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燕子花図と藤花図 [EXHIBITION]

初めての根津美術館。

東京メトロ表参道駅A5出口を出て、カルティエだのプラダだの
およそ自分には縁遠い店が建ち並ぶ通りを抜けたところに
突然、和の趣を放つ美術館の入口が現れる。
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特別展『燕子花図と藤花図』を観るのが目的。
21_poster.jpg
そして美術館の庭園に咲いている本物の燕子花も…。


入口を入ってずーっと歩いて振り返ると、この空間。
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もう、これだけで完全に外の世界と遮断される感じがする。


チケットを購入し、早速『燕子花図と藤花図』の展示室へ。

入っていきなり右手に見えるのが「伊年」印の『四季草花図屏風』。
観た瞬間に「これ好き!」と思える作品だ。
「伊年」というのは右隻の右下に押してある印で、
「俵屋宗達の工房で作られました」という証し。
まるで四季の植物図鑑のように、様々な草花や野菜が詳細に描かれている。
輪郭線を描かない没骨という技法で描かれているので、実に写実的。
先日のBS日テレ『ぶらぶら美術・博物館』で言ってたのだけど
屏風の折れ曲がって谷になった部分に、植物が逆三角形に描かれていて
ちょっとした3D効果を生み出しているのが面白い。

その後、2〜3同じような草花図屏風が続き
左に曲がると、早くも国宝『燕子花図屏風』見参!。
しかもその隣には重文『藤花図屏風』。なんと並べて展示してあるのだ。


まずは『燕子花図屏風』。
作者は尾形光琳。
近づいて観ると、思っていたよりもひとつひとつの花が大きく描かれている。
離れて観るととても写実的に見えた燕子花の花なのだけど
よーく観ると、図案化・パターン化されていて、塗りもベタ塗りなので
何パターンかある花のスタンプと葉のスタンプを組み合わせて
ぺったんぺったんと繰り返し押していったような印象を持つ。
何か、壁紙とか着物の生地のデザイン画のようだ。

花も葉もごく限られた色で、ベタ塗りされているだけなのに
1本1本の配置の妙と、屏風の折れ曲がりによって、不思議と遠近感が感じられる。
金の地の上に、宙に浮かぶように突然生えてるのに不自然さは感じない。

とにかく使われている群青色と緑青色が美しい。
この群青は藍銅鉱(アズライト)という鉱石から抽出した
非常に高価な絵の具で描かれているのだけど、
60gで米一俵が買えるという高価な絵の具を
惜しげもなく厚塗りしてるところがなんともカッコイイ。

とにかくシンプルなのに、ずーっと観ていてもちっとも飽きない不思議な屏風。


そして隣の『藤花図屏風』。
作者は円山応挙。
『燕子花〜』同様、空間の残し方が絶妙。
やり過ぎ感がないのがいい。
どぉっと迫ってくるような『燕子花〜』と比べると、随分とさっぱりした印象だが
花房や葉に注目すると実は物凄く写実的。
葉はその重なり合いが立体的だし、
花房はまるでそこに本物の花を貼り付けたみたいにリアルだ。
それに対して、枝は「付立て」という技法を用いて一気呵成に描かれていて
写実的な花房や葉とは異なるタッチになっている。
しかし…何度観ても右隻の枝は、
ぐにゃぐにゃしていてどこがどうなっているのかよくわからない(^^;。
一体どーなっちゃってんの???(笑)。


応挙の『藤花〜』は、やり過ぎ感がないのがイイと書いたけど
逆にやり過ぎ感満載なのが、鈴木其一の『夏秋渓流図屏風』。
「ナンカ、コノ絵、スゴイ…(・o・)」。
1つの作品の中に、いろんな作風が盛り込まれていて面白い。
左隻の、紅葉した桜の葉なんかはいかにも其一。
青々とした檜の葉は、単眼鏡で拡大して観てみると
何層にも厚塗りされていて立体的なレリーフ状になっている。
右隻の笹の葉はなにやらマンガチックにデザイン化されちゃってるし
その上の百合の花は輪郭線がキッチリ描かれていて、他の部分とは明らかに異質。
渓流の水はなんだか粘り気があるし(^^;、
右隻の檜にはリアルな筆致で描かれた真横向きの蝉が1匹。
かなり個性的な作品だけど、
「なんでも描きたいように描かせてもらいました」的な
自由な感じがすごく良いなと思う。
『燕子花〜』とは違った意味で、ずっと眺めていても飽きの来ない不思議な絵。
しかし…この屏風が似合う部屋って、どんな部屋?(笑)。


個人的にキョーレツに印象に残ったのは以上の4点なのだけど、
実はこの『燕子花図と藤花図』の展示室に展示されていた作品の殆どが
「あ、これ好き!」な作品だったのだ。
・源琦『業平舞図』
・長澤芦雪『犬図』
・森祖仙(狙仙でなく祖仙という表記だった)『龍・鹿図』
・呉春『南天双鳩図』
・山口素絢・松村景文『花鳥図襖』…

大抵の展覧会では
帰宅して出品リストを見直しても「これ、どんなんだったっけ?(^^;」と
タイトルだけでは思い出せないようなものがあるのだけど
この日観てきた作品は、タイトルを見てどんな作品だったか
思い出せるものが殆どだった。


本当は購入したチケットで、他の展示(仏教彫刻、古代中国の青銅器、
焼き物、茶道具、宝飾時計)なども観ることができるのだけど
あんまりいろいろ観てしまうと、
今観てきたものに対する感動が薄れてしまいそうな気がしたので
今日は、他の展示は敢えて観ないことにした。
(ちょっとモッタイナイ気はしないではないけども…)。


ミュージアムショップで買ったのは
根津美術館が所有している琳派作品の図録と
『燕子花図屏風』の一部分を切り取ったポストカード、
それと同じく『燕子花図屏風』のポチ袋。
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だけど、図録もポストカードも、
本物が放つ深い群青色は再現できてなかった(当たり前だけど)。

もし『燕子花図屏風』をモチーフにして、
根津美術館オリジナルのiPhoneカバーを作ったら
絶対にカッコイイし、結構売れると思うんだけどなー。

実際、光琳の『燕子花図屏風』のiPhoneカバーってないんだろうか?
と検索してみたら、1件だけ見つかった。
でも「こーじゃないんだよなぁ〜…」そんな感じ(^^;。



光琳の『燕子花図屏風』を観た後は、
美術館の庭園に出て本物の燕子花を愛でるのである…。



《TO BE CONTINUED...続く》
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コメント 2

りく

こんばんは。

根津美術館とても素敵ですね。
今回の展覧会(5月18日迄)に私是非行ってみたいと思っています。

梅屋さんは会社の上司・同僚に凄く恵まれていますね。
私の会社もまあまあ恵まれてはいますが。
☆日曜日は母の日、お姑さんも実家の母も地方に住んでいる為、感謝の気持をバタバタと送って来ました。
梅屋さんはお母様に何か贈り物、または夜お食事にでも行かれるのでしょうか。何か素敵な事をされるのだろうと勝手に想像しています。
あ、そういえば、私も一応母親でした→娘達から何かあるんでしょうか??
by りく (2014-05-09 21:23) 

梅屋千年堂

>りくさん
今の職場に限らず、社会人になってからというもの
上司と同僚には本当に恵まれてきたなぁと思っています。
もちろん自分もうまくやれるように努力はしてるんですけどね(^^;ゞ。

母の日は、今年は母から「レインブーツが欲しい」というリクエストがありまして
デパートで気に入ったのを見つけてきたらしいのですが
なかなか一緒に買いに行ってる時間がないので、お金だけ渡しました(^o^;。
あとはまぁ…治一郎のチーズケーキでも買ってきますか…
(ってこれはアタシが食べたいだけだったりして笑)。

by 梅屋千年堂 (2014-05-09 21:55) 

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