
手作りマスクを入れて持ち歩くのにちょうどいい!と購入。
次なるアート鑑賞予定は『ヨコハマ・トリエンナーレ2020』、
8月にはトーハクの『特別展 きもの』へ行く予定だけれども
いろんなことに気を付けながら出掛けようと思う…。
----------------------------
《オマケ》
最近買った本。
行ってみたいお店が盛り沢山で眺めているだけでワクワクする。
早く何も気にせずにお出掛けできる世の中になって欲しい。
《Chapter V. スペイン絵画の発見》
16〜17世紀、イギリスとスペインはライバル関係にあったため
スペインの画家やその作品がイギリスに渡ることは少なかったが
アイルランドやスコットランドのコレクターが
スペイン絵画に興味を持ったことにより
18世紀に入ってスペイン美術はイギリスに受容されていったとのこと。
このセクションは自分のツボにハマる作品が目白押し。
●フランシスコ・デ・ゴヤ『ウェリントン公爵』
ワーテルローの戦いでナポレオンを打ち負かした英雄、
ウェリントン公爵アーサー・ウェルズリーの肖像画。
…なのだけど、同じ頃にトマス・ローレンスが描いたものと比べると
意気揚々とした英雄の威厳ある姿というよりも
戦争に明け暮れて疲れと憂いを隠せず、ちょっと気を抜いた表情。
盛らずにありのままを、いや、その内面までもをゴヤは描いたのか…。
ウェリントン公、果たしてこの肖像画をお気に召したのかどうか。
●ディエゴ・ベラスケス『マルタとマリアの家のキリスト』
えっ?これがベラスケス?というちょっと意外な作品。
年老いた女性に何か諭されながら台所仕事をしている
若い女性の物凄く不満そうな顔が、一度観たら忘れられない(笑)。
何がそんなに不満なのだ?おばあさんに何を言われたのだ?。
図録の解説によればこの絵に関しては幾通りかの解釈があるそうだ。
●フランシスコ・デ・スルバラン『アンティオキアの聖マルガリータ』
今回の展覧会で最も印象に残った作品と言ってもいいかも。
フォークロア風の衣装から、一見宗教画とは思えないけれども
アンティオキアの聖マルガリータは伝説上の殉教聖人。
囚われの身となった牢屋の中で竜に飲み込まれたが
手に持っていた十字架の力で竜の腹を割いて無傷で脱出した、という言い伝え。
足元の竜をものともしない冷静な無表情が心に残る。
●バルソロメ・エステバン・ムリーリョ『幼い洗礼者ヨハネと子羊』
かわいい。あまりにもかわいい。少女漫画の登場人物のようにかわいい。
甘過ぎる絵はあまり好みではないのだけど、ムリーリョは別。
●バルソロメ・エステバン・ムリーリョ『窓枠から身を乗り出した農民の少年』
これもとってもいい。
聖人でもなく貴族の子息でもない農民の少年の、
あどけなくいたずらっぽい(でもちょっと小憎らしい)自然な表情がいいな、と思う。
だがしかし、実は近年この作品と対になる少し年上の少女の絵が存在し、
その少女がこの少年を誘惑しているという場面なのだとか。
その話を聞いてしまうと、少年の笑みが
なんだかちょっとイカガワシイものに見えてきてしまうのだった(^^;。
《Chapter VI. 風景画とピクチャレスク》
ピクチャレスクとは、18世紀イギリスに始まる田園風景や異国趣味などの
絵画的な雰囲気を尊重する美的概念…とこのと。
そうした「映える」風景を求めて旅をすることが流行。
●ジョン・コンスタブル『コルオートン・ホールのレノルズ記念碑』
枝の重なりがスゴイ!(◎_◎)。
これも実物を観ないとそのスゴさは伝わりにくいかも。
●ジョセフ・マロード・ウィリアム・ターナー『ポリュフェモスを嘲るオデュッセウス』
タイトルも何も知らずにぼんやり眺めていたら
おそらく単なる風景画(朝日が昇り始めた海を行く帆船の絵)だと思って
スーッと通り過ぎてしまうかも。
タイトルにあるように、ホメロスの叙事詩『オデュッセイア』の一場面。
船上には両手を挙げるオデュッセウス、船の舳先の下の海にはセイレーン、
背景の雲に紛れて苦しむポリュフェモス、
朝日と重なる太陽神アポロンの馬車など、実は隠し要素が盛り沢山。
《Chapter VII. イギリスにおけるフランス近代美術受容》
●ジャン・オーギュスト・ドミニク・アングル『アンジェリカを救うルッジェーロ』
冒頭で出てきた『聖ゲオルギウスと竜』と同様に、英雄と怪物とお姫様という
組み合わせなのだけど、時代が進むと表現方法も随分変わる。
●フィンセント・ファン・ゴッホ『ひまわり』
展覧会の最後を飾るのはゴッホの『ひまわり』。
全部で7枚ある『ひまわり』のうちの1枚。その中でも特に「いいやつ」。
この1枚の『ひまわり』のためだけの展示室が最後に用意されている。
ゴッホで言うと個人的には『ローヌ側の星月夜』や『星月夜』、
『糸杉』や『種まく人』なんかが好みなのだけど
『ひまわり』はゴッホの「やったるでぇ〜!」という熱量がスゴイ。
今回の展覧会では「やっぱりアート実物・本物を観てなんぼ」という
思いを一段と強くしたけれど、ゴッホは特に
「絶対に実物を観なくちゃダメ」だと思う。
今月10日からは新宿のSOMPO美術館でもゴッホの『ひまわり』の展示が始まる。
なんだかまたちょっと東京に行きづらい雰囲気になってしまったけど
チャンスがあれば観にいきたい…と思う。
と、いうわけで無事に開催されたロンドン・ナショナル・ギャラリー展は
かなり満足度の高い展覧会だった。
最後に展覧会グッズ。
グッズ売場も入場できる人数を制限していて
一人出ていったら一人案内する、そんなシステム。
展示を観終わって展示室から出てきた時は結構並んでいたので
「まぁ、今回はいっか」と思ったのだけど
トイレから出てきてみたら、2人くらいしか並んでいなかったので
やっぱりちょっと覗いていくことにした。
そしてお約束通り、買う予定のなかったものを買ってしまった(^^;ゞ。
「白い恋人」でお馴染みのISHIYAのラングドシャ「Saqu(サク)」。
『ひまわり』をモチーフにした展覧会オリジナルパッケージ。
この箱欲しさに買ったといっても過言ではナイ。
中身は通常商品のアソートセットと同じ内容。
前にコレド室町テラスのお店で買ったことがあるけれど、
名前の通りサクサクして美味しい〜(*^^*)。
それともう一つ。
こちらも『ひまわり』モチーフのフラットポーチ。
サイズは12cm × 15cm。
手作りマスクを入れて持ち歩くのにちょうどいい!と購入。
次なるアート鑑賞予定は『ヨコハマ・トリエンナーレ2020』、
8月にはトーハクの『特別展 きもの』へ行く予定だけれども
いろんなことに気を付けながら出掛けようと思う…。
----------------------------
《オマケ》
最近買った本。
行ってみたいお店が盛り沢山で眺めているだけでワクワクする。
早く何も気にせずにお出掛けできる世の中になって欲しい。
2020-07-09 20:52
コメント(0)
コメント 0