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クラーナハ展 500年の誘惑 [EXHIBITION]

ずっと前から楽しみにしていた展覧会。

場所は国立西洋美術館。
cranach_1.jpg

ルカス・クラーナハ(父)は、1472年ドイツ生まれ。
ファン・エイクやデューラーなどと共に、北方ルネサンスを代表する画家である。
が、日本での知名度はいまひとつなんだろうか?。

アタシは今から20年以上前に、宗教画とか神話画にハマっちゃったことがあって
その時にクラーナハの存在を知ったのだけど、
その画風は一度観たらば忘れられない、強烈なインパクトを持っているのだ。
当時の裸婦像にしてはヤケに貧乳(笑)、ヤケに冷めたキツネ目の微笑み、
最初はそれらがなんだか不気味に感じられるのだけど、
観ているうちに何故か惹きつけられて、「なんか好きカモ」に変わっていった。

これまで日本で大々的に紹介されることのなかった
クラーナハの大回顧展がついに開催!ということで、
大分前から前売り券を買い、始まるのを心待ちにしていた。


1500年代の初頭、ザクセン選帝侯フリードリヒ賢明公に見初められて
ヴィッテンベルグの宮廷画家になったクラーナハ。
以降半世紀にわたり宮廷に仕え、多くの作品を生み出していく。

筆が速いことで有名で、息子たちや弟子たちと大工房を構え、
それはそれはもうじゃんじゃんと絵画作品を量産していったそうだ。

最初のセクションでは、そんな宮廷画家としてのクラーナハを紹介。
「幼児キリストを礼拝する幼き洗礼者聖ヨハネ」
「天使に囲まれた聖家族(「聖母伝」を表した祭壇画の左翼パネル)」
などが印象的だった。
北方ルネサンスの画家らしく、細かく描き込まれた背景が美しい。


次のセクションでは、肖像画家としてのクラーナハ。
事業家としての才覚もあったクラーナハは、
権力者、学者、政治家などの著名人の肖像画も数多く描いてきた。
最も有名なのは(展示されてるのはこのセクションではないのだけど)
マルティン・ルターの肖像画だろう。

ルーカス・クラーナハ(父)の仕事も見事なのだけど
ここで目を見張るのはルーカス・クラーナハ(子)の
「ザクセン選帝侯アウグスト」および「アンナ・フォン・デーネマルク」
という夫婦のほぼ等身大肖像画。
何が凄いって、衣装の質感と緻密に描き込まれた装飾が凄い…物凄い。
本物の生地や宝石が埋め込んであるんじゃないかと見紛うほどの細かさなのだ。
この息子は、父の技術を忠実に引き継いでいるなぁ〜と感心する。


ルーカス・クラーナハ(父)は、同時代のデューラー同様
版画作品も多く残している。
デューラーと比較して線の数は少ないけれど、
細部にわたる描き込みはやっぱり尋常じゃない。
特に「聖アントニウスの誘惑」は、宙に浮いた状態で悪魔に誘惑される
聖人を描いたものなのだけど、異形の悪魔たちにもみくちゃにされて
聖人の足はどこに行っちゃってるのか、手はどこにあるのか、
もう何がどうなっているのか、ぐっちゃぐちゃでもうさっぱりわからない(^^;。


4番目のセクションは、クラーナハの裸体表現を観ていく。
ここで印象的なのは
「ヴィーナス」そして「正義の寓意(ユスティティア)」。
二人とも、髪は綺麗に結い上げて飾り、
豪華なネックレスを身に付けているが、体は裸。ほぼ裸。
なんで「ほぼ」かというと、うっす〜いヴェールを《一応》まとってはいるから。
そして何故か背景は真っ黒。

去年の5月にBunkamuraザ・ミュージアムでの
『ボッティチェリとルネサンス展』で観た「ヴィーナス」もそうだったけど、
いわゆる「全裸」よりもシースルーの生地を纏っている方が、
何倍もやらしくてエロい効果を生み出すのだ(^^;。

面白いと思ったのは、
ピカソやデュシャン、マン・レイなどモダンアートの巨匠たちが
クラーナハの裸体表現に影響を受けていたこと。
ダリがラファエロやフェルメールに影響を受けていたのも意外だったけど
ピカソがクラーナハにインスパイアされていたというのも「へぇ〜!」だった。

そういえば、ここで紹介されていた「キューピッド」って作品の
キューピッドの羽根と弓の細密表現、
振り向いて「なによ?」という表情も印象的だった。


5番目のセクションでは、「女のちから」を主題にした作品を展示。
ここでの「女のちから」とは《誘惑》のこと。

「サムソンとデリラ」
「ホロフェルネスの首を持つユディト」
「ロトとその娘たち」
「不釣り合いなカップル」
「洗礼者聖ヨハネの首を持つサロメ」

など、男たちが美女に誘惑され骨抜きにされてトホホな結末を迎える物語を
主題にした作品が並ぶ。
生首持ってウフって感じで微笑んでたり、
若いおねえちゃんがおじいちゃんを誘惑してたり、女って怖い!(笑)。
そして描かれている《誘惑する女》たちのドレスの色が殆どの作品で赤色。
赤いドレスは誘惑の象徴なのかも???。


先だっての鈴木其一同様、
これだけ多くのクラーナハ作品をまとめて観られる機会はそうそうないかも?
ということで図録欲しいな〜と思ったけれども、ここはグッと堪えて
自分土産はお気に入り作品のポストカードを数枚で我慢。
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かなり期待して出掛けていった展覧会だったのだけど、150%期待通り!。
今年観た展覧会の個人的BEST5に入る、素敵な展覧会だった(*^^*)。
(ちなみに他の4つはは鈴木其一、カラヴァッジョ、宮川香山、ボッティチェリ…
 但し11月18日現在^^;ゞ)


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《11/24 0:28 追記》
そういやクラーナハ展の公式サイトを見て思いだしたのだけど
この展覧会では、コラボグッズとしてシュタイフ製のテディベアが販売されている。
くま好きとしては見逃せないが、大きい方は高いし
小さい方は顔がイマイチなんで今回は見送りと相成った。
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にゃんこ

こんばんは〜
此方もですが来月の武道館ライブに行く機会にとアレコレ探していますが、めぼしい展示12月中旬位で終わってしまうのが残念です。

曜変天目茶碗も今月までで次の機会を待とうかと。

葛飾北斎の美術館が明日オープンするそうですね。混雑覚悟で行くべきか?
by にゃんこ (2016-11-21 21:48) 

梅屋千年堂

>にゃんこさん
すみだ北斎美術館、いよいよ明日オープンですね〜。
当然いずれは行くつもりですが、まぁほとぼりが冷めてからにします(^^;。
でも、ここもカフェないんですね〜。残念。

クラーナハ展は1月15日までやっていますよ〜。お時間あるようでしたら是非。
アタシもまだまだ年内に観ておきたい展覧会がいっぱいあって…
「若冲と蕪村」@岡田美術館
「速水御舟の全貌」@山種美術館
「マリーアントワネット展」@森アーツセンターギャラリー
「時代を映す仮名のかたち」@出光美術館
「TOPコレクション・東京 TOKYO」@東京都写真美術館
そして!
「坂崎幸之助 書写真展」@Island Gallery

年明けはとりあえず「春日大社 千年の至宝」と
「草間彌生 わが永遠の魂」が
今から楽しみでならないアタシです。

by 梅屋千年堂 (2016-11-21 23:39) 

にゃんこ

梅屋さん、早速ありがとうございました。

坂崎さんの書写真展は必ず行く予定で他グッズ購入、ESPミュージアム〓、 武蔵屋さん。
クラーナハ展は時間があれば是非いきたいと思います。
もし行かれなくともこちらの展示は巡回で大阪でもあるようですね。
by にゃんこ (2016-11-23 22:08) 

梅屋千年堂

>にゃんこさん
渋谷のESP、京橋の書写真展、墨田区の武蔵屋坂崎商店、
そして九段下の武道館と…
移動距離が長くてなかかかに大変そうです(^^;。
これに上野まで加わっちゃった日にゃぁ大忙しですね。
可能ならばクラーナハは大阪の方がゆっくり鑑賞できるかも知れませんね。

by 梅屋千年堂 (2016-11-24 00:32) 

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