デュシャンとみほとけ [EXHIBITION]
って、物凄く省略したタイトルになってるけど、
つまり8日にムンク展の前にサーッと観てきた2つの展覧会
《マルセル・デュシャンと日本美術》
《京都 大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ》。
もはやレポートやレビュー、感想文というよりも、ただの備忘録。
場所はいずれも東京国立博物館・平成館。
階段上がって左手の特別展示室第1室・第2室ではデュシャン、
右手の特別展示室第3室・第4室では快慶・定慶と
全く趣の異なる展覧会が向かい合って開催されている。
当初はデュシャンの方だけ観ようと思っていたのだけど
先だってのBS日テレ『ぶらぶら美術博物館』で
この2つの展覧会が紹介されていて、なんだか快慶・定慶もかなりよさそう…
お得な2展のセット券もあるようなので、
やっぱり両方とも観ておくことにした。
先に入ったのは
『東京国立博物館・フィラデルフィア美術館交流企画特別展
マルセル・デュシャンと日本美術』。
展覧会は二部構成。
第1部は現代アートの先駆けとなった
フランス生まれのマルセル・デュシャン(1887-1968)の足跡を辿る展覧会。
最初は画家として芸術活動をスタートさせたデュシャンの絵画作品が並ぶ。
ここで展示されている代表作が『階段を降りる裸体 No.2』。
あ〜、これ、美術検定の問題によく出てきてたな〜などと
ちょっと懐かしく思いながら、
実物と初めて対面できたことにちょっとした感慨を覚える。
普通にキュビスムに属する作品だと思っていたのだけど
1912年に発表した際、所属していたキュビスムの研究グループから批判を浴びて
その後は油彩画の制作を止めてしまう。
その後、主にアメリカはニューヨークで活動するようになったデュシャン。
ここから先は、思わず「ハ?」と首を傾げたくなるような作品が続々登場(^^;。
『彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも(大ガラス)東京版』
そして、「レディメイド」と呼ばれる一連の作品群。
《「芸術」でないような作品を作ることができようか》という
このセクションのタイトルが示すように、
元々ある用途のために作られたものに、ちょっと手を加えることで
それを芸術作品にしてしまうという試み。
中でも有名なのが、便器にR. Muttと署名しただけの『泉』。
今なら「こういうのも、ひとつのアートとしてありだよね(^^;」と
割と普通に現代アートとして受け入れられるけど
1917年にデュシャンが発表した当初は、やっぱりかなりの物議を醸したらしい。
この『瓶乾燥器』なんかも、
本来は飛びだした棒の部分に瓶を引っ掛けて乾かすための道具で、
デュシャンはこれをデパートで買ってきて署名を入れて「作品」に。
確かに「このフォルムはアートかも…」と現代を生きる我々には思えるけれど
1910年代にこれをアートと位置づけたデュシャンの感性はスゴイ。
SAPOLIN ENAMELという広告の文字に手を加えて
デュシャンの友人であった詩人のアポリネールの名前にしてしまった
『エナメルを塗られたアポリネール』。
なんだかちょっとカワイイ。
1920年代になると、デュシャンはプロのチェス・プレイヤーとして活動しつつ
ローズ・セラヴィという女装の別人格で、新たな制作に取り組み始める。
この頃交流していたのが写真家のマン・レイ。
このマン・レイを始めとする何人かの写真家が撮影した
デュシャンのポートレートが多数展示されていたのだけど
どのデュシャンもカッコイイ。
発表してきた作品はどれもこれもヘンテコリンだし
デュシャンって人騒がせな変人?ってイメージなのだけど
見た目はかなりお洒落でダンディーなのだ。
こういう「カッコイイ人」がやる「変なこと」ってのは
結構影響力が大きいものだよね〜などと妙に納得。
1930年代に発表したのが
『マルセル・デュシャンあるいはローズ・セラヴィの、
あるいは、による(トランクの中の箱)』。
これまでの自身の代表作のミニチュアレプリカを
一つの箱に閉じ込めた「携帯用の美術館」。
…こういうのって、ファンにはたまらない(=絶対欲しくなる)と思う。
そしてこの展覧会の第2部は「デュシャンの向こうに日本がみえる」と題して
デュシャンが行っていたような創作活動と似たようなことが
日本では桃山〜江戸時代に既に行われていた…というところに着目した展示。
正直、ちょっと無理矢理という感じがしないではなくもないけれど(^^;
琳派好きとしては本阿弥光悦作『舟橋蒔絵硯箱』=国宝が
さりげなくシレッと展示されていたり
同じく本阿弥光悦筆『摺下絵和歌巻』や、俵屋宗達『龍図』が
思いがけずに観られたのは嬉しかった。
続いて、お向かいの展覧会
《京都 大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ》へ。
ところが…ヤバイ!
デュシャンをじっくり観すぎてしまいもうあまり時間がない!。
仕方がないので、展示の前半はほとんどスッ飛ばして
最も観たかった釈迦如来坐像と十大弟子立像、および六観音菩薩像の展示室へGO!。
まずは行快作の釈迦如来坐像と、快慶作の十大弟子立像。
釈迦如来坐像は大報恩寺でも、年に数回しか公開されないという秘仏。
だからかどうかはわからないが、とにかく状態がとても良い。
まるでつい最近作ったみたいに輝いている。
そしてそれを取り巻く十大弟子のみなさん。
こちらは快慶作。
と言っても工房で制作しているので、100%快慶というわけではなく
快慶の銘が入っているのは目犍連と優婆離のみ。
なので、じっくり観ていくと実は頭のカタチや顔の表情、
衣服の裾の長さなどに個性が出ているのがわかる。
個人的に一番好きなのは富楼那。流し目がなんとも言えない…(^^;。
ちなみに快慶と行快それぞれが制作した仏像を見分ける方法があるそうで、
耳の上脚の向きが上向きなのが行快で、前方向に倒れているのが快慶なんだとか。
次は、肥後定慶作の六観音菩薩像。
六観音全てにおいて、光背や台座が制作当時のまま残っていることが
非常に貴重であるとのこと。
展覧会前期は、光背を付けたままの展示だったそうだけど
後期に入ってから光背を外した状態で、菩薩様のお背中も拝見できるという。
えええ〜〜〜繊細な光背も観たかったのにーーー!
…と思っていたら、本体から少し離れた壁に
外した光背もちゃんと展示されていた。
どの菩薩様も優美な佇まいだが、
アタシが特に引かれたのは如意輪観音菩薩像と准胝観音菩薩像。
とくに准胝観音菩薩像はたくさんある腕一本一本の配し方や
先っちょまで神経が行き届いている指の表現がとても優雅。
こちらは唯一撮影OKの聖観音菩薩像。
この壁や床に映る影にこだわった展示方法がまた素敵で…。
博物館ならでは、である。
かなり駆け足の鑑賞になってしまったけど、やっぱり観ておいてヨカッタ。
そして最後は恒例の特設ショップ。
デュシャンの方はほんのちょこっと。
快慶・定慶の方が売り場面積の殆どを占めていたし、
グッズの内容も「斜め上を行く」ものが多かった(^^;。
そんな中で厳選して(?)買ってきたのがこれ。
「腰掛けから降りるデュシャンしゃんNo.2」と
「複数化する利Qはん」のポストカード、
そして絵心経ハンカチ。
ホントは絵心経のトートバッグがめちゃめちゃかわいくて
欲しいな〜と思ったのだけど、
このテのトートバッグは家にいっぱいあるし
そんなにカバンばっかりあってもしょーがないのでハンカチにしておいた。
それともうひとつ「セクシー大根焚きポーチ」という
ほぼ「だいこんのぬいぐるみ」なポーチがあって
これにもかなーーーり惹かれたのだけど、グッと堪えてガマンした(^o^;。
つまり8日にムンク展の前にサーッと観てきた2つの展覧会
《マルセル・デュシャンと日本美術》
《京都 大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ》。
もはやレポートやレビュー、感想文というよりも、ただの備忘録。
場所はいずれも東京国立博物館・平成館。
階段上がって左手の特別展示室第1室・第2室ではデュシャン、
右手の特別展示室第3室・第4室では快慶・定慶と
全く趣の異なる展覧会が向かい合って開催されている。
当初はデュシャンの方だけ観ようと思っていたのだけど
先だってのBS日テレ『ぶらぶら美術博物館』で
この2つの展覧会が紹介されていて、なんだか快慶・定慶もかなりよさそう…
お得な2展のセット券もあるようなので、
やっぱり両方とも観ておくことにした。
先に入ったのは
『東京国立博物館・フィラデルフィア美術館交流企画特別展
マルセル・デュシャンと日本美術』。
展覧会は二部構成。
第1部は現代アートの先駆けとなった
フランス生まれのマルセル・デュシャン(1887-1968)の足跡を辿る展覧会。
最初は画家として芸術活動をスタートさせたデュシャンの絵画作品が並ぶ。
ここで展示されている代表作が『階段を降りる裸体 No.2』。
あ〜、これ、美術検定の問題によく出てきてたな〜などと
ちょっと懐かしく思いながら、
実物と初めて対面できたことにちょっとした感慨を覚える。
普通にキュビスムに属する作品だと思っていたのだけど
1912年に発表した際、所属していたキュビスムの研究グループから批判を浴びて
その後は油彩画の制作を止めてしまう。
その後、主にアメリカはニューヨークで活動するようになったデュシャン。
ここから先は、思わず「ハ?」と首を傾げたくなるような作品が続々登場(^^;。
『彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも(大ガラス)東京版』
そして、「レディメイド」と呼ばれる一連の作品群。
《「芸術」でないような作品を作ることができようか》という
このセクションのタイトルが示すように、
元々ある用途のために作られたものに、ちょっと手を加えることで
それを芸術作品にしてしまうという試み。
中でも有名なのが、便器にR. Muttと署名しただけの『泉』。
今なら「こういうのも、ひとつのアートとしてありだよね(^^;」と
割と普通に現代アートとして受け入れられるけど
1917年にデュシャンが発表した当初は、やっぱりかなりの物議を醸したらしい。
この『瓶乾燥器』なんかも、
本来は飛びだした棒の部分に瓶を引っ掛けて乾かすための道具で、
デュシャンはこれをデパートで買ってきて署名を入れて「作品」に。
確かに「このフォルムはアートかも…」と現代を生きる我々には思えるけれど
1910年代にこれをアートと位置づけたデュシャンの感性はスゴイ。
SAPOLIN ENAMELという広告の文字に手を加えて
デュシャンの友人であった詩人のアポリネールの名前にしてしまった
『エナメルを塗られたアポリネール』。
なんだかちょっとカワイイ。
1920年代になると、デュシャンはプロのチェス・プレイヤーとして活動しつつ
ローズ・セラヴィという女装の別人格で、新たな制作に取り組み始める。
この頃交流していたのが写真家のマン・レイ。
このマン・レイを始めとする何人かの写真家が撮影した
デュシャンのポートレートが多数展示されていたのだけど
どのデュシャンもカッコイイ。
発表してきた作品はどれもこれもヘンテコリンだし
デュシャンって人騒がせな変人?ってイメージなのだけど
見た目はかなりお洒落でダンディーなのだ。
こういう「カッコイイ人」がやる「変なこと」ってのは
結構影響力が大きいものだよね〜などと妙に納得。
1930年代に発表したのが
『マルセル・デュシャンあるいはローズ・セラヴィの、
あるいは、による(トランクの中の箱)』。
これまでの自身の代表作のミニチュアレプリカを
一つの箱に閉じ込めた「携帯用の美術館」。
…こういうのって、ファンにはたまらない(=絶対欲しくなる)と思う。
そしてこの展覧会の第2部は「デュシャンの向こうに日本がみえる」と題して
デュシャンが行っていたような創作活動と似たようなことが
日本では桃山〜江戸時代に既に行われていた…というところに着目した展示。
正直、ちょっと無理矢理という感じがしないではなくもないけれど(^^;
琳派好きとしては本阿弥光悦作『舟橋蒔絵硯箱』=国宝が
さりげなくシレッと展示されていたり
同じく本阿弥光悦筆『摺下絵和歌巻』や、俵屋宗達『龍図』が
思いがけずに観られたのは嬉しかった。
続いて、お向かいの展覧会
《京都 大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ》へ。
ところが…ヤバイ!
デュシャンをじっくり観すぎてしまいもうあまり時間がない!。
仕方がないので、展示の前半はほとんどスッ飛ばして
最も観たかった釈迦如来坐像と十大弟子立像、および六観音菩薩像の展示室へGO!。
まずは行快作の釈迦如来坐像と、快慶作の十大弟子立像。
釈迦如来坐像は大報恩寺でも、年に数回しか公開されないという秘仏。
だからかどうかはわからないが、とにかく状態がとても良い。
まるでつい最近作ったみたいに輝いている。
そしてそれを取り巻く十大弟子のみなさん。
こちらは快慶作。
と言っても工房で制作しているので、100%快慶というわけではなく
快慶の銘が入っているのは目犍連と優婆離のみ。
なので、じっくり観ていくと実は頭のカタチや顔の表情、
衣服の裾の長さなどに個性が出ているのがわかる。
個人的に一番好きなのは富楼那。流し目がなんとも言えない…(^^;。
ちなみに快慶と行快それぞれが制作した仏像を見分ける方法があるそうで、
耳の上脚の向きが上向きなのが行快で、前方向に倒れているのが快慶なんだとか。
次は、肥後定慶作の六観音菩薩像。
六観音全てにおいて、光背や台座が制作当時のまま残っていることが
非常に貴重であるとのこと。
展覧会前期は、光背を付けたままの展示だったそうだけど
後期に入ってから光背を外した状態で、菩薩様のお背中も拝見できるという。
えええ〜〜〜繊細な光背も観たかったのにーーー!
…と思っていたら、本体から少し離れた壁に
外した光背もちゃんと展示されていた。
どの菩薩様も優美な佇まいだが、
アタシが特に引かれたのは如意輪観音菩薩像と准胝観音菩薩像。
とくに准胝観音菩薩像はたくさんある腕一本一本の配し方や
先っちょまで神経が行き届いている指の表現がとても優雅。
こちらは唯一撮影OKの聖観音菩薩像。
この壁や床に映る影にこだわった展示方法がまた素敵で…。
博物館ならでは、である。
かなり駆け足の鑑賞になってしまったけど、やっぱり観ておいてヨカッタ。
そして最後は恒例の特設ショップ。
デュシャンの方はほんのちょこっと。
快慶・定慶の方が売り場面積の殆どを占めていたし、
グッズの内容も「斜め上を行く」ものが多かった(^^;。
そんな中で厳選して(?)買ってきたのがこれ。
「腰掛けから降りるデュシャンしゃんNo.2」と
「複数化する利Qはん」のポストカード、
そして絵心経ハンカチ。
ホントは絵心経のトートバッグがめちゃめちゃかわいくて
欲しいな〜と思ったのだけど、
このテのトートバッグは家にいっぱいあるし
そんなにカバンばっかりあってもしょーがないのでハンカチにしておいた。
それともうひとつ「セクシー大根焚きポーチ」という
ほぼ「だいこんのぬいぐるみ」なポーチがあって
これにもかなーーーり惹かれたのだけど、グッと堪えてガマンした(^o^;。
2018-11-13 22:48
コメント(6)
聖観音菩薩像素晴らしいでしょうね。
絵心経のハンカチ、可愛いですね。先出の知人からみほとけの出品目録をもらいましたのでそれを見ながらフムフム・・とやっておりました。会期が残り少なくなってきたので来週に行かなければ~。
by おかん (2018-11-15 17:06)
>おかんさん
聖観音菩薩も素敵でしたが、
一番スゴイ!と思ったのは准胝観音菩薩像です。
あんなにたくさん手が生えているのに
すごくバランスが良く、自然で破綻がないんです。
この展覧会はわりとコンパクトな展示になっているので
気軽にご覧になれると思いますよ〜。
by 梅屋千年堂 (2018-11-22 20:09)
1日(土)に行ってきました。思っていたほどの混雑は無かったのでゆっくり見られました。准胝観音菩薩像さまいらっちゃいましたね、手が何本あるのか数えたくなったけどやめました。撮影OKの聖観音菩薩、スマホですが正面からのはピントが少しずれてしまって・・横からの撮影は大丈夫だったのですが・・。さすが梅屋さんお上手ですね。
次女と一緒だったのですが入口で後ろにいた次女「券が無い」と言うのです、結局トイレに置き忘れてたらしく見つかった~と戻ってきました、お掃除の方に落ちてなかったですか?と尋ねたとき「どっちですか?」と聞き返された、と。
次女「紫色の方」。←オイオイ
みほとけ!
23才にもなって恥ずかし~。
by おかん (2018-12-03 13:30)
>おかんさん
美術館や博物館で撮影OKの作品を撮影するときいつも難儀するのが、
「いかに他のお客さんを入れずに撮るか」だったりします。
大人気の展覧会だとどうにもこうにも無理だったりしますが
なんとかいけそうな時は、しばらく待って
誰もいなくなった一瞬のスキを狙って撮ります。
今のスマホのカメラはホントに性能がいいので
同じ被写体を数枚撮れば、1枚くらいはまともなのがあります(^^;ゞ。
>>「紫色の方」
アハハ。でもすっごくわかりやすいです!。
デュシャンだったら「オレンジの方」ですかね。
by 梅屋千年堂 (2018-12-04 23:54)
スマホカメラの話し、幸ちゃんがラジオで言ってましたね。L社凄いっ、機種変したんですよ~って声が若く感じました(笑)
by おかん (2018-12-06 08:39)
>おかんさん
L社のトリプルカメラ搭載のスマホ、画像を見ましたが確かに凄く綺麗ですねー。
思わず機種変してしまう気持ちがわかります。
>>声が若く感じました(笑)
もう、コーフンしすぎて心は10代のカメラ小僧に
戻ってしまったのかも知れませんね(^m^)。
by 梅屋千年堂 (2018-12-06 20:58)