SSブログ

輝ける金と銀 -琳派から加山又造まで- [EXHIBITION]

日本画における金と銀。まばゆいばかりの展覧会。

場所は山種美術館。
01_yamatae.jpg
ここへ来るのは2月の『Kawaii 日本美術』以来。
この時も、面白いテーマの展覧会だなぁと思ったけれど
今回の『輝ける金と銀 -琳派から加山又造まで-』も
なんだか展覧会のタイトルを見ただけでちょっとワクワクしてしまう。

古来から日本画には金・銀がいろいろな形でに使われてきている。
この展覧会では、平安時代から桃山時代、江戸時代を経て
近・現代にいたるまで、様々な技法で金・銀を用いた作品が集められている。

個人的には、俵屋宗達、酒井抱一、鈴木其一などの
琳派の作品を鑑賞することが、最大の目的。
琳派でまず最初に登場するのは、
もちろん俵屋宗達(絵)と本阿弥光悦(書)の作品で
『四季草花下絵和歌短冊帖』。
細長い短冊に、宗達が金泥や銀泥を使って描いた花鳥図の上に
本阿弥光悦が書を書いたもの。これが8点ほど。
宗達&光悦といえば、『鶴図下絵和漢』が超有名だけれども、
これらの短冊は、そのコンパクト版という感じ。
銀泥で描かれた部分は、経年変化で黒く変色してしまっているのだけど
制作された当初は、さぞや艶やかだったことだろうと想像できる。

この展覧会の素晴らしいところは、
作品に用いられている技法を再現したサンプルを
作品の横に展示しているということ。
なので、例えばこの『四季草花下絵和歌短冊帖』で言えば
銀泥が変色する前の、光り輝いている状態はこんなでしたよ〜的な
サンプルが展示されていて、これが複製とはいえ本当に美しい。
描かれた当初の本物の『四季草花下絵和歌短冊帖』は
きっと豪華絢爛極まりなかったに違いない。

この、主要作品ごとの技法サンプルが素晴らしいと書いたけど
その技法がどのような効果をもたらすのかを、とても分かり易く説明してくれる。
例えば速水御舟の『名樹散椿』の金地の背景は、金箔を細かな粒状(砂子)にして
全面に撒き散らした「撒きつぶし」という技法を用いているのだけど
もしもこれを「箔押し」にするとこんな感じ、あるいは「金泥」にするとこんな感じと
どんな違いが出るのかを、3種類のサンプルを並べて解説してくれている。
いろいろな表現方法がある中で、作者が何故この技法を選んだのかが
理解出来るような気がしてくる(あくまでも「気がしてくる」だけなんだけど笑)。

ちなみにこの『名樹散椿』のモデルになっている見事な椿の木は
豊臣秀吉の朝鮮侵略の際に、加藤清正が朝鮮から持ち帰って秀吉に献上したもので
京都の昆陽山地蔵院にあったのだそうだ(今はその木は枯れてしまったとのこと)。


順繰りに作品を観ていて、「あっ!これ素敵〜」と思って
後からキャプションを見ると、やっぱり酒井抱一。
酒井抱一の作品は『秋草図』、『秋草鶉図』などが展示されているのだけど
やっぱり好きだ〜酒井抱一。
なんというか、この《鋭さ》がなんとも言えない。
展覧会の前期に展示されていた『月梅図』が観られなかったことが悔やまれる。

抱一の弟子である鈴木其一の『芒野図屏風』、これも良かった。
二曲一隻の屏風全面、芒の穂で埋め尽くされていて、
まるで自分が霧がかかった芒の野っぱらに立っているような気分になる。


その他で「これはスゴイ!」と思ったのは
やはり速水御舟で『昆虫二題 葉隠魔手・粧蛾舞戯』。
御舟の『炎舞』にも登場する色とりどりの蛾を描いた『粧蛾舞戯』も良いのだけど
個人的にはヤツデの葉と、そこに巣を張った蜘蛛を描いた『葉隠魔手』が良い。
基本的に蜘蛛は嫌いだけど(^^;、金泥の上に塗られた雲母(きら)が
その名の通り、観る角度によってキラキラ輝いて
まるで本物の蜘蛛の巣のように見えるところが素敵。

あとは川端龍子の『草の実』という六曲一双の大きな屏風絵。
これはスゴイ!本当にスゴイ!。
奈良〜平安時代の紺字金泥経(紺色の紙に金の文字でお経を書いたもの)に
着想を得たらしいのだけど、この屏風は濃紺の絹地に
焼き金、青金、プラチナなどの泥で、秋の草花を描かれていて実にゴージャス!。
ゴージャスなのだけど、とても上品で、金がちっともいやらしくない。
龍子は、あまりにも金を多用したために
「成金居士」などと揶揄されたこともあったそうなのだけど、
いや〜、いいと思うよ〜アタシは(笑)。

昭和に入ってからの作品の中では、横山操の『マンハッタン』が面白かった。
マンハッタンの摩天楼を、金箔・銀箔といった
日本画の素材を用いて表現しているんだけど、ちっとも違和感がない。


『草の実』と『マンハッタン』は、絶対にポストカードを買って帰ろう!
と心に決めていたのだけど、残念ながらこの2作品のカードはなかった_| ̄|◯。
なので、酒井抱一の『秋草鶉図』と、速水御舟の『昆虫二題』のカードを購入。
でもやっぱり『草の実』と『マンハッタン』が捨てがたく、図録も購入。
印刷じゃあの金銀の輝きは再現できないとわかっちゃいるけども、購入。
06_yamatane_souve.jpg
山種の図録ってコンパクトで値段もお手頃なので、つい買っちゃうんだよね(^^;ゞ。


さて、今回はここで終わらず
この後は六本木の国立新美術館まで、徒歩移動。
続きはまた後日…。
nice!(1)  コメント(2)  トラックバック(0) 

nice! 1

コメント 2

おーちゃん

気にはなってたのですが、梅屋さんのレポートを読んで「行ってみよう」と昨日見て参りました。もう終わりじゃないか、アブナかった・・・。

面白い視点ですよね、技法の比較って。具体的にどういうふうに描く(塗る?)のかとか、うーん勉強しちゃいました。

「名樹散椿」の金地のマットで上品な感じはとっても素敵・・・。でも私が気になったのはそれに対抗するような牧進の「春はやて」(←漢字出ないじゃないか><;)。プラチナ地って・・・どんだけ製作費がかかるねん!
そんなことにちょっと(いや相当)気を取られながら、鑑賞するワタクシでした・・・・。

次回の東山魁夷ほか展もよさそうだったので、前売りを買いました~。

by おーちゃん (2014-11-16 22:30) 

梅屋千年堂

>おーちゃんさん
美しいだけでなく、なんだかとても勉強になる展覧会でしたね。
アタシはあんなにいろんな種類の箔があるなんてちっとも知りませんでした。
金箔でも金銀銅の割合によって純金箔・一号箔・二号箔…とあるし
銀箔にプラチナ箔、アルミ箔(笑)に、玉虫箔、黒箔…
いろいろあるんだなぁと、目から鱗でした。
(ちなみにこの手の問題、美術検定の2級以下では結構出たりします)。

牧進の「春はやて」(確かに漢字変換できませんね。風に犬×3なんて!笑)、
どんな作品だったっけ?と図録を見返してみました。
なるほど!ありましたね。迫力のある作品でした。
…日本画家って、金持ちじゃないとなれないなぁ〜なんて
アタシも下世話なことを考えてしまいました(笑)。

次回の展示「東山魁夷と日本の四季」も良さそうですね。
春ツアーで静岡に行った時に、チラシにも出ている「北山初雪」を観ましたが
とっても素敵な作品でした〜。ポストカードが欲しかったけど
売ってなかったんですよね〜。山種の展覧会で出るかなぁ…。
なんだかアタシも行ってみたくなってきました(^^;ゞ。

by 梅屋千年堂 (2014-11-17 01:33) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0