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ヌード展 [EXHIBITION]

昨日、横浜美術館で観てきた展覧会。

『ヌード NUDE 英国テート・コレクションより』。

英国テートのコレクションから、
19世紀以降の西洋美術における裸体表現の変遷を辿る展覧会。

展示は8部構成で、最初は《物語とヌード》。
西洋美術では古代ギリシャ時代から裸体を扱った作品が
数多く制作されてきたけれど、その題材は神話や聖書、古典文学に限られていた。
ここでは、そういった制約の中で描かれたヌード作品が紹介されている。

フレデリック・レイトン『プシュケの水浴』や
ハモ・ソーニクロフト『テウクロス』、
ハーバード・ドレイパー『イカロス哀悼』などは、題材もロマンチックだし
無駄のない筋肉質の男性の体や、大理石のような質感の女性の肌など
ちょっと人間離れした神々しい裸体が描かれていて、惚れ惚れしてしまう。

ここで特に印象に残ったのはブロンズ像の『テウクロス』。
ギリシャ神話に登場する弓の名手で、
今まさに弓を放った(放つ?)瞬間…だと思うのだけど
ピタッとくっつけた両脚と、不自然に股間に貼り付いている葉っぱに
どこか違和感を覚えてしまう(^^;。
照明の当て方も凝っていて、テウクロスの斜め後方の壁には
物凄くカッコイイ影が映っている。

それとアンナ・リー・メリットの『締め出された愛』。
全裸の少年が背中を向けて立っていて、
固く閉ざされた目の前の扉を押し開けようとしている、一見謎めいた絵。
最初、この絵の意味がわからなかったが、よく観察してみると
足元に矢が落ちていることから、背中に羽根はないけれど
少年はキューピッド=愛であるらしいことが分かる。


こんな感じで19世紀は神や物語の登場人物としての
「理想化された裸体」が中心だったけれど
19世紀後半から20世紀になると
「そこらにいる普通の女性」の裸が描かれるようになる。
これが2番目のセクション《親密な眼差し》。

写実的だった18世紀以前に比べると、表現方法にも自由さが際立ってくる。
個人的にここで印象的だったのはアンリ・マティス『布をまとう裸婦』。
いかにもマティスな作品で、モデルの右手&右脚が
ちょっとどうなっちゃってんの?って感じで面白い(^m^)。

あとはグウェン・ジョンの『裸の少女』。
作者曰くモデルの少女が「嫌な性格」だったそうで
そんな作者とモデルとの関係性が、作品から滲み出てくるような
ちょっとした怖さが感じられる(^^;。


第3番目のセクションは《モダン・ヌード》。
ヘンリー・ムーア、ジャコメッティらの極限まで抽象化された人体彫刻や
言われなければ人体を描いたとはわからないデヴィッド・ボンバーグの『泥浴』、
大胆な色と構図のカール・シュミット=ロットルフ『ふたりの女性』が印象的。


そして!
第4のセクション《エロティック・ヌード》。
ここに今回の目玉である、ロダンの『接吻』が展示されている。

この目玉作品に限って撮影可、という太っ腹ぶり。

作品の周りを1周して、まず「凄い」と思ったのは…
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おそらくこのあたりからのアングルが作品の「正面」になるのだろうけど
他のどの角度から観ても「カッコイイ」あるいは「さまになる」というところ。

この角度からも美しいし
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この角度もなかなか素敵。
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あ、ここから観るポーズもなかなかいい。
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「これ↓が正面ですよ」と言われても「あ、そうなんだ」と納得してしまいそう。
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特にこの背中…イイ!。
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題材は、ダンテの『神曲』の一場面で
パオロとフランチェスカの悲恋の物語。
政略結婚させられたフランチェスカが、
その(醜い)結婚相手の弟である(ハンサムな)パオロと恋に落ち、
密会の最中、二人で『アーサー王伝説』のランスロットとグイネヴィアの
恋物語を読んでいるうちに気持ちが高まっちゃって思わす接吻…の瞬間。

その後二人の不義はフランチェスカの旦那ジョバンニの知るところなり
怒り心頭のジョバンニよって剣で刺されて二人とも殺されてしまう、
という悲恋の(というか不倫の)物語。

製作を依頼したイギリス在住のアメリカ人コレクターから
市庁舎に貸し出され、展示され始めたものの
あまりにもエロティックだ、ということでシーツをかぶせて
隠されてしまったそうな…。

題材も古典文学だし、
男女の体も美しく理想化されたものだったんだけども
当時としては公共の場に設置するにしてはあまりにも生々しかったのだろう。

個人的には、男性の右手が「なんか良いなぁ」と思う。
07_kiss.jpg
愛情と優しさの中に、不倫に対する躊躇や罪悪感が見え隠れしているというか…
そんな人間臭いところが「なんか良い」。

男性の左脚の位置や、女性の右手のやり場を観ると
結構不安定な苦しい体勢のようなのだけど、
さっきも書いたように「どこから観ても美しい」。
なので、ちょっと上の方から俯瞰して観るとどんな感じなのだろう?
真上から観てみたい…などという欲求にかられた。


この目玉作品を観てしまうと、これ以降の展示は
なんだかちょっとオマケのような感じに思えてきてしまうのだけど(やや小声^^;)
そんな中で、

ジョルジョ・デ・キリコ『詩人のためらい』
ルシアン・フロイド『布切れの側に佇む』
バークレー・L・ヘンドリクス
『ファミリー・ジュールズ:NNN[ノー・ネイキッド・ニガー(裸の黒人は存在しない)]』
シルヴィア・スレイ『横たわるポール・ロサノ』
シンディ・シャーマン『無題#97』

などは、相当強烈に迫ってくるものがあった。
シンディ・シャーマンの『無題#97』は
こちらを見つめるモデル(作者自身)の目ヂカラが強烈で
間違いなく以前どこかで観た記憶があるのだが、
どこで観たのかまったく思い出せない(‥;)。


と、いうわけで『ヌード展』鑑賞終了。

このあと軽くランチして、コレクション展も覗いてから帰ることにする。




《TO BE CONTINUED…続く》
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