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日本絵画の魅惑 [EXHIBITION]

2日前に行ってきた展覧会。
場所は東京・丸の内、出光美術館。

2週間ほど前に前期展示を観に行ったときは、
とにかく酒井抱一の『風神雷神図屏風』のことばかり考えていたので
正直、他の展示はほとんど観ていなかった(^o^;。

今回も、とにかく酒井抱一の『八ツ橋図屏風』を観るために
この美術館を訪れたようなものなのだけど
もうちょっと冷静に、他の展示も「ちゃんと」観てみることにした。

出光美術館が所蔵する日本画のコレクションが
主に10のカテゴリーに分類されて展示されている。
ひとつひとつ「ちゃんと」観てみると、
思っていた以上に「これ好き!」な作品が多かった。

・『桜下弾弦図屏風』
・『誰が袖図屏風』
・『見立伊勢物語・河内越図』
・雪舟『破墨山水図』
・勝川春章『柳下納涼美人図』
・喜多川歌麿『娘と童子図』
・葛飾北斎『月下歩行美人図』
・渡辺崋山『鸕鷀捉魚図』
・酒井抱一『八ツ橋図屏風』
・鈴木其一『桜・楓図屏風』
・長谷川等伯『波濤図屏風』

などなど…

作者がわからない作品も多いのだが、そられの美しいことと言ったら。
作品の良し悪しは、作者の有名無名とは無関係なのだ。

特に江戸時代の女性を描いたものは、
着物の柄が細部にわたって緻密に描かれていてタメイキが出るばかり。
人物は一切描かれておらず、今し方そこにいたであろう女性が脱いだのであろう
たくさんの美しい着物が、無造作に衣紋掛けに掛けられた『誰が袖図屏風』、
遊女達が桜の花の下で楽しそうに楽器を奏でている『桜下弾弦図屏風』、
歌麿の『娘と童子図』の娘が来ている着物の緑と白のグラデーション…
これらの作品の着物の柄は、まるで当時流行していた着物のカタログを
眺めているようなな楽しさがあった。


最大のお目当ては酒井抱一『八ツ橋図屏風』。
メトロポリタン美術館にある尾形光琳の『八ツ橋図屏風』に倣ったという
たくさんの燕子花が描かれた作品。
元々酒井抱一の作品が好きなこともあるが、
先週、根津美術館で観てきた光琳の
『燕子花図屏風』との比較もをしてみたかった。

『風神雷神図屏風』もそうだったけど、こちらの作品も
光琳よりも抱一の方がスッキリ&サッパリとして
若干迫力に欠けると言えばそうなのだけど
うまくまとまっているといえばまとまっている。

燕子花の花の大きさは、やはり近寄ってみてみると思っていたよりも大きい。
花の群青色の厚塗り具合は光琳の方が勝っているか。
そして光琳の燕子花は必要最低限なパーツだけで構成されていたが
抱一の燕子花はもう少しリアリティが高いように感じた。

でも、花には写実性が残っているが、橋はいたって抽象的。
橋の支柱も、こんなんで橋を支えられるわけがないだろ!(^o^;と
突っ込みを入れたくなるほど単純化して描かれている。
光琳の『八ツ橋図屏風』と異なるのは、斜め向きの支柱が描かれていることで
それが光琳にはない独特のリズム感や軽やかさを生み出しているように思えた。
ペタンとした平面的な印象の橋なのだけど、
その面はたらし込みという技法で彩色されていて、
単純な面の中に複雑さを感じた。

やっぱりアタシは抱一の絵が好きだな。
作品の前に設置されたベンチに腰掛けて、しばらくの間見惚れてしまった。
館内はさほど混雑していなかったため、
瞬間的に絵の前に誰もいなくなることがあって
それはそれはなんとも言えぬ至福の時なのだった(*^^*)。

とはいえ、抱一の『八ツ橋図屏風』はとても美しいけれども
光琳の『燕子花図屏風』は、さすがに国宝。
絵の具の剥落があちらこちらに見られるのにもかかわらず
不思議と抱一の『八ツ橋図屏風』よりも全体的に深みがあって
全体がキラキラと輝いているように感じられた。

その違いは、宗達の『風神雷神図屏風』と、光琳の『風神雷神図屏風』を
見比べたときの感覚と近いものがあった。
「やっぱさすが国宝!スゲー!!」みたいな(笑)。


予想外の感動を得たのは最後の方で展示されていた
長谷川等伯の『波濤図屏風』。
岩と、それに当たっては砕ける波を描いた六曲一双の屏風絵。
確かに等伯も生涯で様々な画風の作品を描いた絵師ではあるが
アタシの大好きな『松林図屏風』とは全く異なる作風。
力強い直線で描かれた岩の描写が…なんと言ったらいいのか
…キュビズム的とでも言うのか、
カクッカクッとした面で構成されているのだけど立体的で迫力がある。
波頭の表現も、これが後の北斎の『神奈川沖浪裏』に受け継がれたのでは?
と思えるような、人間の手指のような、あの感じ。
近づいたり離れたりして、この絵もかなり長い時間見入ってしまった。

絶対にこの『波濤図』のポストカードを買って帰ろう!と思っていたのに
残念ながらこの作品のカードは売っていなかった。
抱一の『八ツ橋図屏風』も右隻の一部分のカードしかないし
出光美術館のミュージアムショップは
微妙に残念なラインナップなのであった…(小声^o^;)。
しょーがないから(?)前回買うのを忘れた
俵屋宗達の『月に秋草図屏風』のポストカードだけ買って帰ってきた。
(このポストカードも部分的なんだよね〜-_-;)。


こんな本も売っていて、ちょっと欲しい!と思ったけど
別に今ここで買わなくてもこりゃAmazonで
買いたいときにいつでも買えるなと思ったので今回は却下。

もっと知りたい酒井抱一―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)

もっと知りたい酒井抱一―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)

  • 作者: 玉蟲 敏子
  • 出版社/メーカー: 東京美術
  • 発売日: 2008/09
  • メディア: 単行本







それにしても、なんだか最近日本画づいている。
ひとえに魅力的な展覧会がいろんなところで開催されているからなんだけど
こんな書籍も購入して展覧会後の復習に活用している。

日本美術史 JAPANESE ART HISTORY (美術出版ライブラリー) (美術出版ライブラリー 歴史編)

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  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 美術出版社
  • 発売日: 2014/03/22
  • メディア: 単行本


図版が豊富で印刷も綺麗。その割に値段もお手頃。
デカすぎない&重すぎないサイズもいい。
文章やレイアウトも読みやすく、ぼんやり眺めているだけでも楽しめて
「日本画概論」の教科書として最適!なのだ。



さーて、来週は幸ちゃんの書写真展に行ってくっかね。
(もちろん「JUST LOOKING」だけども^^;)。
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